行きかふ年もまた旅人なり

日本の歴史や文学(主に近代)について、感想等を紹介しますが、毎日はできません。
ふぅ、徒然なるままに日暮したい・・・。

怪獣使いと少年

2008-02-20 00:40:06 | Weblog
 『帰ってきたウルトラマン』第33話がタイトルの題名で、脚本・上原正三、監督・東條昭平による作品である。
 佐久間良少年は、一日中河原で穴を掘り続けている。彼の周囲では様々な怪現象が発生。人々は、彼を宇宙人だと恐れた。地球の環境調査に宇宙から飛来したメイツ星人は、怪獣ムルチに襲われた佐久間少年を救い、ムルチを念動力によって地下に封じ込めた。星人は河原に宇宙船を隠し、金山という名を名乗る老人に姿を変え佐久間少年と生活を始めた。
 工場の煙や排気ガスで汚染された地球の大気に身体を蝕まれ、メイツ星人は死期が迫っていた。河原の廃屋に2人は住んでいたため、少年は度々いじめられ、それを念動力で救っていたのが金山老人であった。すでに立ち上がることさえできなくなっていたメイツ星人のために、佐久間少年は河原を掘り続け、宇宙船を探していた。
 佐久間少年に対する偏見は更に強まり、恐怖に駆られた町の人々は暴徒と化した。佐久間少年は、MATの調査の結果、北海道出身で蒸発した父親を探しに来ていたのだったが、暴徒と化した人々に郷の叫びは通じず、金山老人が少年をかばうが、遂に警官が発砲してしまう。
 金山は緑色の血液を流して絶命した。金山(メイツ星人)の死によって、ムルチが再び地上に現れ暴れ始める。死んだ金山の魂が乗り移ったかのごとく、工場地帯を破壊し続けるムルチ。その破壊の前に身勝手に助けを求める人々に憤りを感じる郷だったが、伊吹隊長に諭され、ムルチに立ち向かっていく。
 降りしきる雨の中、ウルトラマンのスペシウム光線がムルチを倒し、危機は去った。

 佐久間少年は、金山の死を信じず、相変わらず河原を掘り続ける。いつの日か宇宙船を掘り出し、汚れた地球を捨てて老人のいるメイツ星へ向かうために・・・。

 試写会を行った当時、殆どの者が絶句。内容の過激さに放送の差し替えを求められたという。しかし、円谷プロは放送を敢行した。それと引き換えに監督は、帰ってきたウルトラマンから降板した。
 放送から37年が過ぎた。しかし、現在でもこの作品はファンの間では圧倒的に支持されているという。

 偏見や無知に左右される事なく、佐久間少年に普通に接したパン屋のお姉さんの(少年にパンを売る事を母親に注意され)「だってウチ、パン屋だもん」の台詞だけが、この暗い作品の救いだった。