自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

宗教改革とルネサンス~個人の成長と他者の尊重への第一歩

2018-07-09 14:39:05 | 自然と人為

 前回紹介したように、コロンブスの新大陸発見を支援したスペインのイサベル女王の孫(カルロス1世:1516~1558年)が神聖ローマ帝国皇帝(カール5世:1519年)にもなって、ハプスブルク家は全盛期を迎えた。しかし、その全盛はこれまでの制度の問題を表面化させ、支配者にとっては絶対王政の衰退の要因となり、個人にとっては宗教改革ルネサンスで個人と他者の尊重を刺激する第一歩になった。

 キリスト教とイスラム教はユダヤ教が母体であり、パレスチナのエルサレムにはユダヤ教とイスラム教、キリスト教それぞれの聖地がある。
 ユダヤ教の歴史は紀元前2000年に遡るが、そのユダヤ教から1世紀の初めイエス・キリストの刑死によってキリスト教が成立した。キリスト教は392年、テオドシウス帝がローマ帝国の国教とし、テオドシウス帝の死後395年にローマ帝国が東西に分割された後、ローマ教皇を首長とするカトリック教会(西方教会)と東方教会とに二分された。東方教会(ギリシャ正教会)はビザンツ帝国の教会制度となり、皇帝が教皇を兼務した。一方、アラビアで7世紀の初め、ムハンマド(マホメット)がイスラム教を創始した。なお、476年の西ローマ帝国滅亡を経て、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)がローマ帝国を継承する。

 今から約500年前(1517年)、ローマ教皇がドイツにおいて贖宥状を発売したことに対してルターが『九十五ヶ条の論題』を発表して批判したことからドイツの宗教改革が始まった。
 「神聖ローマ皇帝カール5世はルターに教義撤回を迫ったが拒否されたためルターを異端と断定、追放に処した。」 宗教改革
 「レオ10世はドイツで贖宥状(免罪符)を発売した。それを批判したルターが宗教改革を開始すると破門した。」   ローマ教皇
 「ルターはザクセン選帝侯フリードリヒに保護され、聖書のドイツ語訳を完成させ、『聖書』やルターの主著『キリスト者の自由』は活版印刷によって民衆の間に新しい宗教観を浸透させることとなった。」 宗教改革
 参考:ローマ教皇/ローマ法王/ローマ教皇庁
  ローマ=カトリック教会の最上位の聖職者。
  中世ヨーロッパで絶大な力を持ち、現在でもカトリック世界の指導
  者としてその発言は常に世界の注目を集めている。
 参考:神聖ローマ皇帝
  1438年以降はオーストリアを本拠とするハプスブルク家のアルブレ
  ヒト2世が選出され、それ以降は、ハプスブルク家が、1806年の
  神聖ローマ帝国消滅まで、一時期(オーストリア継承戦争のとき)
  を除き、皇帝位を独占することとなった。実質的には世襲されたが
  形式的には選帝侯による選出という原則は変化がなかった。
 参考:カール5世 (神聖ローマ皇帝:1519年 - 1556年)
     レオ10世 (ローマ教皇:1513~1521年)

ルネサンス(1) 世界史講義録より
 「ルネサンスの以前と以後では、下記の原因によりヨーロッパ人のモノの見方、考え方ががらっと変わる。 
 1,十字軍によるイスラム・ビザンツ文化との接触。
 2,ビザンツ帝国の滅亡による学者のイタリアへの亡命。
 3,イタリアの都市国家の成長。諸都市の有力者による学問・芸術の保護
   ルネサンス芸術のパトロンはフィレンツェの豪商、メディチ家
   ルネサンス(2)
   ルネサンスと宗教改革

 宗教は個人の成長と他者の尊重が優先されないと、信ずることに基礎を置くので集団や組織を治める誘導装置となる危険性がある。現代日本ではオーム真理教事件があり、中世カトリック教会は世界布教と植民地化による奴隷貿易を一体に進めたが、攻められたインディオにも太陽神へ捧げる生贄の子供たちがいた。同様に軍は国民を守るために存在すると言いながら、国が持つ暴力装置であり、国民を支配する組織にもなる。人類の進歩は国が暴力装置を持つことを恥と思うことから始まる。現代国家においては個人の尊重が重要であり、それは他者を尊重することで成熟していく。

 「16~18世紀に形成された主権国家における君主が絶対的な支配権力をもつ政治体制を「絶対王政 absolutism」(または絶対主義体制)という。絶対王政の出現は、封建社会から近代社会への過渡期の西ヨーロッパに見られるもので、18世紀の市民革命によって倒される体制と考えてよい。」
 「主権国家は絶対王政から始まった」とは、現代社会に生きる我々の感覚には馴染まない。最近は私の興味からではなく、私の理解を深めるために資料を引用させていただいている。主権国家体制の最初の形態である絶対王政の政治理念であった王権神授説に対して、17~18世紀の市民革命期に成立した、新たな政治理念(社会契約説)についても、いずれまとめて見たい。
 参考:絶対王政/絶対主義
    中世からのルネサンスと宗教改革の流れと動き
    宗教改革
    ルネサンスがもたらした暗黒時代の解体とヒューマニズムの創造

 昨日までは大雨警報と避難指示が出され、裏山のがけが崩れないかと不安な夜であった。今も、水道が出ない地域があり、道路も寸断され、大渋滞と休校となっている学校も多い。新聞も『<豪雨>102人死亡、不明90人に 被害範囲つかめず』,(2)と報じている。これだけ被害範囲が多いのは、異常気象の常態化の兆しではなかろうか。備えるべきは異常気象に対するインフラの整備であり、仮想敵国を作って『陸上イージス2基導入決定 全土防衛、効果は未知数』と報じられているように税金の無駄遣いをし、国民の災害による死を防がないことではない。私は自衛隊を国際災害救助隊にすべきだとする持論の持ち主だが、世界に仮想敵国をつくり軍需産業を潤す時代は終わると思っている。そのきっかけに「異常気象の常態化」がなることを祈っている。
 参考:地球規模の経済リスクとしての気候変動問題
    軍は自国民にも銃を向ける~韓国光州事件から米朝和解まで
    憲法の「平和主義」と「戦争放棄」の違い


初稿 2018.7.9