自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター

2015-09-18 21:08:29 | 憲法を考える
 今年の1月からのEテレ「スーパープレゼンテーション」をダビングしていて社会派報道写真家のセバスチャン・サルガドTED日本語版を知った。憲法9条を無視(違反)して国会議員や官僚が「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるのを抑止する」と法的実体のない安保法案(憲法と自衛隊)をでっち上げ強行採決したことへの抗議を準備していたが、映画「セバスチャン・サルガド / 地球へのラブレター」が8月から全国で上映され、広島シネツイン本通り 地図では本日から上映されているそうだ。偶然とは言え予告編で語られているように、戦争は愚かで悲惨な絶対悪であり、自然への敬意が人類を救うと思う。

予告編:
戦争、虐殺、難民 人間の弱さと闇

「もう限界だった。もはや人間の救済など信じられなかった」
戦地から地上の楽園を探す旅に
「私の結論は、”地球の起源”を撮ることだった」
偉大なる写真家が辿りついた、
地球最後の楽園ジェネシス(創世)とは---
「地球へのオマージュ(尊敬を込めた作品)だ」


映画については、次の映画情報等を参考にしてください。
【佐々木俊尚コラム:ドキュメンタリーの時代】「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」
報道写真家サルガドの長男ジュリアーノ、W・ベンダースとの仕事、父の素顔を語る
報道写真家セバスチャン・サルガド追った記録映画 「父は世界の希望を見いだした」
The Feel of Wonder~風の旅人~
セバスチャン・サルガドの新作「GENESIS」

 日本の憲法は悲惨な戦争の反省から戦争放棄を謳っている。しかしアメリカの都合で朝鮮戦争で自衛隊を創設させられ、今回はアメリカ軍の戦争を支援するために日米軍事同盟を強化する「安保法案」を強行採決した。アメリカの戦争に協力することは世界に誇れることではない。武器を捨て、自然を守り、自然災害にあたっては日本だけでなく世界の救援活動に駆けつけることこそ、世界に誇れる日本になれる。日本を守るために「安全法案」が必用だと思う人たちがいるのなら、「安保法案」は国会で強行採決するのではなく国民投票で問うべきだ。

 憲法は国民主権により守られている。若者やおじさん、おばちゃん達のデモは、おとなしい国民がそのことに目覚めた証だ。憲法を守るために、若きも老いも、さあ今日から新しい闘いを始めよう。

参考;日本人の平和主義(本澤二郎)
    戦争法案を強引に成立させた安倍政権は中国との戦争を想定
     嘉手納基地は2週間で壊滅とRAND


初稿 2015.9.19 更新 2015.9.25(「広島シネツイン本通り」の地図追加)
更新 2018.9.6 改題:
旧題「憲法9条」の戦争放棄と「安保法案」の抑止力-どちらが人類を救う?



宇沢弘文先生の志・「心の豊かな社会」を目指して

2015-09-18 17:10:19 | 自然と人為
 1年前の今日、2014年9月18日、宇沢弘文先生はご逝去(満86歳没)された。この一年、先生を追悼するテレビ番組を録画してきましたが、下記の番組をYoutubeで公開させていただきます。 

ETV特集「経済学者・宇沢弘文 いま再び豊かさを問う」
1998年1月5日 ~ 1月8日
第1回 資本主義の幻想と現実 動画(右クリック再生
第2回 水俣病は終わらない 削除! コメント(ブログ)
     海を育む森の湧き水(熊本県 水俣市) 削除!
第3回 聖職としての医療・教育を求めて」 削除!
第4回 農業が拓く地球の未来 削除!

