切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

先日のNHK「劇場への招待」の吉右衛門特集。

2006-03-30 12:56:24 | かぶき讃(トピックス)
日曜日は、歌舞伎座での観劇後に大急ぎで帰宅、NHK「劇場への招待~吉右衛門”日向嶋景清までの10ヶ月」を観たのですが、播磨屋贔屓には堪えられない番組でしたね。これは、吉右衛門が書き下ろした新作歌舞伎「日向嶋景清」の製作秘話のドキュメンタリーなんですが、こんぴら歌舞伎での初演と歌舞伎座での舞台の両方を観ているわたしには大変興味深いものでした。

去年のこんぴら歌舞伎で観たこの芝居は、正直なところ失敗作だとわたしは思った。なぜなら、奥行のない金丸座の舞台では、岩山の舞台装置や最後の大きな船のセットがいかにも安っぽく見えたし、吉右衛門演じる景清の娘・糸滝が子役(中村隼人くん)だったこともあって、吉右衛門の一人芝居のような要素が強まりすぎ、完全に空回りしているようにわたしには思えた。

一方、歌舞伎座での再演は、広い歌舞伎座の舞台を充分に活用したもので、金丸座では舞台上手から登場した糸滝の乗った船が花道から登場したし、糸滝役も中村芝雀が熱演したおかげで、吉右衛門の芝居のスケールの間尺に合った、名舞台になったと思う。

番組中では、あまり今まで見る事のできなかった、素顔の吉右衛門がみれてよかったんだけど、父・松本白鸚への思いや、染五郎に播磨屋型の「毛野村」の六助役を指導している様子など、たいへん貴重なものだった。(なにしろ、中日の落合監督並みに語らないタイプですからね、この人は。)
(因みに、金丸座での染五郎の六助は素晴らしいできで、期待していなかったわたしも驚いたほどだったけど、やっぱり指導者がいいと違うなあと、おおいに納得。その時の感想はコチラ!

でも、親族の話が出てくるのに、なぜか兄・幸四郎のことがまったく出てこないのにはちょっと驚いたかな…。幸四郎の名前は禁句なのか、なんて勘繰ってしまったけど。(そういえば、4月9日にNHk特集「九代目幸四郎襲名」を再放送しますね。これもNHKのバランス感覚?)

吉右衛門が松貫四の名前で書いた芝居には、この「日向嶋景清」と、一昨年こんぴら歌舞伎でやった「再桜遇清水」があるのだけど、どちらも吉右衛門演じる主人公が、「建前を破って人間性を開放させる」というテーマで共通しているとわたしは思っている。(前者では武士の建前、後者では僧侶の戒律。)

実生活でも娘ばかりの家の父親だということが関係しているんだろうけど、歌舞伎役者独特の感性で今後も劇作を続けていって欲しいと思うし、近年の新作歌舞伎よりわたしはこっちの方が好きなんですけどねぇ…。

というわけで、とてもいい番組でした!!

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4 コメント

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私も見ました! (ねも)
2006-03-30 13:53:09
まだ途中ですけど・・・

最近は毎月観劇という訳にはいかないので、「劇場への招待」も楽しみの一つになってきました。

幸四郎さんとのこと(確執??)はお富さんのブログで知りましたが、それよりも後継者をどうするんだろう?って他人事ながら気になっています。
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おもしろかった! (しほ2号)
2006-03-31 09:27:51
こんにちは~

きっとお富さんも見てるだろうな~と思ってみてました。

私としては歌舞伎座の顔寄せで

幸四郎・仁左衛門・吉衛門

の並びがつぼでした。(^_^;)

にざさん、両肩こりそう…



13代目仁左衛門さんの映画見たときもびっくりしたんですが、

役者さんって全部頭の中に入ってるんですよね~!





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Unknown (deputyminister)
2006-03-31 19:08:32
来月15日、母が吉右衛門の井伊大老を観に行きます。

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皆様、コメントありがとうございます! (切られお富 )
2006-04-03 00:53:03
ねもさん、しほ2号さん、deputyministerさん、コメントありがとうございます。



諸般の事情で(?)、ご返事遅れました、スイマセン。



ところで、いい番組でしたね。でも、ねもさんの仰られるように、後継者問題はどうなるのやら?お孫さんに候補者でもいるんでしょうか?幼児期から義太夫とか習ってないと科白なんか覚えられないんでしょうね、きっと。



deputyministerさん、4月夜の部の「井伊大老」はきっと良い舞台になりますよ。吉右衛門のニンに合っている気がします。
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