みなさん、吉本ばななさんの『デットエンドの思い出』読んだことありますか?
恥ずかしながら、自分はこの超名作を知らずに今まで呑気に生きてきました。吾ながら勿体無い時間だった。
この作品はすごい!すばらしい! 2008年度に読んだ本で、ダントツでトップの作品になりました。
よしもとばななさんは、あまりにメジャーすぎて、読むきっかけがなかった。村上春樹さんも同じような出会いをした。有名すぎるのが先行すると、いつでも手が届くためにあえて読まないことがある。近場の観光地に行かないのと近い?(それとは違う気がする)
この『デットエンドの思い出』を読むと、まるで今何かに導かれて読んだとしか思えないほど、自分の心の奥をグイグイえぐってくるようで。かなり奥深く切ない作品ばかり。愛だ恋だ含め、辛い目にあった人は是非読んでみてください。思わずもう一回読み直しちゃいましたが、2回読んで2回とも泣けました。
とにかく、ばななさんの文章は巧すぎる! 難しいことを難しく言うのは誰にでもできるけど、難しい題材を分かりやすく書けるのは本当に凄い。
プロの書き手でもみんながみんなそうじゃなくて、結局のところ何が言いたいのかよく伝わらないことはある。
難しい言葉を一切使わずに心の中ヘスルリとに一気に入り込んでくる、この言葉の魔術はどうでしょうか。同じ日本語を使っているとは思えないくらい・・。自分ももっと日本語を上手に使いたい。
この本の後書きにも、「デットエンドの思い出は、自分の作品の中で、いちばん好き」って書いてありました。
この本には、「デットエンドの思い出」以外にも短編の名作ばかり。自分にとっては、文章として全てが完璧な文章ばかりです。国語の教科書に載せてもいいんじゃなかろうか。文章を写経したくなる。
とにかく、ご本人の中でも金字塔になる作品みたいですね。ばなな作品一発目として、そんな金字塔から読んでよかったのかなぁ、という気さえしちゃいます。
早速、三省堂でばななさんの本を大量購入してきました。休日の楽しみ。この本と出会えただけでも、夏休みの意味があったー。これ、ほんと。
それぞれの短編の内容をあまり書くとネタバレになっちゃうんで、あえて避けますが。
①幽霊の家、②『おかあさーん!』、③あったかくなんかない、④ともちゃんの幸せ、⑤デットエンドの思い出、
この5編からなります。
①幽霊の家:老舗ロールケーキ屋の息子(岩倉くん)と、老舗洋食屋の娘との話です。彼と出会った時、初めて肉体関係をもったとき、別れのとき。そしてその後・・・・。かなりいい話。こういう出会いをしたいものですね。(同意を求めてみる)
******************************
『ただこうしてなんとなく話をしているだけで、おなかの底から言いようのない活気が湧いてきて、
ああ、これだ、これでいいんだと思えてきた。
・・・・
何かを失くした感じがずっとずっとしていた。
それは心のどこかで知っている何かだったけれど、まさかこれだとは思わなかった。
ずっと寂しかったが、それはこれがなかったからだったんだ。
あまりにも淋しくて、そう思うことさえできなかった、そういうふうに私の魂が言っていた。』
******************************
②『おかあさーん!』:会社で毒を盛られたカレーを食べてしまった編集者の話。そこからプライベートな家庭の話が語られる。最後の終り方がグッときます。
③あったかくなんかない:子供時代に恋した男性(まことくん)は衝撃的な人生を送ります。その彼と過ごした思い出。
最初の一節が素敵すぎる。
******************************
『ものごとを奥の奥、深いところまで見ようといつでも思っている。
・・・・
そうするといつしか最後の景色にたどりつく。もうどやっても動かない、そのできごとの最後の景色だ。
ここまで行くと、もう空気も静かになり、全てが透明になり、なんだかこころもとない気持ちになってくる。
すごくひとりだということを感じるるのだけど、どこかでいつか誰かがやっぱり同じ気持ちでこの景色を見たのだということだけはわかるので、なんとなくひとりではないという気持ちにもなる。
でも、それがいいことはどうかは全然わからない。
ただ見るだけだ。そして感じるだけ。』
******************************
④ともちゃんの幸せ:同じ職場の男性への5年間の片思いの話。
ともちゃんの辛い過去も明かされます。この文章も終わり方が最高だー。
