フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 2012年1~3月期のテレビドラマも最初の3、4回が放送されたところです。私のブログ恒例のテレビドラマ批評の時期です。各テレビドラマ作品に対するコメントを載せておきましょう。
 今回は、それぞれのテレビ局がドラマにつけたキャッチコピーを紹介してみました。また、
ここまでの視聴率の推移がわかるように、毎回の視聴率を示してあります。
             
『ステップファーザー・ステップ』(TBS、月8) 10.4%→8.6%→7.7%→8.9%
  「(契約)家族、ナゾを解く」

 孤高の怪盗がひょんなことから双子のパパになるという意外性から、表記のようなキャッチコピーがつけられています。ホームコメディでありながらミステリーでもあり、「一粒で二度おいしい作品」というのが売り物です。ただ、二つの売りがあるというのはどっちつかずになる心配もあり、今のところ視聴率的には苦戦しています。「宮部みゆき原作」というところも懸命にアピールしていますが、それだけでは見てくれないでしょう。
 上川隆也さんは何でもできる俳優ですが、この役にはむしろ不器用な意外性のある俳優さんの方がよかったのではないでしょうか。昔、時代劇のニヒルな役者という固定イメージのあった田村正和を『うちの子にかぎって』『子供が見てるでしょ』に起用したような、見る人を驚かせるような意外性がほしかったところ。ステップより思い切ったジャンプがほしいところです。
             
『ラッキーセブン』(フジ、月9)  16.3%→16.9%→15.2%

 フジテレビのウェブページを見ても、キャッチコピーらしいものがありません。「キャッチコピーなんて必要ない」という自信のあらわれでしょうか。「探偵社を舞台としたドラマ」という設定自体は新しさがありませんが、ところどころにコントを入れたドラマ展開はテンポもよく、ミステリーや謎解き色を薄めた軽いテンポの『BOSS』という感じです。松本潤と瑛太が上半身裸で闘うシーンなどは「ファン目当ての視聴率稼ぎ?」と見えてあざとい気もしますが、女性ファンからすると「二人をいっぱい見られてラッキー!」という感じなのでしょうか。それを除けば誰でも安心して楽しめるドラマです。

             

『ストロベリーナイト』 (フジ、火9) 16.8%→16.9%→16.4%→16.3%
  アタマの中で、殺人犯が巣食っている。

 以前に単発で放送されたドラマのシリーズ化。こちらは『ラッキーセブン』と対照的に、ホラーに近いようなミステリー色を打ち出しています。快楽殺人とか、残酷な場面があって私はこういうのは苦手で、「ストロベリーナイト」という言葉のメルヘン的なイメージとは真逆のドラマです。刺激の強いミステリーが好みの方にはオススメでしょう。
            

『ハングリー』  (フジ、火10) 14.2%→15.3%→12.7%→11.1%
  「料理 is ロック」

 ミュージシャン志望の青年が夢をあきらめてフランス料理のシェフになるという話。脚本家・大森美香が「今いちばん見たい向井理」というコンセプトで書いた、向井理のためのドラマです。いくらフレンチ・レストランのオーナーの息子だからと言って、それまでミュージシャンを目指していた青年が、ろくな修業もいないでそんな素晴らしい料理が作れるでしょうか。「料理の世界はそんなに甘くないぞ!」と怒りたいところですが、「向井君がかっこいいんだからいいじゃない」ということなのかもしれません。瀧本美織ばっかりいつもお腹をすかせて「ハングリー」なので、主人公ももう少し「ハングリー」に努力するところがあってもいいんじゃないでしょうか。
 私は料理への関心もあって、わりと楽しく見ていますが、向井理ファン以外の視聴者も見続けてくれるかどうかは心配です。
             

『ダーティー・ママ』 (日テレ、水10)  12.7%→14.2%→10.7%→9.7%
  「シングルマザー、ウソつかない」

 秦建日子の小説が原作。永作博美が破天荒な子連れ刑事に扮します。『子連れ狼』+『刑事コロンボ』といったところでしょうか。香里奈が永作に振り回される真面目な刑事を演じます。
 子連れの破天荒な刑事という設定がミソですが、このキャッチコピーでは魅力が伝わってこないように、これだけ「事件・謎解き」ドラマが氾濫している中でどこを売りにするのか、ちょっとインパクトがないかもしれません。永作博美さんは年齢のわりに可愛らしくて、そんなにダーティーに見えません。「ダーティー・ママ」と言うなら、もっと主人公が悪役・にくまれ役に徹してほしかったような気がします。
            

『最高の人生の終わり方』 (TBS、木9) 13.5%→11.0%→12.9%→9.1%
  「泣ける葬儀屋ミステリー」

 今クールのドラマのキャッチコピーの中ではこれが一番よくできている気がします。「泣ける葬儀屋ミステリー」というフレーズは、インパクトもあり、内容も端的に伝わります。
 葬儀という場を通じて、人の死にかかわるミステリーを作り、その人生前の話で泣かせるという作り。「泣ける」と「ミステりー」の組み合わせもいいですが、その間に「葬儀屋」を挟んだアイデアに敬礼。ただし、内容は毎回人情話なので、毎回見ると飽きがきそうです。「最低の視聴率の終わり方」にならないことを願っています。
             

