自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

追跡!A to Z  口蹄疫“感染拡大”の衝撃

2013-02-19 01:01:01 | NHK
 口蹄疫の感染拡大を阻止するため、健康な家畜を殺処分して空白地帯を作る「予防的殺処分」を法的に認める「口蹄疫対策特別措置法」が2010年5月28日、国会を通過しました。NHK番組「追跡!A to Z」は、翌日、これを「口蹄疫“感染拡大”の衝撃」として報道しました。この報道を文字記録に残すために、これは録画をもとにできるだけ忠実に書き起こしたものです。

 追跡!A to Z  口蹄疫“感染拡大”の衝撃(録画)
 

ナレーション(ナ):感染拡大が止まらない口蹄疫。宮崎県では牛や豚15万頭以上が処分される、過去に例のない事態となっている。・・・「追跡!A to Z」のタイトル


1.“被災地”は今(ナ):おととい、私は宮崎県の現場に向かいました。・・・最も被害の大きい川南町、町に入る車は念入りな消毒を受けます。・・・(車の消毒を受けながら)ニュースキャスター(司会)「全体を、・・消毒ですね。・・車両で感染するってことを、ものすごく、」「そういうことですね、気をつけているってことですね。」(ナ):もしウイルスが付着しても、他の場所に拡げないよう、靴に専用カバーをつけることにしました。司会「町役場?」・・「地震とか自然災害が起きた時、対策本部ができますけど、応援の車両とか、自衛隊の車両とかが集まっています。それと本当によく似ています。」(ナ):農家は今どうなっているのか、より慎重に車の中から伺うことにしました。・・川南町の隣、都農町。宮崎県を代表する畜産の町で、この町で口蹄疫の1例目が報告されました。・・本来なら沢山の牛がいる牛舎、・・しかし、その姿は見えませんでした。司会「ここも、もう処分、終わった訳ですね。」「はい、まあ、(通行止め?)・・あそこにまだらに白くなっている所、あそこに埋めたわけです。処分した、牛をあそこに埋めたわけですが。」(ナ):町のあちこちで、処分された牛や豚が埋められていました。・・口蹄疫が確認されてからおよそ40日、事態が終息する気配は見えません。・・・・・農家が撮影したVTRには悲痛な声が記録されていました。「見つけた瞬間びっくりして、携帯で嫁さんを呼んで、2人で“これ間違いないよね”と言いながら、2人でその豚の前でオイオイ泣きました。」


2.広がる危機感(ナ):感染力の強い口蹄疫、危機感は全国に及んでいます。・・・・(北海道):「こんにちは、口蹄疫にも効く消毒剤、畜舎まわりの消毒をお願いしたいと思いますので。」「はい」・・・畜産王国北海道では、万一に備え、JAの職員が消毒液を配る動きも出ています。・・・・ブランド牛にも不安が広がっています。・・肉質の良い牛をつくりだす宮崎の種牛「忠富士」が処分されました。・・宮崎の種牛をもとにつくられる近江牛や松阪牛など、ブランド牛の産地には激震が走っています。松阪牛生産農家「ショックで、(どうしていいか)分からない。新しいところを開拓しようとか、しないといけないかなと。」・・感染が広がる口蹄疫、その最前線を追いました。


