Wilhelm-Wilhelm Mk2

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ベルク

2007-12-02 | Weblog
 N響定期を聴いてきた。当日券1500円。ソリストがフランク・ペーター・ツィンマーマンということで、突然思い立って所用の帰りに渋谷へ向かう。ツィンマーマンはきちんと聴いてみたいヴァイオリン奏者だったのだが、今回のソロ演奏会はすでに完売なので、せめて協奏曲で堪能しておこう。まだ40台前半ということで、遠目には青年っぽう雰囲気を醸し出している爽やか系の奏者である。実は5年前にもN響で一度聴いている。あのときはヒンデミットの協奏曲だった。現代曲だったので曲に対する印象は殆どない。本日の曲もまたまた現代曲でベルクの協奏曲。2楽章の構成で陰鬱で起伏に乏しく、昼間の疲れから生じた睡魔に耐えきれなく後半はねてしまった。ベルクがアルマ・マーラーと再婚相手の建築家グロビウスとの間にできた娘マノン(夭逝)を思って書いた曲らしい。ベルクにとって少女マノン・グロビウスは天使だったそうだ。ツィンマーマンの音は瑞々しく音程も美しく、正当派な名手という感じだった。是非、次はソロでまともな曲を聴きたい。
 メインはエロイカ。指揮はアラン・ギルバート。ベルリンフィルにも登場し、ウィーンオペラも振り、時期ニューヨークフィルの監督に内定という、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの俊英である。母親が日本人で実はハーフだが、体の大きさは西洋人のものだ。両親ともにニューヨークフィルのVn奏者だったらしく、本人もヴァイリンがかなり弾けるらしい。数年前にN響で一度聴いて、なかなか良い指揮者だと思った記憶がある。さて本日のエロイカだが、はっきりいって酷い演奏だった。まずオーケストラの機能が最低だ。ヴァイオリンの音程も縦線も甚だしく揃わない。スケルツォでは崩れかけるし、本当にプロですか?ホルンは何度も裏返るし、バスの低音もなんだか音程がまとまらず気持ち悪い。迫力もないし。誰かが四六時中弓鳴りをさせており、SPレコードのようにピチパチ鳴って耳障りだった。音程以外の音は雑音だと思うのだが、ああいうのは許されるのか?N響のバスは最強だったのに、一体どうしたことか?まあ理由は想像つくが・・。そして、とどめにソロオーボエの薄っぺらさ。気味の悪いヴィブラートをかけて、か細い音で常に上ずってるいるのが何ともたまらなし。これに加えて指揮者の解釈。いわゆるピリオド的な奏法で、ビブラートを押さえ目にしリズムを立てて弾かせているのだが、スカスカの鳥の胸肉のような音で、さらに音程が悪いものだから、根本的に音楽として楽しめない。S席だったらもっと上手に聞こえたのか?そうかもしれない。古楽器的な奏法なのに、突然大時代的なテンポが見え隠れしたりする。ラトルとフルヴェンのいいとこ取りを狙ったのかもしれないが、全体としてはかなり痛い演奏だった。周りでも拍手をしてない人が結構多かったし、ブラヴォーも飛んでなかった。あとエロイカに限らずベートーヴェンの演奏によくあることだが、ffを強調するためにfを小さめに弾くという奏法は全く共感できない。fは聞き手に強く大きく感じさせなければならないわけで、fの箇所で「何かしょぼいな・・」と感じさせてしまうようでは、それはfと言えないと思う。まあ今日はツィンマーマン狙いだったので、ベートーヴェンについては別にいいのだが。
今月なかばのサントリー公演は、下野氏の指揮でキュッヒルがソロで演奏するらしい。キュッヒル氏がソロでどのくらい弾くのか聴きにいきたいが、完売とのことだ。