Wilhelm-Wilhelm Mk2

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エル・トポ

2019-07-07 | Weblog
最近観たもの読んだもの


「ニューヨーク公共図書館」:休憩入れて4時間弱のドキュメンタリー映画。様々な肌の色の人々が真剣に未来を語る姿は日本では見られない。これは私がアメリカに行ったときも感じたことだ。飲み会が佳境に入ると、皆グラスを片手にアメリカや世界の政情を真剣に語っていた。日本の学生なんぞウェーイしてカラオケでオールだ。アホまっしぐらだ。

「エル・トポ」:アレハンドル・ホドロフスキー監督・主演のカルト映画。凄い映画だ・・。なぜ今まで未鑑賞だったのか。あらすじはこんな感じ。

「さすらいの凄腕ガンマンであるエルトポ(もぐら)。妻を砂漠に埋葬し、一人息子を全裸で侍らせて旅をしている。軍人によって虐殺されつつある村に到着したエルトポは、大佐を決闘で倒し村を開放する。エルトポは大佐の情婦にされていた女性に誘惑される。そして子供に「一人で生きていけ」と告げ、女性と旅にでる。しかし、純粋に見えた女性は次第に変貌する。自分の愛が欲しければ砂漠に住む4人のガンマスターをすべて倒せと要求する。マスター達はガンマンというよりヨガ行者たちに近い。撃たれた弾を急所を外して自在に通すマスター、完全なる無心から最速の早打ちをするマスター。1発だけしか持たない一発必中のマスター。弾を虫取り網で取り相手に打ち返すマスター。勝てないと悟りつつもエルトポは卑怯な手段を用いてマスター達を3人まで倒す。しかし最後のマスターは解脱の域に達しており、エルトポと勝負せず自ら命を絶つ。わが身の存在に疑問を抱き発狂するエルトポを、道連れになった女ガンマンと恋人が撃ち殺す。このとき、キリストと同じく手足そして脇腹に弾が通る。エルトポは奇跡的に一命をとりとめるが昏睡状態となり、その間不具者たちが密かに住まう洞窟の奥で生き仏のごとく安置されていた。目覚めたエルトポは聖人のような姿となっており、不具者たちを救うべくトンネルを掘ろうと決心する。ダイナマイトを買う費用を賄うために、白人達が支配する腐敗した町で大道芸をするエルトポ。白人の要求で助手を務める不具の女性と交わりさえもする。この女性はそのまま妻となり子供を産んだ。白人たちは原住民に怪しい新興宗教を布教していたが、それに疑問を感ずる若い宣教師は過去にエルトポが捨てた子供であった。子供はエルトポを殺そうとするが、エルトポの妻に懇願されトンネルの完成まで待つことにする。いつしか、親子と妻の3人で芸を行い、そしてトンネルも掘るようにさえなる。トンネルが開通したとき、エルトポは息子に命を差し出すが、息子はもはや父を撃つことはできない。トンネルを通って洞窟内の不具者たちが町に押し寄せる。しかし、白人たちは彼らを一顧だにせず機関銃で掃射してしまう。絶望にかられたエルトポは、絶叫しながら白人にたち向かうが、彼もまた蜂の巣される。しかし真の聖人となったエルトポは不死身となっていた。もはや彼に銃弾は無効だった。彼は機関銃を奪うと、白人たちを一人残らず皆殺しにする。そして、自らにけじめをつけるべく、ランプの油をかぶり座禅の状態で己に火をつけるのだった。息子と子供を抱いた妻が茫然とその炎を見つめて終わる」

全裸の息子と血だまりを歩く

第1のマスター

第3のマスター

第4の究極マスター

聖人となったエルトポ。妻と共に。
ホドロフスキーがパントマイムの経験があったためか舞踏的な演出が目立つ。また、血のりが冒頭から滝のように使われるが、数えきれないほどの人間が死ぬのでそのあたりはすぐ麻痺する。特筆すべき点は、フリーク(不具者)が沢山出てくること。第一のマスターの従者は、両腕がない男と両足がない男のペアである(おそらく本物)。この2人は文字通り一心同体で主人に仕え、主人と共にエルトポに殺されるわけだが、哀れに思ったエルトポは二人の亡骸を重ねてあげるのだった。また白人が徹底的に醜悪に描かれているのも特徴。現地人を奴隷として使う厚化粧と毛皮にくるまれた肥満体の女性。南米でユダヤ人として生まれ差別に苦しんだホドロフスキーの恨みなのか近代文明に対する嫌悪なのか。その他、そこかしこに日本からの影響がみられる。後半のトンネルを掘る話は、菊池寛の「恩讐の彼方に」そのままだ。ホドロフスキーはメキシコで日本人から禅を学んだというので、そこで聞いた話なのかもしれない。またエルトポが決闘の際に両腕をクロスにかまえるのだが、これは小林正樹の「切腹」で仲代達也がみせた構えのオマージュだろう。と強烈な映像と内容に加えて裏も深く、簡単には語りつくせない極上のカルト映画なのでありました。


アレハンドロ・ホドロフスキー・・まだ存命中90歳。監督であり俳優であり漫画家であり禅行者でありタロット占い師でもあり・・・子供たちもアングラ系で活躍中。監督した映画作品は少ないが、どれも問題作のようなので、ゆっくりと鑑賞していきたい。



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