在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Gomorra di Matteo Garrone イタリア映画 ゴモラ

2016-02-14 00:30:55 | 何故か突然イタリア映画
Gomorra ゴモッラ(ゴモラ)
監督 マッテオ・ガッローネ



ソッリーマ氏の「スブッラSuburra」を見たら、ガッローネ氏の「ゴモッラGomorra」も見ないわけにいかない。
「ゴモッラ」の映画版(2008年)はガッローネ氏の作品だが、テレビシリーズ(2014年)の方はソッリーマ氏が監督している。
スブッラはローマとその近郊のヤクザを描いているが、ローマのヤクザはまだ可愛い方で、ゴモッラはナポリのヤクザ、つまりマフィアよりお騒がせかもしれないカモッラのことを描いている。
タイトルまで似ている、は冗談として、共通点の多い作品。

さて、ゴモッラはイタリアでは超有名な映画である。
同名の原作(2006年)があり、作者はロベルト・サヴィアーノ、イタリアで200万冊以上売れ、世界的にもベストセラーになったり、幾つもの賞を受賞し、イタリアでこの本のタイトルを知らない人はいないだろうというくらいの有名本である。
原作者はこの本を書いたために、カモッラに狙われるのではないかとか、警察の護衛が付いたなどの話も聞いた。

日本ではイタリアのヤクザ組織はみんなマフィア、と思っている人は多いと思うが、マフフィアはシチリアの組織のことを指し、その他各地にある似たようなヤクザ組織、犯罪組織はマフィアではない。
その中で、しょっちゅうニュースに出てくるのがナポリの組織カモッラで、頻繁に殺人事件が起こっている。
その数は、30年で4000人にものぼるそうで、3日に1人が殺されている計算になるそうだ。
そこで、スブッラと同様、ゴモッラでもどんどん人が殺されていく。
ただ、カモッラの中の抗争だけを扱っていないところが、原作も含めてこの作品の面白さだと思う。

4つのテーマを扱い、話が交錯する。その間、関連があるわけではない。
スブッラと同様130分の長さ。しかし、これも全く退屈する場面がない。

非常に有能で性格のおだやかな仕立て屋のパスクアーレ、収入を得るために中国人の仕立て工場でアルタモーダの講義をする話に乗ったところ、二人の乗っていた車が襲撃され、経営者は殺され、パスクアーレも怪我をする。これを機会に仕立て屋をやめ、トラックの運転手に転向。
こうやって闇で(税金を払わず)仕立てられたドレスは、結構高級ドレスに化けるそうで、ハリウッドの有名女優が彼の仕立てたドレスを着てテレビに登場、なんてシックで素晴らしいドレスなんでしょう、とアナウンサーが話しているのを彼が黙って聞く場面は、結構涙をそそる。

工場から出る有害廃棄物を安く購入しているのはフランコ。証明書も発行し、クリーンだと言いながら、ナポリ郊外の土地に違法で埋め立てている。
それらの廃棄物を積み重ねたとすると14600mになり、つまりエベレスト山よの高さをはるかに超え、また、それらの土地での発がん率は20%も高いとのこと。

チンピラ的少年二人は、カモッラの銃の隠し場所を探しあて盗み、脅されても抵抗していたら、最後は殺されてしまった。遺体はどこかに埋められてしまうだろう。

そして、世界で最もドラッグの収入の多い場所がスカンピアと呼ばれる地域で、ナポリの北のはずれに位置している。スカンピアには「帆」と呼ばれる、ヨットの帆を張ったような、一見非常に斬新なデザインの建物が立ち並んでいるのだが、その内部は、長い廊下で各戸がつながり、まるで日本の貧しいアパートか団地を思わせるような雰囲気を持っている。
ここにもいくつかのグループがあり、グループ間の抗争が絶えない。次から次に人が殺されていく。

スカンピアの世界は、映像としてかなり衝撃的。実地で撮影されたというが、よく撮影したと感心!

映画はナポリ語での会話がほとんどで、かなり聞き取りにくく、イタリア語の字幕スーパーが欲しい。。。と思った。
全体的にかなりの迫力。映画の評価もかなり高く、かなりオススメ。

ガッローネ氏は昨年「童話の中の童話Il racconto dei racconti」の上映の際に出席したが、それはびっくりするくらい感じが良かった。「ゴモッラ」そして「リアリティーReality」その後「童話の中の童話(物語の中の物語)」とかなり違う作風の作品を作っているが、全く違う作風の作品を作ることが面白いというタイプらしい。似たような作品を作り続ける監督もいる中、次はどんなタイプの作品を作るのか楽しめる監督。


日本でも出ています。
結構強烈。オススメ。ぜひどうぞ。

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