v6くるくる日記

「幸せな社会のための技術を語りたい?」日記

IPv6素朴な疑問集その8 「IPv6ってコストセーブだけにしかきかないの?」

2006-03-22 00:16:28 | IPv6

IPv6素朴な疑問集その8を書いてみます。

(疑問)
「IPv6は実現面のメリットしかないっていうことですが、本当にそうなんですか?」

(回答)
前の記事でIPv6はIPv4と比べ、機能面での差ではなく、実現効率やコスト上の差、将来性で導入されていくと書きました。この疑問はそれだけで十分なモチベーションになるだろうか、それはあまりにつまらないナァという疑問ですね。結論から言えば、その通りで、それだけではつまらないのです。短期ではなく長い目で見たときには、IPv6は大きなイノベーションを誘発するだろうというのが私の意見です。

少し歴史を振り返ってみましょう。歴史上の大きな技術発明がどういう風に導入されたかということです。

実は、新技術は少なくとも当初は効率を改善するものが多かったのです。印刷技術しかり、蒸気機関しかり、登場当初は既存のものを効率よいやり方に置き換えたに過ぎません。印刷技術は聖書を手書きする聖職者の仕事を、蒸気機関は農耕作業における馬を置き換えました。

しかし、時がたつにつれ、それらは基盤技術としてさらに大きなイノベーションを誘発しました。蒸気機関は蒸気機関として新しい機能を提供できたのではなく、蒸気船や蒸気機関車により、「以前になかったもの」をもたらしました。効率という量的な変化ではなく、価値の創造という質的な変化がうまれたのです。

もう一点。現在では、ワットの蒸気機関が産業革命を起こしたといわれていますが、実は当時、すでにニューコメンという人が発明した蒸気機関がありました。つまり、ワットの蒸気機関は改良版だったのです。結果としてワットが発明したものがイノベーションを引き起こしたので、現在ではワットだけが有名となっています。

私はIPも同様だと思っています。例えば50年先から現在というものを見渡したときに、IPというプロトコルが改良段階を経てIPv6になり、それが他の分野のイノベーションを誘発したという評価がなされるだろうと考えています。

繰り返しになりますが、短期的には目に見えるところの効率やコストというところが導入要因になります。それは導入する人がその人の能力で見通せる理由でしか導入しないから、という理由もあります。長期的に見れば、誰かが新しいインフラの中でイノベーションとして今までに無いものを創造します。「誰かが」というところが重要です。計画して起こるものでもないんです。

こう考えると、技術の進歩って不透明、不確実ですね。ピーター・ドラッカーは技術のアセスメントではなく、技術のモニタリングをしろ、と言っています。大会社のきちんとした組織ほど、きちんとしたアセスメントを行い、きちんとした見通しのもとに技術開発を行っていきますが、この変革期においては、技術で起こりつつあることを精密に読んでいくということが大事だということを言っているのですね。含蓄が深いです。



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