パンキュッシュな白昼夢

フィクションとノンフィクションの狭間を行き交う白昼夢。

現代版『自虐の詩』。今宵…あなたは目撃者になる!

悲劇の音楽家と、ある夏の逸話

2019-01-28 18:26:05 | コラム
お題「逸話を教えてください。」に参加中!

第九の呪い。

クラシック音楽家が誰でも知っている、

「交響曲第九番を作曲すると死ぬ」

という迷信だ。

ベートーベンが第九を完成させ、

それで燃え尽き、亡くなったことで言われるようになった。

ドボルザーク

ドビュッシー

シューベルト

ブルックナー

マーラー

彼らも交響曲第九番を作曲して力尽きている。

どうやら、人間の才能にも限界ががあるらしい。

てか、

バッハやモーツァルト(浪花のモーツァルトではありません)のような、

天から与えたれた才能を持った人は別だ。

バッハは20曲、

モーツァルト(しつこいですが、浪花のモーツァルトではありません)は41曲の交響曲を作ってる。

ただ、バッハは生前、才能を認められてなかったし

(だから、ある意味、気楽に音楽と接してたかもしれない)、

モーツァルトはボロボロになって夭折してる。

時代に語り継がれる仕事をするって命がけなんだよな。

 

 

最近…

自分の生き様について、

真剣に考えこむことがある。

 

バンドをやってるとき、

某大手運送会社の集配センターで、

荷物を行き先別に仕分けするバイトをしてたことがある。

わりと、おいしいバイトだった。

時間は夜の10時から、朝の6時まで。

時給は1500円。

しかも、やりきり仕事で、早く終われば帰ってもいい。

社員が6時になると退社のタイムカードを押してくれるのだ。

イレギュラーな時間帯だったので、メンバーもおもしろかった。

一番多いのは、僕みたいにバンドとバイトを掛け持ちしてるような、

『夢を追いかける』系の人たち。

役者、漫画家、ミュージシャン、芸人、画家のたまごたちだ。

その次はヤンキー、暴走族あがりの人たち。

そんな連中がデカイ面をして、職場を仕切ってた。

空き時間になると、

フォークリフトでチキンレースしたり、

バイト仲間を呼び出して、

マイナス30℃の冷蔵庫に閉じ込めるドッキリをしかけたりね。

お遊びの延長線上でバイトをしてたって感じかな。

若気の至りで、本当にお恥ずかしいけど、

みんな若く(平均年齢は22、3歳)、活気にあふれた職場だった。


そんなバイトメンバーの中に、

ひときわ、異光を放つおじさんがいた。

ネイティブアメリカンの酋長のような風貌だったため、

みんなから、

『ジェロニモさん』と呼ばれていた。

 

 

このジェロニモさん、

当時、44歳にして…

ミュージカル俳優を目指していた。

 

いくつになっても夢を追いかけるのは悪いことじゃない。 

ただね、

ジェロニモさんは、 

演技やダンスのレッスンを受けるわけでもなく、 

劇団のオーディションを受けるわけでもなく、 

無為な毎日を過ごしてた。

ただ『目指してる』だけなのだ。

そのくせ、

妙にギョウカイ用語を使うので、

最初は本当にギョウカイ人なのかと思ってた。 

たとえばさ、

『六本木』を『ギロッポン』

とか、 

『お姉ちゃん』を『チャンネエ』 

とか、 

『コーヒー』を『ヒーコー』 

とか、 

『一万円』を『C(ツェー)マン』 とかね。


※ロットン注 中山秀ちゃんじゃありません※


芸能界に足を踏み入れたことさえないのに、

この振る舞いって、

すげえ痛いよな。 

 

ただ… 

ジェロニモさんだけじゃなく、 

当時、そのバイト先にいた『○○志望』の大人たちは… 

多かれ少なかれこんな感じだった。 

結局、彼らは、

『○○志望』って肩書きを、 

自分の怠惰さの隠れ蓑にしてたんだよな。 

それをバリアとして社会と接するしかなかったんだと思う。

 

しかも、このジェロニモさん…

無断欠勤、遅刻、早退を繰り返すし、

仕事は憶えない、間違える、品物は壊す。

そして、

言い訳してばかりして、自分の非を絶対に認めない。

つまり、使えないうえに、可愛げもない人なのだ。

やりきり終わりの仕事だから、

欠員がでたり、トラブルがあったりすると、

帰るのが遅くなる。

だから社員にもバイトにも煙たがられてた。

あまりにも無断欠勤を繰り返すもんだから、

とうとう、ジェロニモさんは社員に、

「次に無断欠勤をしたらクビにする」

と、厳しく言い渡された。

ジェロニモさんは落胆し、

仕事が終わっても、反省してるように見えた。


ところが、ジェロニモさん…

翌日、翌々日と無断欠勤をしてしまうのだ。

もう辞める気なんだろうな、と思っていると、

3日後、ジェロニモさんは何食わぬ顔で出勤してきた。

ずいぶんと日焼けして、アロハシャツ姿で。

 

「いや~お腹がいたくなっちゃってさぁ~」と。

その態度を見て、みんなあきれた。

そして、

社員が、つかつかと近寄り、ジェロニモさんに言った。

「もう来てくださらなくて結構です」と。

ジェロニモさんは、得意の言い訳を繰り返したが、

社員の決断は変わらない。

ジェロニモさんは諦めて、

背中を曲げ、重い足をひきずるようにトボトボと帰路につく。

そのとき、ジェロニモさんが着ていたアロハシャツの背中には、大きな文字で…

『なんくるないさ』

と、書いてあった。

 

今現在、60を越えたはずのジェロニモさんは…

『なんくるないさ』で過ごせてるんだろうか……………。

 

でもね、

僕も、

いつのまにか、

シド・ビシャスより、

カート・コバーンより、

高杉晋作より、

坂本龍馬より、

モーツァルトより、

杉山登志より、

松田優作より、

そして…

ジョン・レノンより…

歳上になっちまった。

今までの人生で、

誇れるような足跡はまったく残してないのに。

もちろん、

僕の努力が足りないだけのことだ。

わかってる。

わかってるんだけど、悔しいし寂しい。

そして、

自分の不甲斐なさに腹が立つ。

 

でもさ、

今、こうして、

悔しさや悲しさや寂しさを感じられるってことが、

すべて、

明日へつながって来るんだよな。


まだまだいろいろ感じていたい。

ポジティブな感情もネガティブな感情も。



生きててよかった。

本気で思う。

こんな幸せってねえんだよな。

これが『なんくるないさ』の、

本当の意味なのかもしれない。

 

今宵も月に魅せられるのも悪くないよな。

 

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この記事は、

お題「逸話を教えてください。」に参加するために、

過去記事、

『パンクスターの悲劇』を大幅に加筆修正したものです。

http://blog.goo.ne.jp/vaisraveena/e/9a14a8ea3d367e71e232b63c4f32bb69

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