在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Uno per tutti di Mimmo Calopresti イタリア映画 みんな一つ

2016-01-28 15:25:36 | 何故か突然イタリア映画
Uno per tutti みんな一つ
監督 ミンモ・カロプレスティ



Giorgio Panarielloがかっこいい(だけ)

小説の映画化は簡単ではないと思う。大抵少なくとも100ページはあるのを1時間半程度の映像にまとめなくてはいけない。細かい描写も省かなくてはいけないところが多いだろう。また、本なら読み返せるが、映画は基本的に巻き戻さない限りそのまま流れていく。

上映会後のインタヴューには、監督のカロプレスティ氏と原作の作家のサヴァッテリ氏が出席した。
監督曰く、この本を読んだときに閃いた、ということと、以前ローマで似たような事件が起こった時、その被害者の親に接したことがあり、それが心に残っていたということだそう。

うーん、難しい。原作は読んでいないが、とにかく細かい描写が抜けている(だろう)というか、本にはあるかもしれない心理描写やストーリーの辻褄が描ききれず不自然というか、省略しても良いようなエピソードもある。

ストーリーは、3人の男性が主人公だが、うち二人、あやしい建設業で金持ちになっているジルと、地味に警察官をしているサロはトリエステ(イタリアの北東の端)に住んでいる。もう一人のヴィンツは、思春期になって家族がカラブリア(イタリア南端)に移住したので、カラブリアで医者になっている。

ジルの息子が大勢で喧嘩沙汰になった時に、同じ年頃の少年をナイフで刺して少年は重体。たぶんダメだろう、という感じ。
刺したジルの息子は捕まり、警察に拘留される。
ジルの妻がヴィンツに電話をかけ、大事な女性の一大事ということで、医者のヴィンツはカラブリアからすっ飛んでいく。ジルの妻は忘れられない女性という設定。
警察のサロは、友人の息子ということでなんとか監獄入りを避ける努力をするが、最後に重体の少年は死亡し、ジルの息子は監獄入りになってしまうだろう、という感じで終わる。

そこに、ところどころ、幼い時の3人のシーンが入るのだが、これもいたって不自然。
少年のやることだからマフィア的誓いの遊びをするのはまあ良いとして(そこでTutti per unoみんなは一つ、団結)、本物のピストルで遊んだり、それで一人の少年が死亡してしまうような事件が起きているのに、ジルとサロは30年来会っていない(トリエステはそれほど大きな町ではない)とか、サロとヴィンツが出会って一瞬気がつかないとか、ジルの妻がヴィンツにとって忘れられない女性という設定にもかなり、それもかなり無理がある。えー絶対忘れる~という感じ。(また、幼い時はくるくる巻き毛、現在ストレートの髪も不自然)
警察のサロが、証拠として押収したナイフを隠してしまうのも、最後には海に捨ててしまうとか、ちょっとこれって、いくら友人の息子だからって警察としてやばいんじゃない??という設定もあり。
金持ち、やばい建設業で成功しているジルが東欧の女と浮気しているシーンなど別になくてもいいし(どうせそんなものだと想像できる)、妻が仏教を信仰しているシーンも省略できるような気がする。
そして。。。誰も泣かない。息子が他人を刺したとわかった時、刺された少年の母親も一場面で登場するが泣かない。どちらも、特に母親であれば、普通、半狂乱の状態になると思うのだが、みんなかなり冷静。いくら仏教もどきを信仰していても冷静すぎ。
うーん。。。原作もそうなのだろうか。
本なら、心理描写やストーリー設定や、もっと引き付けるように面白く読めるかもしれない?

救いは、テレビのショーなどでも活躍している俳優、舞台俳優のパナリエッロが警察のサロ役で、演技が上手い事。彼の役所にも細かい設定の疑問はあるが、彼がいなかったら見られないかも。
そこで、パナリエッロのファンなら、ストーリーは深く考えずぼーっと見るのにオススメ。でなければ、省略していいかも。