ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

山下洋歌集『屋根にのぼる』

2017-05-01 23:07:21 | 日記

 きのうは今月末の義父の卒寿の会の打ち合わせもろもろ。とペットショップ2軒へ行きました。

 

 売られている動物たちがなんかおどおどしているように見えて、なんとなくつらくなりました。それで、里親探しをしている人からもらってはどうかなということや、リクガメを無責任に飼うなという息子からの反対があって、いったん新しい家族キャンペーンは沈静化しています。。じっくり考えます。

 

 さて、いいかげんその読み方はやめたら、と家族にも呆れられていますが、歌集のなかのいい歌はどうしても手でノートに書き写したい、そうしないと近づいた気、読んだ気がしないのだから、どんどん本が溜って行こうが、お礼状がなかなか書けなかろうが、自分のペースで読んで、書いています。

 

 きのう、おとといの2日間で、読んでいたけれど書き写していなかった染野太朗さんの『人魚』、大辻隆弘さんの『景徳鎮』、山下洋さんの『屋根にのぼる』の3冊のいい歌をノートに書き写し、去年の9月から書いただけでお礼状を書いていなかった歌集のお礼状を6通書きました。

 

 前置きが長くなりました。きょうは山下洋歌集『屋根にのぼる』から。

 

 ・鳥の趾(あし)状に岐るる岬なりみずかきのように浜を広げて

 ・携帯の螢光に浮き上がりたる顔が夜道を近づいて来る

 ・乗りて来し段たたまれて吸われゆくエスカレーターの端 見てしまう

 ・こころして視線は低く保てよと龍のひげ地に青々と在り


 鳥というと、苦手な映像が浮かんで指先が冷えてくるのですが、この1首目は「みずかきのように浜を広げて」というなだらかな弧を描く浜が見えて、いいなぁと思いました。上句が個性的な岬の表現なだけに、解放されていくようです。第一歌集『たこやき』、第二歌集『オリオンの横顔』から一貫しているのは、控えめなユーモア。自分で自分の行動を見てくすっと笑っているようなシャイな感じ。「顔が夜道を近づいて来る」「見てしまう」といった箇所から山下さんだなぁと思います。

 

 4首目は山下さんの生き方を思わせるような、視線のやさしさ。低く保つんですね。

 

 ・<何を>より<どのように>へと重心を移しつつあり確かにわれは

 ・実を採ると屋根に登りし日のありき かの柘榴にも花咲く頃ぞ

 ・海が見えはじめたのです四人して窓を見ている特急サザン

 

 こういう、なんの注釈もなしに置かれた歌に、私は立ち止まってしまいます。1首目は坂田博義の目指したところであるし、2首目は坂田さんも登ったという古賀泰子さんのお家の柘榴の木だろうと思われます。何度か古賀さんのお宅には伺ったことがありますが、いくたびに家の前にある柘榴の木の幹を撫でさせてもらいました。なんとなく、坂田さんに繋がるような気がして。3首目は田中栄さんのお宅へ向かう途中の車窓だと思います。特急サザンに乗って、お墓参りに行きました。

 

 記憶を共有していることの、心強さ。坂田さんのことを覚えているひとはあまりいないかもしれません。私は坂田さんと実際に会ったことはありませんが、古賀さんや古い会員の方から伝え聞いて大切にしています。誰かが覚えていなければ、いなかったことになってしまいそうで。こうして歌集に見つけたりすると、不思議ですが深く安堵するのです。

 

 ほかに好きだった歌

 

 ・マトリョーシカみたいだ君の内部からつぎつぎ過去の君が出てくる

 ・出でゆきし子らがおさなき声のまま遊んでおりぬ家のどこかで

 

 

 

コメント (2)
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