Ludwig ルートヴィヒ 復元完全版
イタリア・西ドイツ・フランス
1980年 240分
満足度 ★★★★★
感動度 ★★★★☆
映像美 ★★★★★
音楽 ★★★★★
光と陰 ★★★★★
衣装や装飾品 ★★★★★
芸術的 ★★★★★
個人的総合評価 ★★★★★
監督 ルキノ・ビスコンティ
キャスト
ヘルムート・バーガー(ルートヴィヒ)
前半は几帳面で固苦しく、エリザベトに一途な二枚目。
後半からは気の毒なまでの痛々しさと孤独感、不眠状態を表現。
後半からヘルムート・バーガーという人の本来の上手さを右とに発揮
ロミー・シュナイダー(エリザベト)
女性から見て憧れるほどに美しい……
トレヴァー・ハワード(ワーグナー)
写真で知っているワーグナーそっくり
ロシアオペラ映画といい『ルートヴィヒ』といい、ヨーロッパではそっくりの役者を使うんだな。
以前『ルートヴィヒ 神々の黄昏』を劇場で観たことがある。
人々が次々と語りかける場面に懐かしさを感じた。
19世紀後半。孤独なルートヴィヒは自分と共通点の感じられるエリザベートを一途に愛す。実らない愛。
彼はワーグナーの音楽に現実逃避し、莫大な金をつぎ込む。周りの反対や反感は次第に大きくなっていく。
満たされない精神状態はやがて彼を一層の孤独感に追い込み、不眠に、そして怪奇な行動(当時のヨーロッパという背景での同性愛)へと追いいらせる。
彼の満たされない思いは増すばかりで ワーグナーやシェクスピアを演じる役者にまで金をつぎ込む。
ついには議会にかけられ『パラノイア』といった病名のレッテルを貼られ、王という地位を追われるが最後まで自分の意思を持って散歩に出かけ、自害する。
実際の城内を使っての撮影は1940~1950年頃のロシアのオペラ映画でもなされた方法。
しかし本当にルートヴィヒが築城したとされる実在の城(『ノイシュバンシュタイン城』)を使っての撮影いう点でもルキノ・ビスコンティ監督の心意気といったものを感じてしまう。
絶えず美しいワーグナーの曲が流れる中、時にはピサロ、時には宗教画、そして時には写実主義的で重厚な油絵のような場面の連続には目を見開いて見入ってしまう。
全体を通して品よく仕上がり4時間が短く感じられる秀作の一つ。
ラストのルートヴィヒが自害して見つけられ、彼の顔と上半身がクローズアップした時に初めてオレンジ色で彼を覆い包み、写実的映像(古典主義的映像)から幻想的な映像(印象派絵画的映像)に変化する。
ほとり孤独感にさいなまされ満たされず傷ついていた彼の思いは『死』によってそれらの諸々の感情から開放されたのだろう……
本当に悲しい切ない話だこと……