3.なぜ感染は拡大した?(ナ):先月20日(4月20日)、宮崎県が緊急記者会見を開いた。知事「家畜伝染病である口蹄疫の疑似患畜が、県内で確認されました。」・・日本では、平成12年以来、10年ぶりとなる、口蹄疫の発生だった。・・実は、この11日前に、最初の異変が起きていた。4月9日、都農町の農家から獣医師の下に入った一本の電話、・・「熱があり、よだれをたらしている牛がいる。」・・診察にあたった獣医師がインタビューに答えた。・・この牛には、唇と舌に3mm程の皮がはがれた部分があったと言う。獣医師「ここ(唇)に2ヵ所、と後、ベロの先端にその脱落があって、色がかっている部分がここ(舌の中央部)にあった。それを見た瞬間に、ちょっとどきっとして、家畜保健所に連絡をして、これこれこういう牛がいるんですけども、まさか口蹄疫ではないと思うんですけども、私の行動は今後どうすればいいんでしょうか?」(ナ):すぐに県の家畜保健衛生所の担当者が駆けつけた。宮崎県が作成した「口蹄疫防疫マニュアル」(画面)・・、注意すべき症状として「口の中に水泡ができる」とあった。しかし、県の検査でも他の牛を含めて水泡は見つからなかった。獣医師「他の牛たちの口の中を全頭検査して、検査というか口を開けてみて、どこの牛にも他は異常はないと、安堵の空気が流れて良かったね、というような感じで」(ナ):その後3日間、獣医師は往診を続けた。(画面に診療記録) 4月10日、38.4℃ 口腔内、昨日とほぼ変化なし。食欲4分の1程度。  4月11日、38.5℃ 流涎減少。食欲半分。 4月12日、38.4℃ ほとんど流涎なし。食欲もほぼもよどおりにもどる。3日目には症状が治まり、他の牛にも異常は見られなかった。・・・ところが、異変から7日後(4月16日)、別の2頭に発熱やよだれといった同じ症状が現れた。・・そして先月20日(平成22年4月20日)、衝撃が走った。遺伝子検査の結果、陽性と出たのだ。口蹄疫の発生が確認された。獣医師「まあ、あの、嘘だろうというのが、だから何度か僕は、確か聞きなおしたと思うんですけども、“クロですか”というと“クロです”と。症状が、実はこんな軽い口蹄疫もあるということは、夢にも思わないで」(ナ):国内では、この10年発生していなかった口蹄疫、ほとんどの人が症状を見たことがない。専門家でも、初期症状を判断するのは、非常に難しいという。白井教授「診てもですね、同じような症状を出すような病気はあるんですよ。それで口蹄疫てめったに起こらないですからね、ですから症状だけでは、なかなか難しいかと思います。」(ナ):そして、先月28日(異変から19日後の4月28日)、爆発的な感染拡大の引き金となる事態が起きた。川南町にある県の畜産施設で、豚への感染が見つかったのだ。豚は牛と比べウイルスを一千倍も増殖するといわれ、関係者は感染を恐れていた。白井教授「いったん豚が感染すると、それがどんどん広がっていくということになりますから、豚の感染が認められる口蹄疫の発生は、かなり被害が大きいですね。」(ナ):不安は、現実にあった。28日に豚の1例目が発覚後、感染は急速に拡大、200ヵ所以上の農場で感染が確認され、処分される家畜の数は(5月28日には)15万頭を超えた。


4.感染拡大の衝撃宮崎県知事、非常事態宣言(2010年5月18日)の映像が挿入される。知事「断腸の思いでありますが、是非とも、ご理解と、ご協力をお願いしたいと思います。」司会「口蹄疫の感染が確認されてから40日、被害終息の見通しは未だ立っていません。こちら、感染被害の現状です。宮崎県内の7つの自治体で、牛や豚合わせて15万頭以上が殺処分の対象になっています。口蹄疫のウイルスがこちらです。口蹄疫と言いますのは、牛や豚、ヤギなどの間で広がる伝染病です。口の周りや、口蹄の蹄、つまりひずめに水泡ができることから、このように呼ばれているんです。一般的には、人にはうつらないんですけれども、感染力が極めて強いのが特徴です。このため世界的に恐れられている家畜の伝染病です。エー、ご覧ください。赤い部分、これが口蹄疫が今、発生している国です。一方、ピンクの部分、これが1年以内に発生したことがある地域です。ご覧のように世界的に広がっていることが、よく分かります。今回、国と県は感染拡大を食い止めるために、日本では過去に例のない対策に乗り出しました。その一つがこれです。感染源から10km以内の範囲については、全ての牛や豚を殺処分し、ウイルスを根絶させようという、そういう対策です。このえびの市については、こちら(川南町)から感染したと見られる牛が確認されたことから、移動制限などの対策がとられています。エー、しかしながら、昨日もこの地域(川南町周辺)で感染の疑いのある牛が新たに発見されるなど、感染拡大に歯止めが、かかっていないのが現状です。この地域、今どのような現状なのか、なぜ歯止めがかからないのか、まずこの点を追跡します。


