私の目指す教育は、きわめてシンプルであり、過去の先人たちが語ったものであり、別に目新しいものではありません。しかし、そこに現代の教育が見失った、子供たちが大きく成長していくためのヒントがたくさんあるのだと思います。
目指す一つは、「志の教育」です。これも、「志」という言葉がわかりにくいうえに、雰囲気で何となく語られるから、却ってネガティブな感じを持つ人も多くなったのではないかと思います。
しかし、それでも私は志が大切だと思います。なぜなら、自分の一度の人生の中で、目指すものがあった方が自分も周りも楽しいし、志があれば放っておいても自ら学び始めていくことができるからです。やらされる勉強、やらされる仕事、やらされる人生ではなく、生き生きと生きて欲しいからです。
志を立てるための方法は全部で四つです。これは橋本左内が数え年15の時に書いた『啓発録』の中にある言葉です。
1.読書をして先人の生き方や考え方に学ぶこと、
2.師友に学ぶこと。つまり、あらゆる人との出会いの中で生き方や考え方を学ぶこと、
3.逆境の中での心の持ち方を磨いていくこと。逆境という神の恩寵に立ち向かう人生こそが、人格を磨き、不可能を可能にしていく道だと知ること、
4.感激すること。心が揺さぶられ突き動かされるような経験が、その人の志の種になるということ。
この四つのことは、読書一つとっても簡単なものではありません。時間が必要です。そして、人生の様々なステージにおいて、折に触れ考え、軌道修正し、少しずつ朧気だった輪郭が明確になっていくものです。
バッカーズ寺子屋のたった30日ほどの学びで、「志が立てられました。」と言うような易々たるものでは断じてありません。テストの答えを書くような生易しいことではないのです。記号で適当に答えて、たまたま正解だったというようなことは絶対にないものなのです。
しかし、それでも私は「志の教育」に向き合っていこうと思います。一人でも二人でも、自分の志を立てて、迫力ある人生を送っていく人が増えていくことが、未来の子供たちの幸せにつながると信じているからです。