v6くるくる日記

「幸せな社会のための技術を語りたい?」日記

通信事業者の国際競争力

2006-06-24 00:33:31 | IT社会論とでもいうべきもの

TSSさんから通信事業者の国際競争力についてコメントをいただいたので、それについて書いて見ます。

------TSSさんのコメント---------
それはさて置き、通信事業者の国際競争力ということは考えなくて良いものでしょうか。いまもって放送局には外資規制がありますが、通信事業者の外資規制はかなり以前に外されています。たとえばNTTが外資に負ける(潰される も 買収される も含めて)事態がもし起きるとしても構わないことでしょうか。そこらへんの議論はわざとされてないのかなぁ…。「誰かがやってくれるならNTT無くなってもいーじゃん」と本当に思っているならはっきり明記して欲しいと思っています。
サービスメニューが安定しないことが多いので私は心情的には外資支配は嫌なのですが、社会的得失まで考えた結論は出ていません
------------------------------

通信事業者の国際競争力について、全く同意です。ただ、通信事業者の国際競争力にいくつかの意味がありそうです。

まずは、海外進出という意味。実は私は、10年前ぐらいに国際への進出もフリーハンドになったNTT系某通信会社で、某国際進出プロジェクトにもどっぷりかかわりました。Tier1 ISPの米国V*rio社をを買収したプロジェクトです。不幸にもバブル前後の株価変動の波にもてあそばれ、財務的には特損をだしてしまったわけですが、時期さえ間違わなければ、本当はもっとうまく行ったはずと思います。また同社に派遣された社員は肌で国際ビジネスの最前線を感じており、某通信会社の国際経験値は相当上がっているようです。今後、ANY産業と通信の連携が一層大事になってくることを考えると、車や家電などが関連産業を引っ張って日本の国際競争力を上げたようなことが通信+αで起こるようになれば、非常にうれしいことですよね。実現性という意味では極めて厳しいチャレンジではあると思いますけど。

TSSさんが心配するのは日本国内の話ですね。「実は」ばかりで恐縮なんですが、私は某外資系通信会社も1年間経験しました。「サービスメニューが安定しない」どころか、彼らは採算性の合わないものはどんどん切り捨てますし、本国の都合で簡単に縮退・撤退していきます。彼ら(経営者)にすれば株式価値を上げるのが彼らの一番の目的ですから、うまくいっているときはともかく、うまくいかなくなる、すなわち日本のユーザの保護と自分の利益の間でコンフリクトが起きてくれば、100%確実に自分の株主の利益を優先します。

ですので、TSSさん提起の「社会的得失」についての、私の結論ははっきりしています。外資が入ってくるは競争の意味ではよいことかもしれませんが、少なくとも数社は日本資本の通信業者ががんばって戦っていく必要がある、と思っております。もちろん、保護政策で甘やかすのがいいとは思いません。その意味では少なくともNTTさんにはどうしての真の競争力でがんばってもらわないと困ります。

ところで余談ですが、NTTはすぐに顧客を囲い込むとか、NTTは100%のシェアを目指さないと気がすまないとか、いろいろ批判もされますし、実際そういうタイプのNTT幹部/社員もいます。が、私の知っている範囲では、逆に普通の民間企業よりもずっと鷹揚な幹部/社員も多いのも確かです。「業界が広がっていくことが大事。その中で自分たちの取り分は自然と増える」という思想です。私などはこういう思想で育っています。私なんぞの業界活動(APNIC, JPNIC, ICANN, IPv6 Forum, etc.)を会社も許容してくれたのは私にとっても、たぶん少しは世の中のためにもよかったんだと信じております。また、その思想は現在の会社ネットコアでも生きています。たぶん競争の厳しい企業の方から見れば「のほほん」としているように見えるかもしれません。でも、だからこそ、そこが会社の独自性とある種の強みなんだと思うわけです。だんだん通信の国際競争力と離れてきましたので、このへんで。


 



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
遅くなりました (tss)
2006-07-21 19:05:39
わざわざ一項目起こしていただいたのにコメントが遅れてしまいました。



少なくとも日本国内の通信を担う事業者としては国内企業にもがんばってもらう必要があるというお考え、とまとめて合ってますよね? 依然として私の方は根拠のある結論には至っていませんが気持ちの方ではまったく同意見です。



同時に、国際通信企業として動けるだけの規模・体制と経験がなければ日本市場へ進出してくる海外の巨大キャリアと互角に戦うのは困難だということは考えていませんでした。私はドコモの海外投資を揶揄して村上龍に「あの金で何が買えたか for ドコモ」を書いてもらおう!とか言っているのですが、私が評価していないプラスはドコモにもあったのかもしれませんね…ほとんど無さそうだけど…。



通信産業政策については、というか他産業を含め政府の「競争促進」「新規参入育成」政策はその多くに違和感を感じます。デザインゴールが明記されていないからです。競争が促進されることは市場の活性化のために必要なことということは理解できるのですが、ではどのような市場が形成されれば政策目標が満たされたことになるのでしょうか。そうして形成された市場は誰の利益になるのでしょうか。通信産業に戻って言うと目的は単なるNTTいぢめになっているように見えてなりません。NTT東西分割など、少なくともエンドユーザの利益にはまったくなっていません。漏れ聞いたところによると中継事業者にも「必ず二社と話をしなくてはならないのでかえって面倒になった」という評価もあるようです。「誰の利益を図っているのか」「いつになったら、どのような状態になったら『保護』をやめるのか」が誰にもわかっていないので今度はファイバ網の開放義務なんぞというわけのわからない話がまかり通ることになる…。



やっぱり、「政策」が「狙い」と「目標」をはっきり言わないのが問題だと思います。元の話題に戻ると国内通信企業は無くなっても良いのか困るのかを政策がはっきり言うべきじゃないだろうかと。

返信する