5.10km圏内で何が?(ナ):宮崎県川南町、町の全域が10km圏内に入っている。・・感染が確認された先月20日以降、町の景色は一変した。・・川南町の基幹産業は畜産業、ウイルスの拡散を防ぐため、町民の多くは、外出を控えている。町の中心にある食料品店も客は途絶えたままだ。食料品店「やあもう、半減に近いです。全体がですね。」「経営的には、いかがですか?」「そりゃあ、もちろんきついですよ。ただでさえきついのに。ああ、だめだったら止めると、店をですね。・・うーん。」(ナ):日本料理店の宴会場。ここ一ヵ月、全く使われていない。・・店の女将、和田直子さん。和田さんの実家は、同じ町内で養豚業を営んでいる。この日実家では、口蹄疫に感染した豚の処分が、行われることになっていた。女将「もしもし、はいはい、・・・あーっ。」感染の拡大を控えるため、実家に行くことは控えている。電話で様子を伺うしかない。「はい、大丈夫?・・はい、あー・・。」「(処分が)始まったみたいで。・・・(豚の)声がすごいって。・・」(ナ):農家で一体何が起きているのか?その実態を知るため、私たちは、1軒の畜産農家から映像を提供してもらった。阿部芳治さん。この映像は阿部さんの家族が撮影したものだ。阿部さんが育てている牛は72頭、全て処分の対象になっている。しかし、未だに1頭も処分されていない。「最初に、異常が見つかった牛が、この牛です。」今月16日に、感染していることが分かった牛も、生きていた。「あー、えさをやって、消毒しての繰り返しです。なかなか複雑ですねーえ。」阿部さんは、処分は仕方ないと決めている。なのに、なぜ処分が遅れているのか。・・・最大の理由は、土地の問題だ。・・もし、阿部さんの牧草地に処分した家畜を埋めると、土地が汚染され、少なくとも3年間は使えなくなる。近くにある湧水は、農業用水として使われている。汚染が周囲に広がる恐れもある。「なかなか、埋却地の選定に苦労しております。」(ナ):きのう成立した口蹄疫対策の特別措置法。家畜を埋める土地の確保は、国が責任を持つと明記された。・・しかし、実際に土地を確保するのは容易ではない。・・(川南町農林水産課にて、課長が電話で語る)・・課長「今度掘るところがよね、人家からだいぶ、あの、離せるのかどうかが一番問題ですね。そこで住民が反対をしちゃると非常にいかんから。まあ、そこをちょっと気にしちょってよ。」・・(ナ):川南町では特別措置法の成立前から、土地の確保に悩む農家を役場の職員が手助けしている。・・候補となる土地が見つかると、職員が周辺の住民を訪ねて歩く。・・「牛が口蹄疫に感染したものですから、どうしても埋めないといけないんですよ。それで、何とかご了解をいただけないかと思ってですね。」・・土壌の汚染や悪臭を心配する住民を、粘り強く説得している。・・課長「やあ、なかなかやっぱりですね、エー、周辺の作物によってはですね、やっぱりいろいろ問題もありますので、そこの辺をいろいろご理解をいただきながら、埋める量とかを協議させていただきながら、それであの、両方との折り合いをつけて、それで埋却するという方向で。」(ナ):川南町では、さらに深刻な問題が起きていた。・・牛の一千倍もウイルスを放出すると言われる豚、その処分が一向に進んでいないのだ。・・養豚業を営む永友崇信さん。・・永友さんの豚舎には1300頭いるが、感染した豚を含め、まだ処分できていない。・・処分を待つ間にも、豚舎の中では感染が広がっていた。・・農家を悩ませているのは、次々と子豚が生まれていることだ。永友「この子は、きのうの夜、生まれた子です。15頭生まれました。へその緒がまだついております。」・・処分が決まってからも、50頭以上の子豚が生まれている。・・頭数は増えていくのに、出荷ができないため収入は全くない。・・エサ代と借金の返済で、1ヵ月の支出は400万円。・・「毎日毎日どんどん増えていって、かわいそうな豚が、たくさん増えています。きょうはこっち、今度は向こうの豚舎にもうつって、向こうの豚舎もどんどん感染している状態で、もう見るのもつらいです。かわいそうです。早く殺してもらいたいです。そんな気持ちです。豚のためにも。」(ナ):10km圏内の地域では、きのうも新たに3ヵ所の農場で、感染のある牛が見つかった。感染拡大は今も止まらない。


