観測にまつわる問題

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オホーツク文化の拡散を可能にした技術とは

2019-03-25 00:06:16 | 日本史
北海道の北東岸にあるサロマ湖(中央下)近くまで南下してきた流氷 地球観測衛星テラのMODIS衛星画像。2009年2月20日撮影。NASA(パブリックドメイン)

蝦夷(エゾ/アイヌ)は日本海側の唐子と太平洋岸の日ノ本、渡島半島の渡党に分けられ(諏訪大明神絵詞)、蝦夷地は本州から2ルートで海上交易の道があったと考えられています。そしてその2ルートのちょうど裏側の隔絶した流氷ルートがオホーツク地方ですが、かつてオホーツク文化人が到来した中心地で、北海道の中でも独特の地位を占めることはあまり知られていないかもしれません。オホーツク文化人は南は奥尻島(青苗砂丘遺跡 文化遺産オンライン)まで到達した痕跡が確認され、日本書紀にいう粛慎(みしはせ、あしはせ)とも言われます。

オホーツク文化を概観するのに、北と南の文化が出会う—オホーツク文化・擦文文化(北海道歴史・文化ポータルサイトAKARENGA)を参照しましたが、オホーツク文化人は大陸の影響を受けた樺太系の独自勢力(現在のニヴフとも)だと分かります(縄文文化は少なくとも後のアイヌと日本の2系統あります)。そしてオホーツク文化がオホーツク地方沿岸中心に広がった理由ですが、筆者はどうも在来の(続)縄文人に対して冬期の流氷を利用する技術を持ったことで優位に立って海沿いに広がったのではないかという気がします(この時、北海道縄文人は同時に内陸部にいたようです)。日本列島東北以北の歴史は基本的には南が北に広がる歴史であり、その逆の北から南へと広がる文化の流れは何か特別な要因があったはずです。

その特別な要因のひとつに氷下漁労が考えられるかもしれません。気候変動条件下における氷下漁の環境文化論的研究(科学研究費助成事業)参照ですが、現在氷下漁労はオホーツク海沿岸に広がるようで、これはオホーツク文化以来の伝統だとも考えられます。凍る湖と凍らない湖(道総研)を参照すると、北海道の湖はそのほとんどが氷結します。しかしながら氷結した湖の氷に乗るのは一般に危険ですし、それを可能にするにはノウハウや技術が必要であったと考えられ、それを持っていたのがオホーツク文化人という推定です。

もうひとつオホーツク文化は海獣の利用が特徴ですが、流氷の上を歩く危険に関わらず、冬期は狩りが行われなかったと考える必要は恐らくありません。オホーツク文化は断絶していますから直感的に分かり難くなっているものの、例えばイヌイットは流氷の上でアザラシを待つ漁をしたり、イッカクを狩る伝統的な漁があったりするようです。ですからオホーツク文化人が流氷上で漁をする技術を持っていたとして不思議はないと思います(流氷は移動するものではあるようですが)。

流氷には植物プランクトンが付着しており、ここから始まる食物連鎖が海を豊かにしており、独特の生態系があります。流氷はアムール川起源で、オホーツク文化はトビニタイ文化を経て擦文文化に吸収されたとも言います。その技術は「アイヌ」に吸収された後も生きているものもあったでしょうし、有名なアイヌ文化「熊送り」(イヨマンテ)もオホーツク文化人由来だという説もあるようです。

余談ですが、ウィキペディア「流氷」参照で、キタキツネが流れてくることもあるようです。アザラシと違って、これはさすがに事故のようですが(流氷の上で漂流する狐、漁師によって救出される イミシン)、そういうことに注目してみるのも面白いのかもしれません。

ちなみにオホーツク文化から外れますが、当地の旧石器時代の白滝遺跡群(遠軽町白滝)(遠軽町埋蔵文化財センター | 国指定重要文化財「白滝遺跡群出土品」紹介)は日本最大規模の遺跡であり、黒曜石を使用して作る細石刃剥離技術「湧別技法」の由来としても評価があるようです。

最後にオホーツクの春夏秋冬を簡単に。最初に春ですが、日本で一番遅い春を迎えるオホーツク地方はフラワーランドとして人気が高まっているとのこと(オホーツク・花の魅力)。北海道の代表的な魚ニシンは春告魚(ハルツゲウオ)とも呼ばれ、かつては鰊御殿が建つほどでした。

ついで夏ですが、日本の最北ですし避暑地として楽しめると思います(アクティビティにカヌーがありますが、豆知識としてアイヌの伝統的カヌーはチプと言い河川用で、山丹交易用のイタオマチプ(板のある船)は板という用語から日本の技術に由来するようです(参考:イタオマチプの新資料発見 新あすくのシーカヤック風呂具))。

秋の北海道の川と言えば鮭ですが、オホーツク地方も例外ではありません。アイヌと鮭は切っても切り離せない関係にあります(鮭の民 サーモンミュージアム)。アイヌにとって川は鮭の供給源であると共に交通路でもあり、その集落の多くは川岸や河口に位置していたようです。

冬と言えば何といっても流氷ですが、必ず見れるというものではないことに注意しなければならないようです(流氷Q&A―見頃はいつ? どこへ行けばいい? 流氷初日って何? 北海道ファンマガジン)。流氷観光船があるのは紋別と網走。タラの旬が冬で北海道での漁獲が多いようです。


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