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「ドン・キホーテ」

岩波文庫 前3巻・後3巻(初出1605年)
著者:ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ(1547ー1616) 訳者:牛島信明

4世紀以上前に書かれたスペインの小説だが、今日でもその名は世界にひびいている。無鉄砲さの代名詞で、なぜか量販店の名にもなっている。聞けば、とたんに滑稽な空気が生れ、大抵の人が笑顔になる。しかしその割にちゃんと読んだ記憶がない。そこで暇に飽かせてこの際読み通そうという、無謀な試みに着手したのが、先月の末だが、何しろ6巻もあり、文体は長々しくとっつきが悪い。そこでまず外堀を埋めることにした。

★作家はどういう人だったか?

セルバンテスの人生自体がかれの小説にもまして数奇だった。
24歳の時「レパントの海戦」で負傷し、その後左手が利かなかったとか、アルジェの牢獄に人質として4年も入っていた。ドン・キホーテを書いたのは60歳近いが牢獄の中で構想したという。ドン・キホーテ以外の著作もあり「模範作品集」は奇想天外な短編で読みやすい。
本筋に挿入される物語の部分が面白かった。あっちに飛びこっちに飛んで、「本を読む」ことのむつかしさと面白さを痛感した。そこにある本を手に取って最後まで読むのは、簡単そうでなぜ難しいのか。問題は読む人の頭と心にあるらしい。

★主人公はどういう人物か?

自分の利益は少しも求めず、諸国を遍歴して悪を正し弱者を救おうという騎士道精神の持ち主。痛々しいまでに純粋で心の美しい初老の知識人がドン・キホーテである。財産を全て本につぎ込み、古今東西の騎士道物語を夜も寝ず読みふけり、ついに脳がひからびた。普段は誰にも優しく良識に富むのだが、一度お話が「騎士道」に触れると突然狂気が発動して、大迷惑・大災害を巻き起こす。お供のサンチョパンサは庶民特有の現実主義者である。報償につられ従士となるが次第に主人に感化されて、良き相棒となり忠告者ともなる。

前編ではドン・キホーテの生活状況が語られる。エンゲル係数八〇くらいの慎ましい暮し。作者のリアリズムが感じられる。かれの最初の働きは折檻されている羊飼いの少年を救うことだったが、彼が立去るや否や少年は前よりひどい状態に。ドン・キホーテは性善説なので詰めが甘い。次は護送される囚人たちを解放するが、騎士道の常識を押し付けるおかげでもと囚人たちから反撃を食ってしまう。それやこれやで散々な目に遭い、自宅に帰るところで前半は終わる。
後編は10年あまり後1615年に出され、前編の出版で既に有名になった主人公がそれをネタにからかわれる。サンチョは島の領主になるがこれも長続きせず。

岩波少年文庫版では挿話は省き、後編を中心に紹介されている。一気に全体をつかむにはこちらが手ごろだ。
昔、創元社の世界少年少女文学全集にあったのは、会田由の訳だった。
読みやすかったのは1927年出版の訳文(訳者名は失念)

関連図書では下記が気に入った。
「ハムレットとドン・キホーテ」ツルゲーネフ
「降って来たドン・キホーテ」檀一雄
「ドン・キホーテ論」(またはドン・キホーテ序」)ハインリッヒ・ハイネ
 ハイネの子供時代、春から秋へと季節が移り変わるなか、庭の片隅で、主人公に感情移入し涙ぐみながら読んだというのに心を打たれた。どうせなら私もそういう夢中な読み方をしたかった。それには文庫本でなく昔ながらのちゃんとした装丁と挿絵の本がふさわしい。第一に、借りるのでなく自分の本棚に備えておきたいものだ。無理とは知りつつ・・・。

田辺聖子がよく色紙に書く戯れ歌は
「われはゆくなり 只(ただ)一騎. おどけ笑いの竹槍(たけやり)に. 大阪弁のむしろ旗. ドンキホーテにも似たるかな」

★きょう4月23日はセルバンテスの命日でサン・ジョルディの日(本の日)、偶然にも。

→【詩】君は花のごとく2007-3-15
→【本】花筐(はながたみ)2007-3-28
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