基本データ
ひらまつつとむ
集英社 ジャンプコミックス 1986年
はしがき
この作品が「週間少年ジャンプ」で連載されたのが昭和60年だという。今から25年近くも前、私が小学生の頃の話だ。その時はまだ単行本を買うという習慣がなかったので記憶の奥底へと埋もれていた。
大学生の頃、たまたま入った古本屋でこの単行本を見つけた。すぐ購入することに迷いは無かった。
作品検証
「閉じた世界」
198X年9月3日、突如起こった核戦争によって関東地方は壊滅的な被害を受けた。ほんの偶然から実験的に設置された核シェルターに避難できた122名の小学生と一人の女性教諭は来るべき「核の冬」を生き延びなければならなかった・・・
核戦争後の世界をリアルに描くならば暴力を抜きにして描くことはできないだろう。だがこの作品は子供たちの「閉じた世界」を描き、直接的な暴力描写は意図的に避けられている。
閉じた世界の中で子供たちが懸命に生きようとする姿を描くのは児童文学の本流といってもいい。大人はあくまで子供たちにとっての導き手としてのみ存在している。
その導き手としての大人の死がこの作品の幕となる。これを「打ち切り」という人も多かろうが、これ以上引き伸ばしたとしても作品がいい方向に進む可能性は低い。事実はどうあれ、この作品は引き際を間違えなかったといっていい。
結び
「原点」
多くの人々にとってこの作品はジャンプ漫画の歴史に数多有る「打ち切り漫画」の一つにすぎないのだろうと思う。だが私にとってこの作品は自分の作品批評における原点の一つという大いなる意味を持つ。
もしこの作品に出会うことが無ければ、「エルドラン」シリーズにも「ママは小学4年生」にも「みかん絵日記」にも出会うことが無かっただろう。そしてそれが今、「今日の5の2」へとつながっている。