******************************
『でも、それは神と呼ぶにはあまりにもちっぽけな力しか持たないまなざしが、いつでもともちゃんを見ていた。
熱い情も涙も応援もなかったが、ただ透明に、ともちゃんを見て、
ともちゃんが何か大切なものをこつこつと貯金していくのをじっと見ていた。』
******************************
⑤デットエンドの思い出:婚約者から突然に非情な別れを切り出された女性(ミミちゃん)が、そこから幸せとは何かを掴んでいく過程を描く。
******************************
『今ならわかる。
最低の設定の中で、その時私は最高の幸せの中にいたんだということが。
あの日の、あの時間を箱につめて、一生の宝物にできるくらいに。
・・・
無慈悲なくらいに無関係に、幸せというものは急に訪れる。
どんな状況にあろうと、誰といようと。
ただ、予測することだけが、できないのだ。』
******************************
あまり書くと野暮なので、一言数行書こうと思ったらドンドン長くなってしまった。冗長でダメですねぇ。自分。
まあ、とにかくお奨め。
辛かったりしたとき、きっと読むと救われると思います。
肯定する力が湧いてくると覆います。
ほんと、いい作品。傑作です。
今の自分が必要としているものが全部書いてあった気がします。
この本も、色んな偶然で、色んな形で周りの人から薦められて読むことになりました。
この本と出会わせてくれた方々、本当に有難う!!
恥ずかしながら、自分はこの超名作を知らずに今まで呑気に生きてきました。吾ながら勿体無い時間だった。
この作品はすごい!すばらしい! 2008年度に読んだ本で、ダントツでトップの作品になりました。
よしもとばななさんは、あまりにメジャーすぎて、読むきっかけがなかった。村上春樹さんも同じような出会いをした。有名すぎるのが先行すると、いつでも手が届くためにあえて読まないことがある。近場の観光地に行かないのと近い?(それとは違う気がする)
この『デットエンドの思い出』を読むと、まるで今何かに導かれて読んだとしか思えないほど、自分の心の奥をグイグイえぐってくるようで。かなり奥深く切ない作品ばかり。愛だ恋だ含め、辛い目にあった人は是非読んでみてください。思わずもう一回読み直しちゃいましたが、2回読んで2回とも泣けました。
とにかく、ばななさんの文章は巧すぎる! 難しいことを難しく言うのは誰にでもできるけど、難しい題材を分かりやすく書けるのは本当に凄い。
プロの書き手でもみんながみんなそうじゃなくて、結局のところ何が言いたいのかよく伝わらないことはある。
難しい言葉を一切使わずに心の中ヘスルリとに一気に入り込んでくる、この言葉の魔術はどうでしょうか。同じ日本語を使っているとは思えないくらい・・。自分ももっと日本語を上手に使いたい。
この本の後書きにも、「デットエンドの思い出は、自分の作品の中で、いちばん好き」って書いてありました。
この本には、「デットエンドの思い出」以外にも短編の名作ばかり。自分にとっては、文章として全てが完璧な文章ばかりです。国語の教科書に載せてもいいんじゃなかろうか。文章を写経したくなる。
とにかく、ご本人の中でも金字塔になる作品みたいですね。ばなな作品一発目として、そんな金字塔から読んでよかったのかなぁ、という気さえしちゃいます。
早速、三省堂でばななさんの本を大量購入してきました。休日の楽しみ。この本と出会えただけでも、夏休みの意味があったー。これ、ほんと。
それぞれの短編の内容をあまり書くとネタバレになっちゃうんで、あえて避けますが。
①幽霊の家、②『おかあさーん!』、③あったかくなんかない、④ともちゃんの幸せ、⑤デットエンドの思い出、
この5編からなります。
①幽霊の家:老舗ロールケーキ屋の息子(岩倉くん)と、老舗洋食屋の娘との話です。彼と出会った時、初めて肉体関係をもったとき、別れのとき。そしてその後・・・・。かなりいい話。こういう出会いをしたいものですね。(同意を求めてみる)
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『ただこうしてなんとなく話をしているだけで、おなかの底から言いようのない活気が湧いてきて、
ああ、これだ、これでいいんだと思えてきた。
・・・・
何かを失くした感じがずっとずっとしていた。
