テーブルになにげなく置かれた古いフォトアルバム。その表の絵に目がくぎづけになりました。
「これなに? どうしたん?」
その絵はまぎれもなく、私が好きな絵本ベスト5に入る『ロバのおうじ』のバーバラクーニーの挿絵の1枚でした。
夫「このあいだ学生時代の友達に見せようと思って探してたのに、いまごろ見つかってん。当時のアルバム。」
へえ。よく見ると、左上のほうに「世界の絵本シリーズ」と書いてあります。表紙をめくるとあらすじと作家紹介が簡単に書いてありました。なによりも驚いたのがそのタイトル。『ろばのわかさま』。わかさまって。グリム童話ですよ。お殿様みたい。
たぶん翻訳者がそう訳したのでしょう。アルバムに収められた写真は1980年のもので、この絵本は1977年出版だから、3年後に富士フイルムの「世界の絵本シリーズ」に入っていたんだな。
この絵本は私が20歳すぎのころ、たまたま京都に遊びに来ていて偶然入ったお店にあった本で、読みながら泣いてしまったのでした。タイトルは『ろばのおうじ』でした。
もうずいぶん前のこと。それぞれの人生にさりげなく差し挟まれたクーニーの絵。なんだか不思議な縁を感じました。