楽しみに楽しみにしていた宮せつ湖さんの詩集が届いた。夕食をささっとすませて、ひとり、自室にこもって読んだ。
大切な本の初読はひとりで読むようにしている。家族が同じ部屋で新聞や本を読んでいるだけでもだめだ。歌集はリズムがあるからするするっと入ってくるけれど、詩集は一行一行、その長さや改行やもろもろをちゃんと受け止める準備をしてからしか読めない。
見過ごしてしまうような一瞬を、たとえば花火と花火のあいだに訪れ、揺り動かしてゆくなにかを、言葉にして書き留める。
家族や兄弟のつながりや親しいものたちと交わされる温かさ。そういう愛情につつまれていても、温かな記憶をたくさん持っていたとしても、やはり、人間はひとりなんだなということを思う。そして、そういう「ひとり」である自分の声をききとって、認めて、大切にしている。ああ、そうだ、そうなんだ、と声をあげたくなってくる。
読んでいるうちになんども涙がこぼれた。
すてきな本を産んでくれて、作品を読ませてくれてありがとうという気持ちでいっぱいになる。
たくさん好きな作品があったけれど、なかでもいちばん好きだった作品。
ぁあ 宮せつ湖
ふふふふっと
春をくわえて
浮かんでいる 水鳥たちよ
わたしの胸の水鳥を
今、放すから
橋の向こうの
あけぼの杉のところまで
連れていってください
点になるまで見ています
見えなくなっても
見ています
(『雨が降りそう』宮せつ湖 ふらんす堂 2400円(税別))