6.なぜ処分が進まない?司会「さて、スタジオには、ウイルスに詳しい帝京科学大学教授の村上洋介さん、お越しいただいています。よろしくお願い致します。そして、現場で取材に当たってきました科学文化部の藤原記者です。まず、藤原さん、あのー、処理した家畜をここでは埋める場所がないということ、これが一番大きな問題だ、ということなんですね?」藤原「はい、そうなんです。まず、これまでの法律では、処分した家畜を埋める土地を確保するのは農家の責任となっていました。県は、こうした事態が起こる前に土地をリストアップするなどの、対策をとることにはなっていましたが、最終的には農家の責任、農家が責任を負っていたのです。しかし、実際には口蹄疫が発生して、対応に追われる農家に、同時に土地の確保をさせるのは現実的ではありません。今回成立した特別措置法では、最終的に国が土地を確保することになりました。処分のスピードアップを図るためです。ただ、処分の対象になっているは15万頭以上、これとは別にワクチンを接種した牛や豚、以上も処分することになっています。これだけの数を処分する訳ですから、土地を探12万頭すのは大変です。実際に土地が決まるまでは、現場の不安が解消される訳ではありません。」


7.“感染拡大”の背景は司会「さて、村上さん、あのー、10年前にもですねー、口蹄疫というのが発生したんですけども、その時と比べて今回は被害が格段に大きいわけですね。これはどうしてなんでしょうか?」村上「あのー、一つは前回のウイルスもOタイプと言うことで同じなんですが、遺伝学的には少し違っている。さらに、広がりを見ますとですね、感染力が強いというふうに思える節、もございます。」司会「前より、感染力が強いのではないか、ということです・ね」村上「はい、はい、それからですね。よく、あの、口蹄疫に感染した動物のことを、機械に例えて言うわけであります。で、牛はですね、よく言われるのは乳牛なんですが、あのー、少しのウイルスで感染して、症状をはっきり見えるということから、感知器と呼ばれています。それから豚についてはですね、少し量はいるんですけども、いったん感染しますと大量のウイルスを放出すると、しかも、発病する前から出していると、いうふうに言われます。(豚は増幅器の図あり)そういったことで、前回はその豚に感染しなかった。」司会「前回は、牛だけだったということですね。」村上「はい、今回は豚に感染しているということですね。それから、もう一点は、前回に比べますと今回は、あの、畜産農家さんの多い地域に発生していると、いうことがあげられるかも、知れませんですね。」司会「その、多い地域だと、まあ言ってみれば、集中しているわけですから、これは広がりやすいというように、はっはー。」村上「はい、広がりやすい、ということになりますね。」司会「まあ、そういう理由が考えられるということですか。」村上「はい。」


司会「あのー、それにしても、今、あの見てきました、この10kmの範囲内については、全頭処分という対策なんですが、これどうなんでしょう、この大規模な対策、ま、農家の人の気持ちも分かるんですけど、これ、やっぱりやむを得ないということなんでしょうか?」村上「はい、はい、あのー、どうしても、この病気は、ワクチンをとりましても完全に感染を防ぐことはできないであるとか、そしてそのー、生きた細胞で増殖するウイルスだものですから、動物が生きていれば、そこでどんどん増殖してウイルスの濃度が高まるということがありますので、えー清浄国で、あのーこの病気がない国で発生した場合には殺処分するというのが、一つの国際的なルールになっている。」司会「国際的なルールということですか。」村上「はい。」司会「はあ、そうしますと今回のこの措置というのは、まあ言ってみれば、そういう国際的なルールに則って、・・ということですか。」村上「はい、そうですね。あのー、しかも最短コースで、早く元の口蹄疫がない国に復帰するということを目指していると思いますね。」


