U魂(ウコン)

◆『U.W.F』最強伝説を追い求める
36歳 おやじブログ

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2007-04-16 | コラム 闘議

最も僕の理解者である先輩が
隠退した。自社を後輩幹部に譲渡し、
身を引いたからと突然の連絡。
急いで誘われたお店に出向いた。
週末で混み合う店内の一番奥手で
彼の会社の社員で見覚えのある
4人の女性リーダーが泣いていた。
1人はテーブルに顔を伏せて、もう
1人は俯きながら嗚咽し、あとの2人は
互いに寄り掛かり号泣していた。

「どの娘が本命ですか?」

と冗談をトバす空気ではなかったので、
先ずは彼の話を聞く事に。
彼は僕より3つ年上、人望も人脈も
行動力も、およそ仕事に必要な全てを
具えていた気がする。そんな彼が手腕を
振るった会社は順調に業績を伸ばし、
今や年商15億、70人もの社員を抱え
起業は企業へと成長していた。
彼は今年40歳、現役バリバリ。
それでも、リタイアするのは何故か?
誰もが羨む状況で何が不満なのか?
彼は悟った顔で言った。

「いつの間にか、追い立てられる日々・・・」

世の中、便利になり過ぎて本来の人間の
能力を遥かに超えた作業を機械によって
強いられている。物思いに耽る暇も無い。
学生時代、あんなに時間を持て余して
いたのに、今では会社の仕事、家庭での
コミュニケーション、年老いた両親のケアー、
年齢を追う毎に問題が山積みとなり、
その”課題”をこなすのに1日どころか
1年があっという間。
そんな”充実”ならぬ”従事”な人生で
本当に幸せなのか?と自問自答を
繰り返したらしい。そして導き出された
結論がスローライフへの転換。
行動力に長ける彼らしく、既に行き先が
小笠原諸島の父島と決まっており、
移住に反対された奥さんとも先月、離婚
手続きを済ませ、来月には引っ越すらしい。

退いて泣いてくれる社員がいる。
それだけで、彼の度量の大きさが窺い
知れる。マスカラが落ち”タヌキ”に
変身した女史4名は残留を懇願するが
彼の意志を尊重しよう。と諌めた。
沈んだ空気に包まれていたので
「まぁ、同じ東京都だから」と無責任な
フォローに東京から1300km、フェリーで
片道26時間を要する、ブラジルより
遠い島だと知っていたらしく、冷たい
視線を返された。(でも東京都ですから)
経済的な事を確認したら、既に現地に
家を建設中、多少の蓄えもあり、
バイト先も決まっていて、生活費として
月10万も稼げば何とかなるらしい。
年収は1/30、知人も無く、地位も捨て
日本最南端へ移住する彼の勇気には
敬服する。誰がココまで踏み切れるか?
文字通り”柵(しがらみ)”という名の柵に
囲われ生きるしかない僕には焦がれても
彼の真似は出来っこない。
彼には、いつまでも敵わない。

場が少し明るさを取り戻した頃、
”とろける杏仁豆腐”を頬張る
タヌキ4匹を愛しそうに見つめ彼は
「待ってるからな」と僕に言った。
オッサンに会いに南の島…って
アンタが東京に来いよ。


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