雑談の達人

初対面の人と下らないことで適当に話を合わせるという軽薄な技術―これがコミュニケーション能力とよばれるものらしい―を求めて

「復興税」って名前にすると、政府への文句は封じ込められても、陰で被災地の敵を作っちゃうかもよって話

2014年03月05日 | 政治の雑談

確定申告の季節であるが、所得に対して0.2%ちょいの「復興特別税」なるものが課されている。国税庁のHPによると、平成49年まで取り立てるらしい

被災地の支援にはカネがかかるのは当然だが、国民から税金を巻き上げることほど不人気な政策はない。そこで「復興」という大義名分を税金の名前に冠することで、愚かな国民の文句を予め封じてしまおうという訳である。「被災地の復興に協力しない奴は非国民だ」と言わんばかりの空気がムンムンな中、選挙が怖い政治家の先生方もこれを利用しない手はない。

しかし、世の中にはいろんな人がいる。被災者ではないが元より日々の生活のやりくりに精一杯なのに、納税という形で復興支援に強制的に参加させられることに不満を持ってはいるものの、非国民として吊し上げられたくないので押し黙っている人もきっと少なくないはずだ。こういう人たちの目に見えない、行き場のない怒りは、政府を素通りして被災地に向かうおそれがある。

「復興のための増税」ということを謳わずに、限られた財源の中、数ある支出先の中で敢えて被災地の復興に優先順位を置くとするなら、これは政府の判断であり、復興のために増税したことに対する不満があったとしてもそれは政府に向かうのが筋というものだ。ところが、「これはあくまで被災者支援のための税金だからな、お前ら文句言うなよ」といって取り立てたらどうなるか。政府は狙いどおり批判を回避できるだろうが、不満は被災地に向かうしかないだろう。

既に消費税に対して「社会保障費の財源として増税する」という似たようなロジックを使って国民の文句を封じた結果、生活保護や年金の受給者に対する目に見えないドス黒い悪意が日本社会に渦巻いている。福祉とて、すべての人がもろ手を挙げて賛成するとは限らないのである。これから平成49年まで「復興税」なるものを取り立てれば、震災のことなど何も知らない人間、更にはまだ生まれてさえいない人間からも取り立てることになり、確実に不満を持つ層は累積されていく。こうした人間からの不満については、政府も国会議員も自ら責任を以て被災者の盾となることなくスルーするつもりである。今後四半世紀もの間、同じ日本国民同士のいがみ合いと敵愾心の土壌を強固なものして、きっと将来に禍根を残すだろう。


最新の画像もっと見る