8.”10~20km圏内” 早期出荷の苦悩司会「はい、さて、この強い感染力を持つウイルス、これを封じ込めるために、国が行っている対策の、これは2つ目なんですけど、それが感染して・・感染が出ていない地域を対象としたものです。この10kmの範囲内の外側ですね、この20kmの、この範囲内では牛や豚全て、これ食肉などに加工して出荷してしまおうというものなんです。つまり、この範囲で生きている家畜をゼロ、つまり空白の地帯にして感染拡大を食い止めようという対策です。ではこの対策、進んでいるのか、続いてこの点を追跡します。(ナ):口蹄疫の発生地から、およそ13km離れた日向市塩見。・・三代にわたって畜産業を営む黒木敬二さん。・・飼育している牛への感染を防ぐため、最新の注意を払ってきた。農場には家族以外の人を近づけないようにしている。・・今回、消毒した靴やカメラを使い、敷地の外から撮影することを条件に、取材を申し込んだ。黒木「ここからが牛舎になりますので、できればこの外から。」「はい、撮影はこの外からですね。」「はい、お願いします。」「はい、わかりました。」(ナ):黒木さんは、毎朝30分以上かけて、農場の出入り口などに、消毒用の石灰をまく。・・さらに、殺菌効果があるとされている竹をいぶして作った液体を、1日2回、牛の鼻や口に吹きかけている。・・こうした必死の対策で、黒木さんの農場では、感染の疑いがある牛は出ていない。・・飼育しているのは、雌牛73頭、上質の子牛を産ませたいと、手塩にかけて育ててきた。・・生まれた子牛も、セリに出すまでのおよそ9ヵ月間、大切に養ってきた。・・しかし、今月19日、早期出荷の決定を受け、雌牛も子牛も全て、食肉に処理して、出荷しなければならなくなった。黒木「家族同然、子ども同然みたいに、育ててきた牛ですから、ましてや感染もしていない牛ですから、その牛を早期出荷してくれ、て言われても、いやー、それは無理ですと、最初は思いました。思いましたけど、まずは、そのー、終息に向けて、協力をするのが1番ではないじゃろうかと。」(ナ):ところが10日たった今も、黒木さんの牛を含め、早期出荷の対象となっている1万5千頭は、。まだ1頭も出荷されていない。なぜなのか。・・理由の一つは、食肉処理場が足りないことだ。この地域に牛の処理場は一つしかない。その上、口蹄疫が発生した10km圏内にあるため、現在、閉鎖されている。仮に処理場が開催されたとしても、1日に扱えるのはせいぜい60頭、全ての牛を処理するには8ヵ月以上かかると見られている。黒木「そんなに待ってたら、緩衝地帯ていう意味がないですよね。出荷するスピードも早めて、早く緩衝地帯をつくらないと、(10km圏内の)中で殺処分されていった牛や豚、それを、あのー、了承した農家さんの行為が、無になるというか、意味ないですよね。」9.危機に直面 ブランド牛(ナ):口蹄疫は畜産業の将来にも、大きな不安を与えている。(TVニュース:5月24日 宮崎牛 種牛49頭 副大臣“特例を認めず、宮崎県に処分を求めていく方針に、変わりがないことを改めて示しました。”)(ナ):県が管理してきた貴重な種牛が、エース級の5頭を除いて、処分されることになったのだ。・・・・黒木さんは、エース級の種牛と雌牛を掛け合わせ、高品質の宮崎牛を全国に送り出してきた。黒木「お父さんが忠富士ですね。でぇー・・福之国ていう牛もおりますし、」(ナ):県はエース級の5頭を避難させている。しかし、これらの種牛も、もし感染すれば処分の対象となってしまう。宮崎県の農家たちが、何代にもわたってつくりあげてきたブランド牛が、危機に直面している。黒木「やる気はあると。うん、続ける気持ちはあるし、牛しかない!と、思ってます。家には、自分には、私には。このやる気もそうは長くは続かないと思います。・・・生活、が成り立っていかなければ、どうしても違う仕事を探さないといけなくなりますし、違う仕事を始めれば、もうその仕事で生計を立てようかという気にもなりますから。うん、時間がたつとやる気がなくなり、他のところに、行かざるを得ない!状況になりますよね。うん。」10.早期出荷 なぜ進まない(スタジオで)司会「藤原さん、あの、空白地帯、今の農家の人は緩衝地帯とも仰っていましたけど、この方針はつくることが、方針は決まったんですけども、実際にはこの早期出荷、うまくいっていないようですけどもね。」藤原「はい、まず、ここで早期出荷される牛や豚は、そもそも感染も、感染の疑いもないんです。けれども、この地域の家畜たちは、万が一にもウイルスを外へ広げないためにも、20kmより先に生きたまま持ち出すことはできません。牛の処理場がないという問題については、国は現在閉鎖されている10km圏内の処理場を、特例で再開して対応しようとしていますが、ここでも牛は1日に60頭程度しか加工できません。農林水産省では、このままでは全てを加工するのに、8ヵ月以上かかる可能性もあるとしています。司会「村上さん、この対策ですね。これどのようにご覧になりますか?」村上「あのー、食肉処理場が少ないということで、なかなか進まない、大変苦労をなさっていると思います。その背景には、まあ、統廃合だとかも、あるかもしれませんね。」司会「処理場の統廃合とか?」村上「はい、ただ、あの、感染の拡大を防ぐと、いうその緩衝域を作ると、いう意味は、大変、あのー、良いことだと思うんですね。そのー、これまでに、あまり例のない、エー、方策ではあると、思いますけども、うまく感染を防いで、そして、そのためにもむつかしいかもしれませんけども、早く出荷が進むと。いうことを期待致します。」11.口蹄疫 畜産業への影響は司会「藤原さん、あのー、もう一つこれ、種牛にも感染が広がっているという現状。これ地域のですねー、畜産業全体に与えるダメージ、これも大きいと思うんですが。」藤原「エー、そうですね。あのー、早期出荷で対象になっているのは、もともと出荷を控えた牛や豚だけではありません。本来、食肉処理されるはずではなかった、例えば母牛や母豚なども含まれているんです。種牛のことが話題になっていますけれど、こうした母牛や母豚、についても、これまで農家が苦労して苦労して築き上げてきた、彼らにとっては、まさに宝物なんですね。国では、早期出荷による損失を補てんするとはしていますけれども、単純にお金で評価できないものが、数多くあります。これまで築き上げてきたものを全て失うことになってしまう、ことにつながりかねないんですね。畜産の町に、牛や豚が1頭もいなくなるわけですから、本当に復活できるのか、という不安は募っています。司会「はい、今回の感染を受けて、きのう、口蹄疫対策特別措置法が成立いたしました。こちらをご覧ください。」・・ (パネル1の提示)Vaccineno_4 司会「エー、感染が広がる恐れがあった場合には、国が予防的な殺処分を行うことができる。エー、これまで農家が行ってきた、処分した家畜を埋める場所の確保、これも国が責任を持って行う。さらに、農家への損失、これを全額補償する、まあ、1千億円の見込みという。こういう法律なんですが、では、この法律によって、被害の拡大、感染拡大を防ぐことができるのでしょうか。現地対策本部本部長の山田農林水産副大臣に、きのう宮崎でインタビューしました。


