重低音のBlue Canary

♪ 思いつくままを、つたない文と photo で …

沈黙の春…。

2006-04-12 | つれずれ
このところ桜ばかりを見上げていたら、足元にタンポポが咲いていることに今日気がつきました。しかも都心の中央分離帯で。



タンポポと言えば、札幌に単身赴任して初めて見た北海道の「タンポポ草原」には驚きましたねえ。
場所によっては数十メートル、数百メートルの一面が、まっ黄色のタンポポの花で埋め尽くされているんですから。すごいです。



ところが、その北海道でいま……。
「スズメが消えた――大量死か、大移動か」
「今冬の道内――研究者も『なぜ?』」

地元・北海道新聞が今月5日の夕刊で報じたニュースが、一昨日あたりから全国ネットでも流されていますね。
原因はまだ不明だとか。

ニュースを見て、ずいぶん昔に読んだ1冊の本を思い出しました。
レイチェル・カーソン著「沈黙の春」(青木簗一訳)新潮社


その第8章の「そして、鳥は鳴かず」に、こう書かれています。

「鳥がまた帰ってくると、ああ春がきたなと、と思う。でも、朝早く起きても、鳥の鳴き声がしない。それでいて、春だけがやってくる――アメリカでは、こんなことが珍しくなくなってきた。
いままではいろんな鳥が鳴いていたのに、急に鳴き声が消え、目をたのしませた色とりどりの鳥の姿も消えた。
突然のことだった。知らぬ間に、そうなってしまったのだ。」……

発生遺伝学、海洋生物学を学んだアメリカのジャーナリスト、レイチェル・カーソンさんがこの本を最初に書いたのは1960年代の初め。もう40年以上も前になりますね。

当時のアメリカでも、似たようなことが起きていたんですね。
アメリカで突然姿を消した鳥は、日本のスズメと同じほどポピュラーなコマドリだったそうです。

調べてみると原因は、ベニヤ板を作るために輸入したオランダ楡(にれ)の木についてきたニレノキクイムシを防除するため、殺虫剤を撒布したところ、その殺虫剤が付いた落ち葉を食べたミミズの体内にDDTが蓄積し、そのミミズを好物にして食べているコマドリが大量に中毒死した、という食物連鎖?だったようです。

報道によると、今回死んだスズメを病理検査しても異常は確認されなかったそうですから、全く同じケースとは言えないようですが、では何が原因なのか――まだ分かっていないだけに余計、不気味さを覚えますよね。


と同時に、私が「こわい」と思ったもう1点は、今回の現象が、新聞に取り上げられて多くの人がそのことに気付くまで、かなり時間がかかっていることです。

ネットを見ていたら、すでに昨年11月頃、「最近、スズメを見なくなったね」とブログに書いていた方がいらっしゃいました。

最初に誰かが気付いた小さな変化が、いまこうして全国ニュースで取り上げられるほど大きな変化として認知されるまでに、半年近い時間が過ぎていたということですよね。

日々の些細な変化に無神経・無頓着でいると、気付いた時にはもう取り返しのつかない状況に身を置いてしまっている……。
環境問題に限らず、私たちの毎日の過ごし方のあらゆる場面で、同じ危うさが潜んでいるじゃないでしょうか。

「沈黙の春」――恐ろしい言葉ですね。


レイチェル・カーソン著「沈黙の春」(青木簗一訳)新潮社