それは心のどこかで知っている何かだったけれど、まさかこれだとは思わなかった。
ずっと寂しかったが、それはこれがなかったからだったんだ。
あまりにも淋しくて、そう思うことさえできなかった、そういうふうに私の魂が言っていた。』
******************************
②『おかあさーん!』:会社で毒を盛られたカレーを食べてしまった編集者の話。そこからプライベートな家庭の話が語られる。最後の終り方がグッときます。
③あったかくなんかない:子供時代に恋した男性(まことくん)は衝撃的な人生を送ります。その彼と過ごした思い出。
最初の一節が素敵すぎる。
******************************
『ものごとを奥の奥、深いところまで見ようといつでも思っている。
・・・・
そうするといつしか最後の景色にたどりつく。もうどやっても動かない、そのできごとの最後の景色だ。
ここまで行くと、もう空気も静かになり、全てが透明になり、なんだかこころもとない気持ちになってくる。
すごくひとりだということを感じるるのだけど、どこかでいつか誰かがやっぱり同じ気持ちでこの景色を見たのだということだけはわかるので、なんとなくひとりではないという気持ちにもなる。
でも、それがいいことはどうかは全然わからない。
ただ見るだけだ。そして感じるだけ。』
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④ともちゃんの幸せ:同じ職場の男性への5年間の片思いの話。
ともちゃんの辛い過去も明かされます。この文章も終わり方が最高だー。
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『でも、それは神と呼ぶにはあまりにもちっぽけな力しか持たないまなざしが、いつでもともちゃんを見ていた。
熱い情も涙も応援もなかったが、ただ透明に、ともちゃんを見て、
ともちゃんが何か大切なものをこつこつと貯金していくのをじっと見ていた。』
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⑤デットエンドの思い出:婚約者から突然に非情な別れを切り出された女性(ミミちゃん)が、そこから幸せとは何かを掴んでいく過程を描く。
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『今ならわかる。
最低の設定の中で、その時私は最高の幸せの中にいたんだということが。
あの日の、あの時間を箱につめて、一生の宝物にできるくらいに。
・・・
無慈悲なくらいに無関係に、幸せというものは急に訪れる。
どんな状況にあろうと、誰といようと。
ただ、予測することだけが、できないのだ。』
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あまり書くと野暮なので、一言数行書こうと思ったらドンドン長くなってしまった。冗長でダメですねぇ。自分。
まあ、とにかくお奨め。
辛かったりしたとき、きっと読むと救われると思います。
肯定する力が湧いてくると覆います。
ほんと、いい作品。傑作です。
今の自分が必要としているものが全部書いてあった気がします。
この本も、色んな偶然で、色んな形で周りの人から薦められて読むことになりました。
この本と出会わせてくれた方々、本当に有難う!!
どうも響いた一文が似てますね。
ぼくは、岩倉くんが大人になって「孤独と自立を知っている大人の鋭い眼になっていた」というところも好きです。
トラックバックしました!
幽霊の家での岩倉くんの「孤独と自立を知っている大人の鋭い眼になっていた」というところも、いいよね。なんか本読んでて勝手に情景がイメージできたもん。たぶん、主人公自体も成長したからこそ、そういう岩倉君の本当の魅力が見えるようになったんだろうね。お互い若いときは、お互いの本当のよさってなかなかわからんもんだし。その当時は何とも思わなかったけど、自分が成長して初めてその人の良さが深くわかるって、よくあることです。それを正直に認めていいんだなぁって気持ちになる。
この本、読んでよかった~。この前会った時、薦めてくれてありがとね。栗原君が言うように、ひらがなの記述が多いんだけど、そこがまた文章のゆるさというか、優しい感じをかもし出す要素になってる気がするね。ひらがなの使い方がうまい!紫式部?