 12. 農林水産副大臣に問う司会「私も現場に行って取材してきたんですが、あのー、まだ今も処分すべき家畜、どんどん増えていって、感染の拡大の恐れというのは、まだ、今でもあるわけですが、国としてですね、具体的にどういうかたちで、土地を確保、していくとお考えなんでしょうか。」山田「依然として危機的状況が続いてますんでね。だから、埋却地の確保を一刻も急がなきゃいけない。」司会「つまり、スピードがまず第一ですね。」山田「まず、スピードです。今回もそのスピード感を持って、あのー、やっとけば! 私は、ここまでの拡大はなかった、と。」司会「やはり、そこは、スピード感に欠けたようなところがある、というのは課題として、やはり浮かび上がっている、ということ、なんでしょうか?」山田「残りますねエ。県の農業振興公社が、国の基盤整備特別会計のお金でもって、あのー、そういう埋却地を買えるように、すぐ大臣とも了解をもらって、そういうシステムをすぐ、お願いしましたのでね。だから、もうすでに、自分で土地を見つけて買った人の分も、場合によったら県の方で、あの県の公社の方で買い上げていただければ、まあ、不公平感のないような形で、埋却地を早く見つけないと、処分が、埋却処分が遅れてしまう。遅れれば、それだけクラッシュしていく。」司会「10kmから20kmの範囲の、家畜については、まあ、食肉等々に加工して出荷して、まあ、この範囲をいわば空白地にするという対応で、感染拡大を防がれているということなんですけど、ここについても取材に行ったところ、今のままだとですね、加工に、もう半年以上もかかってしまうと。で、これもやっぱり、急がなければいけないことですけども。」山田「まあ、私としては、その、豚がね、豚1頭が牛千頭に匹敵するぐらい、ウイルスを発散していますんで、この10km20kmも、豚を、処分してしまいたいな、と思っていましたがね。牛は、本当に追いつかないんですけど、豚だけでも、先に、という気持ちがありましてね。」司会「これ、今、感染の拡大、収まったわけではない訳ですから、その、これ、もちろん県外に広がらないようにという、そういう対応も、とっていかなければいけない、と思うんですけど、例えば、あのー、熊本県ですとか、周辺の自治体の方にも、これこれ働きかけていくという、そういうことも考えて?」山田「そうですね。心配しています。だから隣接の県で、あのー、一つしっかりと、その防御ライン、消毒を徹底していただきたい。で、私が見るところ、やはり人を、介して、接触感染の疑いがいちばん濃厚だと思うと。いつ、県境を超えて、飛び火するかも分からないし、これは本当に日本の畜産の危機的状況ですから、まず、この口蹄疫を根治させること、これに全力を、総力を、みんなであげましょうと。」


