切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『荷風と左団次』 近藤富枝 著

2010-07-08 09:53:05 | 超読書日記
荷風が歌舞伎座で一時期働いていたという話は知っていたけど、本気度高かったということをこの本で知りました。毎晩、芝居がはねたあと、空き地で柝(き)を打つ練習をしていたという荷風。なんだか可愛くいないですか?そして、人見知りだった二代目左団次。でも、「交情蜜のごとし」はちょっと言い過ぎかもしれないけどね~。

歌舞伎座のできたのが明治22年で、荷風の歌舞伎座勤めは明治33年、西暦でいうと1900年!

この年は夏目漱石がイギリス留学した年で、作家オスカー・ワイルドがフランスで客死し、フロイトの『夢判断』の初版が出版された年でもある。

さて、歌舞伎座を建設した元大蔵官僚・福地源一郎(桜痴)の縁故で歌舞伎座入りした荷風だけど、福地源一郎が歌舞伎座を去るのと同時に、心ならずも彼も歌舞伎座を去ることに・・・。

そういう意味では、戦後歌舞伎と深く関わった三島由紀夫より、本格的な交わりだったってことなんですよね。おまけに河竹黙阿弥の家に養子の申し込みをしたっていうんですから。

そして、そんな荷風が「最も好む人」にあげていたのが、「今の人にて左団次」というんだから、凄い入れ込みよう。(因みに「昔の人」が蜀山人で、「近世の作家」が樋口一葉!)

でも、浮気モノの荷風と堅物の左団次がなぜ合ったのかよくわからないところはありますね。優柔不断の人・荷風にとって、筋の通った人・左団次が理想だったのか?

というわけで、興味のある方にはオススメです。

荷風と左団次―交情蜜のごとし
近藤 富枝
河出書房新社

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