みんなにも読んでほしいなぁ。
彼女の言い回しは、ひとつも難しい言葉を使わないのに、心の奥にグリグリ入ってきます。すごいことです。
『ハチ公の最後の恋人』も切なすぎて大好きです。
一番つらい時に読むとさらにグッとくる作品だよね。
ブログでの感想を読んで、わたしもまた読み返してみようと思いました。
最近夏休みをとって、海外の海に行ったのだけど、私はゆっくりするときに読む本として持参したのが、三島由紀夫の「人間行動学」そして吉本ばななの「キッチン」でした。
代表的すぎるんだけど、キッチンは、ほんと好きな作品で。なんども読み返して、何度もジンとする。
いいね、ばななさん談義。
俺はほんと感動したよ。ああいう切ない感じって歌も映像も漫画も小説も、好きなんだよね。胸がキュンときて揺さぶられる感じというか。切ない話が好きかどうかって、個人的な趣味趣向もある程度はあると思うけどね。結構胸が痛くなるし、読んで感情移入してるだけでかなり辛いし疲労しちゃうからね。嫌いな人は辛くて嫌いなのかも。
そうそう。難しい言葉を使ってないってのは、かなり普遍性を持つよね。ビートルズの歌詞が中学生でもわかる英語なのと同様、簡単な日本語の組み合わせで、あんな物語を作れるってのは、言葉の凄さですね。お父さんの隆明さんの影響もあるだろうし、幼少時に出会った本、青春時代の友人付き合いや見てきた世界、そしてそのとき感じたことを、他の人や流行に影響されず自分で大切にし続けているってこと、そういうものの積み重ねでああいう作品ができるんでしょうな。
『ハチ公の最後の恋人』、Amazonで書評読んでるだけで面白そう!切ない話って、大切な感情が詰め込まれてる気もするし、情に溢れてて好き。
れいこちゃんにもよしもとばなな薦めてもらったね。ありがと! 同時期に、信頼する複数の人から薦められたのよ。偶然というか必然というか・・。不思議な縁です。おかげでだいぶ救われた気がします。
>マキ
ここにもばなな好きが!!
マッキーも、研修医時代の話なんて、小説になるようなすごく感動的な話をリアルに体験してるよね。現実は小説の世界を超えるなぁと思った話です。(思い出すと切ないかな?ゴメンね。)
三島由紀夫の「人間行動学」そして吉本ばななの「キッチン」、なるほど。
三島由紀夫の「人間行動学」は渋いね。俺も最近三島由紀夫の「不道徳教育講座」を、夜中の当直中に暇なとき読んでます。当直中に読むようにしとるからなかなか進まんのだけど汗。 三島も大好き。ばなな方面じゃなくて三島方面ばかり読んでたから、ばなな作品のようなものは心に染み入ります。
デッドエンドの思い出読んでから、ばなな作品をなるべく読みまくろうと思ってて、衝動的に「とかげ」「キッチン」「哀しい予感」「TUGUMI」「キッチン」って買ったよ。
『キッチン』、やっぱお奨めなんだね。『ハチ公の最後の恋人』と同様、早く読むね。感想も。
意外に好きな人多くて嬉しい!リアル世界で仲イイ人同士って、やっぱ趣味嗜好も似てるんだろうね。それ自体嬉しいよ。
ぼくは、とにかく、最後の数行が好きでした。また感想語りましょう!
人は思ったより強いんです。
今度会うときはその辺の話もしよう。ただ、最近は瑣末な日常業務に追われて、Amazonで大量に注文しているのになかなか読む時間がとれないのがいかん。時間はつくらないとね。