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いつでも君のこと好きだったよ

大地たかこ第二歌集『青き実のピラカンサ』

2017-08-15 15:19:06 | 日記

 きょうは誰も家にいない日。月詠草10首と、あなたを読む会の15首が完成。あとは月末締め切りのととと5号用の10首と童話の続きを書く予定です。

 

 大地たかこさんは「あなたを読む会」のメンバーです。「あなたを読む会」というのは、塔事務所を利用して会費を集めて家賃の一部に還元しよう、ということでいくつか始まった会のひとつ。2015年の5月からスタートして今月で28回目。誰かの歌集や連作を読む会はいろいろあるけれど、参加者の作品をじっくり読み合うっていうのはあまりないかなと思いついたもので、短歌連作のほかに、詩、童話、エッセイなど、10分以内で読めるものなら、なんでも出していいことになっています。

 

 現在参加者は5名で、ひとりの作品について30分の時間をとって、二人がメインで意見をいい、あとの二人が補足する、というスタイルです。

 

 大地さんは最初からほぼ毎回短歌の連作を出しておられて、思い切り好きなことを言いあったのち、また再度出してこられたりして、その諦めない姿勢に「粘り」を教えてもらっているように感じています。

 

 今回、一冊の歌集という形にまとまって、あちこちに私たちと議論しあった作品、連作がみられ、まるで自分の本のようにどきどきしながら読みました。

 

 ・縦笛を吹くのはどんな子でせうか今日は「通りゃんせ」流れてきたり

 ・外灯のふたつに照らされ浮かびくるアンパンマンはでかくていびつ

 ・盆地なる里に正午を告げくるる「エーデルワイス」の澄みたる音色

 

 大地さんの歌はとても大らか。日々の暮らしのなかに届けられるものの受け止め方も、雑音としてきこえないで、「どんな子が吹いているのかなぁ」と思って笛の音色をきいたり、光の当たり方によっていびつにみえるアンパンマンなど、とても外界に対する信頼というか、興味をもっておられることがわかります。山に囲まれた里に流れる「エーデルワイス」。のどかな光景が広がります。

 

 ・もういいよ眠つていいよと声描くる温もりじわり逃げゆく猫に

 ・酸素テントのなかにゐてなほ息荒し 小さき声でアオちやんと呼ぶ

 ・アオちやんね死んでしもうてんと犬に言ふ犬は座りて吾を見詰める

 

 飼っていた猫が死んでしまう連作では、語り掛ける言葉が胸に響いてきます。

 

 ・みづからの手にしぼりたる乳ならむ飯(いひ)のとなりに供へてありぬ

 

 生まれることのできなかった赤ちゃんに供えられた乳。つらくても作品にする、ということは何度でもその時に立ち返り、そのたびに悲しみと対面しないといけないけれど、とても大切なことだと思います。

 

 ・灰汁(あく)色の舌をぐういと突き出すもさくらの新葉にとどかぬキリン

 ・そこだけは光の届く椿あり赤き目の蠅交尾してゐる

 

 そして、どきっとするような観察眼。気持ち悪そうなものや怖いものから目をそらしぎみの私に、「おもしろいことから目をそらすなんてもったいないよ」というようです。

 

 いろんなことにあらためて気づかせてくれる歌集です。

コメント
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