(スタジオにて)司会「はい、あのー村上さん、山田副大臣は感染拡大に対して、きわめて強い危機感を持っていらっしゃったんですよね。この点は、どのようにお考えですか?」村上「はい、宮崎では、大変厳しい情勢が続いていると思います。エー、ワクチンで感染拡大を防ぐという方策も打たれました。エー、それが、もうしばらくしないと、まだ効いてこないかもしれませんけども、あのー、まだまだ依然として厳しい情勢が続いてると、いうふうに思います。」司会「まあ、そのー、やっぱり安心するわけには、決していかないということ、ですね。もう一つ、エー、20km圏内の早期出荷についてなんですけれども、あのー、豚については急ぐ、というふうに言っているんですけど、牛についてはですね、これなかなか追いつかないですね、難しいという認識だったんですが、これについては、どのようにお考えですか?」村上「あのー、豚の方から、エー、早期に出荷するというのは、先ほど申し上げましたように、ウイルスを大変たくさん放出する動物ですので、あのー、大事なことだと思いますね。だが、牛については、なかなか、そのー、食肉処理場の不足であるとか、現実上、皆様方が大変苦労なさっていると思います。が、なんとか早く、そのー、緩衝地域を作って拡大防止をするという方策が、うまく機能することを、祈っておりますね。」司会「ですから、牛についても、やっぱり、対策は、とっていかねばいけない、・・ということですね。」


