このあいだ、小田急線に乗っていて、「経堂」の駅に電車が停車したとき、あ、と思いました。
親友のタカが住んでいた町。タカが亡くなるまで住んでいたところ。私は2回、その町を訪れているのに、どういう経路でそこへ行ったのかまったく覚えていなかったのです。小さな息子をタカが勤めていたお花屋さんにつれていって、抱っこしてもらったな、とか、同僚のひとが「孝子さんは氷ばかり食べてるんですよ」と言ったこととか、断片的に思い出します。
そして、翌日は中華街から港の見える丘公園へ。ここはオフコースの「秋の気配」の舞台。高校時代にフォークソング研究部にいて、オフコースやユーミンの歌を歌っていたので、そのころの友達と20代のときに訪れたことがありました。ユーミンの「ドルフィン」にも行ったりして。
あのころはもっとなんにもない公園で、港もよく見えていたと思うのに、今回はいろんな建物がたって港はあまりよく見えませんでした。整備はされていましたが、イメージが違う公園になっていました。
♪あれは あなたの 好きな場所 港が見下ろせる小高い公園
から始まる「秋の気配」はタカも好きだった歌で。私は2番の
♪あの歌は 他の誰にも 歌わないでね ただそれだけ
のところを気にいっていました。オフコースの曲で「夏の終わり」という名曲がありますが、
♪そっとそこにそのままで かすかに輝くべきもの
決してもう一度その手で 触れてはいけないもの
という歌詞がありますが、今回まさしくそうだなぁと思いました。記憶というのはおぼえている姿のままにしておけばいいのです。もうそのままではたぶんないだろうと思いながら、ずっとその姿を覚えているのが記憶。もしもうそこになくても。