 学者の専門の研究の話には心(主観)が許されないし、専門に拘れば拘るほど部分(専門)に限定した話題となり、しかも曖昧な表現はできなくなる。これが志ある「学者のジレンマ」であり、大方の学者は志を持たないことで、このジレンマから逃れている。宇沢先生は真面目な方だから「倫理」が志となり、「学者のジレンマ」にも苦しめられていたのではないかと思う。文化勲章受賞者と文化功労者を昭和天皇が招かれた講話の場で、
 「昭和天皇『君!君は、経済、経済というけど、人間の心が大事だと言いたいのだね』
昭和天皇のお言葉は、経済学に人間の心を持ち込むのはタブーとしていた私(宇沢弘文)にとって、コペルニクス的転回ともいうべき一つの大きな転機を意味していた。」という経験を「経済学と人間の心」の第一章に紹介されている。
 また、ここに紹介した第1回 資本主義の幻想と現実の冒頭において、「世界こども環境サミット’97」(1997年12月9日)に出席して小学生の質問「これから温暖化を止めるために、僕たちは具体的にどんなことをしたら良いのでしょうか?」を受けて、「温暖化の一番大きな原因は、現代の工業化社会の生き方にある訳ですね。ことに温暖化の被害を受けるのは貧しい国の人々であったり、あるいはまだ生まれていない将来の世代の子どもたちであるということをいつも心に留めていただきたいと思います。」と答えたら小学生はキョトンとして無言であったので、「難しいですよね。これ、質問が。」と照れ隠しをされていた。皆さんだったらどう答えますか?「日の出とともに起き、野山で遊び、日の入りと共に寝ましょう。」と言っても原発は夜も発電しています。野山も子供たちが遊べないように荒れています。地域の共同体がなくなり、子ども同士で遊ぶこともできなくなっているし、子供たちをソーッと見守る共同体の絆の目も無くなっているのではないでしょうか。子供を守るのは大人の仕事なので、「僕たちがすべきこと」について大人は何をどう伝えれば良いのでしょうか。

 牛やヤギやヒツジは里山に放牧しておけば自分で生きていきます。里山をきれいに管理してくれますが、お金をくれとは言いません。農業は人類が生きていく原点で、産業ではなく生活です。経済と言えば利益を上げる話と思っている専門家に自然界の一員として生きる農業の価値は理解できないし、職業倫理を求めることも難しい話です。資本主義は民間の自由競争により調和すると言われますが、実質は弱肉強食から大企業中心の国家資本主義に向かいます。その場合、官僚が強いのが日本で、大資本が強いのがアメリカだと思いますが、憲法違反の安保法制案を強行採決する日本は中国に近い国になるような気がします。お金の役割も多様ですが国が管理することで、お金の流通と蓄積が偏ります。
 このように経済は「エンデの遺言ー根源からお金を問う」が語るように、国民主権の民主主義とも切り離せません。

 自然とお金と個人と組織~何を基準に考えるかで考え方は大きく異なってきますが、基準を決めても目的が一つだけでは二者択一の多数決に陥りやすく、真の合意は困難になります。

 クリックすると拡大(三位一体論)
 一神教とされるキリスト教は、天の神と神の子のイエスとイエスの死後の精霊を神として一体のもの(三位一体論(アウグスティヌス:松岡正剛))と考えています。これをトポロジートポス(場所)ロゴス(論理)の合成)、概念を形に表す方法としてボ ロメオの輪 (2) が良く使われます。ここではボロメオの輪で経済のことを考えてみました。これは経済と社会を考えるためのデザインですが、三位一体論(世界史の窓)それ自体がキリスト教の団体によって受け取り方は違うようで、デザインは考え方を図に示したものに過ぎません。

 このボロメオの輪を3つの円として、経済を経済だけで考えるのではなく、経済(生産)と社会と自然の関係を考えているのがホリスティック管理です。
 クリックすると拡大(ホリスティック管理)
 この図では生産、社会、自然の関係を示していますが、それぞれを考える際にも目的は一つではありません。これを数学的に考える方法として多目的計画法があります。飼養配合設計のような栄養計算を単一目的の線形計画法(LP)で解く方法がありますが、これは目的以外を必ず守らねばならない制約として解く方法ですが、制約が0.1でも満たされないと最適解が得られません。現実にはそのような厳しい制約ではなくて、この程度は必要だという「希求水準」として扱えば、複数の目的のバランスを考えた満足解が得られます。この場合、希求水準の設定は個人の考え方で異なるので、基本的に個人で使用する方法で組織で意思決定に使用するのは困難だと思います。個人の尊厳と組織や国との関係を考える材料として、多目的計画法を紹介しました。

 ここでは宇沢先生の一周忌に合わせて、経済学を「心の豊かな社会」に近づかせるために私が考えてきたアプローチを簡単に紹介しました。これからも考え続けていきますが、皆さんが考えるヒントの一つにでもなれば幸いです。

参考:
経済学者・故宇沢弘文、なぜ偉大? 業績を5分で学ぶ 経済成長至上主義と市場経済の弊害
豊かさ論の変遷

初稿 2015.9.18