11. “感染拡大” どう防ぐ?司会「ふーっ、藤原さん、今回の問題ですけれども、まあ、初動の動き、といったことも含めてですね、今回の対応について、課題もあると思うんですけど、この点はどうでしょう。」藤原「はい、これまでの取材の中で、三つのポイントが浮かんできました。エー、こちらに、まとめました。ご覧ください。 (パネル2の提示)  まず、一つ目が、早期発見。今よりも、もっと早期に発見できなかったのか、ということです。今回の最初に見つかった牛よりもさらに前に、別の農場で感染が起こっていた、ことが分かってきています。次は、埋める場所の確保、エー、処分するまでにウイルスが外に広がる恐れがあるので、その処分をできるだけ早く、スムーズに行うことができなかったのか、ということです。最後が、消毒などの初期の対応についてです。発生の、ごく初期ですけれども、当初から農家の間では、懸命の消毒が行われていました。一方で、地域全体の消毒などの取り組みについては、本当に十分だったのか。検証する必要があるとの指摘も出ているんです。」司会「この三つ、やっぱり、これから考えなければいけない点、ということになるんですね。」藤原「はい。」司会「村上さん、あのー、感染、もちろん、あの、今も拡大が続いている、ということなんですが、先ほどもこれ(パネル:世界の口蹄疫発生状況)、紹介しましたが、エー、日本だけでなくて、アジアでも蔓延しているということです。この口蹄疫について、では今後、防いでいく、私たちがこれを防いでいくためには、どのようにしていけばいいのか、この点についてはいかがでしょうか?村上「あの-、結論から申し上げますと、危機意識を持つと、いうことが大事だと、いうふうに思います。アジアでは、最近、非常にそのー、Oタイプだけではなくて、ですね、非常にそのー、活発な口蹄疫の、さまざまなタイプの流行が続いています。そういったことから、グローバルな視点を持つ、ということも大切であろう、というふうに思います。宮崎では、また、あのー、厳しい情勢は続いておりますけれども、それでも、今回の教訓をですね、エーもとに、また水際であるとか、初期の対応の問題点があれば、もしあればそれを見直す、あるいは将来につなげる、ことということが必要であろうと、いうふうに思いますね。外国では、まあ、こういった口蹄疫などが、大変重要な感染症として、エー、病気のレベルでも最高ランクに位置付けて、誰がそのー、あっ、家畜の感染症としてはですね、誰が主体となってやるのか、情報の共有をどのようにするのか、明確にしている国もあります。エー、家畜の感染症というのは、地域経済を崩壊に、あのー、おとしかねない、と言うこともありますし、口蹄疫は容易に国境を越えて広がって、そして、発生した国全体に、社会あるいは経済的な影響を及ぼすという、代表的な家畜の病気であります。そういった意味で、テロ対策の病原体にも、指定されている」司会「テロ対策の病原体に指定されている?」村上「はい、指定されている病原体でございますので、エー、皆さんが、ともにその危機意識を持つということが大事だろうと、いうふうに思います。」司会「あのー、もちろん、これ、感染、これで終わった訳ではないということですから、やっぱりこう、安心するのは、まだ早いと。」村上「はい、あのー、いろんな方策で、ワクチンで、ウイルスの量を落として、そして拡大するのを防ぐ、そして緩衝域をつくる、さまざまな手当てを打っています。それが、まもなく効いてくるだろうと期待しております。」司会「はい、分かりました。さて、ワクチンの接種も進み、新しい法律もできました。しかし、これで問題が解決した、と言うわけではありません。今も、感染拡大は続いているのです。で、一刻も早く拡大を食い止めることに、最大限、取り組まなければなりません。そして、なぜ、今回、感染拡大を防ぐことができなかったのか。システムの問題も含めて検証することも、今後、求められているのです。「追跡! A to Z」、今夜は、この辺で失礼いたします。」終


【文責/解説】 三谷克之輔


 今回の口蹄疫対策では、感染の可能性がある牛が、早くから家畜保健所に届けられていた。それなのに、遺伝子検査で感染を確認しなかった。感染が広がっている大型農場は感染の疑いさえ届けなかった。このため、口蹄疫の発生が確認された際には、すでに感染は拡大していた。しかし、直ちにワクチン接種をしなかった。しかも、感染拡大の阻止を殺処分だけに頼ったために、感染をむしろ拡大させてしまった。さらに、10km圏内の牛と豚は健康な牛までワクチン接種して殺処分した。また、10km~20km圏内の牛と豚は、肉用に殺処分するという非現実的な早期出荷の計画を立てた。これらの感染拡大をさせた口蹄疫防疫措置と防御システムの問題点については、ブログ「牛豚と鬼」で指摘してきた。 この視点が、この報道番組では決定的に欠けている。それは口蹄疫に責任を持つ専門家達が、真実を語らなかったためである。この番組で、村上教授は「危機意識を持て」という。しかし、感染を確認する遺伝子検査も、ワクチン接種も、殺処分の可否も、民間にその自由はない。すべて国の責任と権限で実施されている。危機意識を持たねばならないのは、国の権限を持つ専門家達ではないか!村上教授は口蹄疫対策等に責任を持つ「牛豚等疾病小委員会」の現在は委員長であるが、日本の口蹄疫対策を見直そうとしていない。そこで、この報道番組をもとに、村上教授の説明の欺瞞について、次回のブログでは追跡!してみたい。


初稿(録画書き出し) 2013年2月9日 更新1 2013年2月11日
最終稿(録画追加)2020年8月18日