切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

本日、二月文楽公演・第一部を観てきました。

2016-02-11 23:59:59 | 恋する文楽
「靫猿(うつぼざる)」と「信州川中島合戦」を観てました。第二部と第三部はまた後日。先に床本と資料集が読みたくて、一部だけ先に観劇しましたが、今月の演目は渋いですよね~。簡単な感想のみ。

「靫猿」は、狂言がオリジナルなんだと思うけど、気まぐれな大名が猿回しの連れた猿を見て、「あの猿の革をウツボ(矢を入れる筒)に使いたい」とわがままを言い出して、起きる騒動を描いた芝居。狂言では、猿の役を狂言師の家の子供が初舞台として演じたりするんでしたよね。

歌舞伎でも、猿は子役がやる場合が多いみたいだけど、そこはやはり子役、猿回しの情が重要みたいで、七代目坂東三津五郎が名演だったそうだけど、わたしが覚えているのは、最晩年の十代目三津五郎が、歌舞伎座新会場一周年で猿回しを演じていたなあ~というくらい。

で、文楽ですが、猿が人形だというのは、狂言や歌舞伎にない強みで、猿が絡んだ部分の表現は豊かです。そのかわり、語り込む演目ではないという位置づけなのか、七代目三津五郎が演じた猿への愛情みたいな濃さは、文楽の舞台からは希薄。いろいろ比べると面白そうなんだけど、文楽でも歌舞伎でも上演回数少ないんですよね~。

次が、「信州川中島合戦」。近松門左衛門の晩年の作なんですが、歌舞伎でも「輝虎配膳」をたまにやるくらいだし、文楽でも地味なせいか、滅多にやらないらしい(この辺りは、住大夫師の「文楽のこころを語る」をご参考に。)。そういう意味では、輝虎配膳~直江屋敷までやる公演というのは貴重ですよね。後で床本を読み返す価値がある。

で、舞台ですが、やはり演目が地味すぎるのか、なかなか難物だと思いました。山本勘介の吃音の妻の言葉にならない語り。吃又の浮世又兵衛の吃音と違い、高い音の吃りなんだそうですが、雄弁な台詞より、吃音の妻の方が説得力を持つという芝居は、文楽であれ歌舞伎であれ大変な代物だなと。

また、川中島の合戦の両雄の家臣を身内に持つ母親の苦悩って、これもちょっとやそっとでは・・・。

そういう意味では、資料集の源大夫・住大夫の解説が非常に面白かったですね。今回、輝虎配膳が咲甫大夫、直江屋敷が文字久大夫でしたが、大きい見せ場に乏しい演目は大変なものだと思いました。10年後くらいにこのふたりにまたやってもらいたい。なお蓑二郎のお勝の人形は好演だとおもいました。

ということで、第二部、第三部はまた後日。


文楽のこころを語る (文春文庫)
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