『聖なる怪物たち』 (テレビ朝日、木9) 10・8%→7.9%→6.9%
  「この冬、もっともスキャンダラスな医療サスペンス」

 キャッチコピーの通り、かなりおおげさなサスペンスです。しかし、その「おおげさ」さがほどほどなのではないでしょうか。いっそ昔の大映テレビくらい「おおげさ」さを徹底させないと、韓国ドラマ全盛の現代の視聴者には物足りないかもしれません。最近の視聴者はちょっとやそっとじゃ「怪物」に見えないですよ。
            

『最後から二番目の恋』 (フジ、木10) 12.1%→12.8%→11.8%→11.4%
  「大人って、淋しすぎると笑っちゃう。」

 視聴率はそれほどでもありませんが、じゅうぶん「大人」の私が一番楽しみにしているのがこのドラマです。「大人って、淋しすぎると笑っちゃう。」というコピーもひねりがあっていいですし、その前にドラマの中では「淋しくない大人なんていない。」というフレーズを使って、「大人」と「寂しさ」をうまく結びつけています。私の好きな岡田惠和さんの脚本ですし、私は一押しです。ただし、若者の視聴者がついてくるかどうかは心配なところです。
 ところでどうして「最後の恋」じゃなくて「最後から二番目の恋」なのでしょうか。『最後の恋』(1997年、北川悦吏子脚本)というドラマは既にあったからでしょうか。
            
『デカ黒川鈴木』 (日テレ、木深夜) 5.3%→4.5%→4.3%→4.1%→4.7%
  「この刑事たち、チームワークゼロ」

 滝田務雄『田舎の刑事の趣味とお仕事』などが原作の刑事ドラマ。刑事ドラマとはいっても、売り物は「ゆるさ」です。田舎ボケした部下に足を引っ張られながら活躍する中年刑事の活躍を描きます。
 私はこの「ゆるさ」がけっこう好きです。爆笑はしませんが、「くすっ」と思わず苦笑してしまうドラマです。ただ、「黒川鈴木」(黒川が名字、鈴木が名前)という姓名が気になります。どなたか由来を御存知でしょうか。
             
『恋愛ニート』 (TBS、金10) 12.9%→8.6%→9.3%
  「忘れた恋のはじめ方」
 
 このキャッチコピーも短くて内容がよく伝わってきます。NHK『セカンドバージン』と設定が似ていますが、『セカンドバージン』は重くてどろどろ系、こちら『恋愛ニート』はコメディ調。軽く見られるところがいいです。ただ、インパクトは弱いので、このドラマを楽しみに待つという感じにはなりにくいでしょう。「忘れた放送曜日の思い出し方」が必要になりそうです。
            

『13歳のハローワーク』 (テレビ朝日、金11) 9.3%→7.9%→8.1%
  「もし人生をやりなおせたら、あなたはどんな大人になりますか?」

 村上龍のベストセラー本が原作ですが、原作は小説ではありません。したがって全然別の作品になっています。ただ、テレビの良さは映像。主人公がバブル期にタイムスリップしたときの当時の風俗や事件がなつかしくて楽しめます。

            

『理想の息子』 (日テレ、土9) 13.9%→12.4%→14.0%
  「野島伸司が描く愛らしくもオカしい「母子愛」コメディ」

 日本テレビ土曜9時のドラマのターゲットはは小中学生とその親。その枠らしいテーマ設定です。ただし、そこは野島伸司脚本。そこには「愛の実験」の思想がこめられています。その詳細は別の機会に。
            

『運命の人』(TBS、金10) 13.0%→11.3%→11.6%→   %
  「未来は変えられるのか」

 『華麗なる一族』( 年)や『不毛地帯』(2009年)に続く山崎豊子原作小説のドラマ化です。軽く見られる現代のテレビドラマの風潮の中で、歴史的な事件や課題を扱った、珍しく硬派なドラマです。本木雅弘、松たか子、真木よう子という昭和顔の俳優をそろえたところも見事です。「昭和のドラマが未来の視聴者を変えられるのか?」
             

『早海さんと呼ばれる日』(フジ、日9) 9.8%→10.1%→10.0%
  「導く、ヨメ」

 キャッチコピーは「導く、ヨメ」で、ウェブページのトップには主演・松下奈緒がジャンヌ・ダルクのように人々を鼓舞し、導く姿が出されています。
 しかし、ドラマを見てみるとそんな革新的な女性像ではなく、松下が演じるのはお嬢様育ちながら、むしろ家族のために献身的に尽くそうとする古典的な女性像です。『ゲゲゲの女房』で当たった松下の家庭的な女性像が重なりますし、目新しさは感じられません。
 『早見さんと呼ばれる日』というタイトルからして、「結婚して名字が変わってその家の女性になる」というイメージが込められていますから、松下演じる主人公のような、一生懸命家庭に尽くそうとする女性像に憧れを持って見られる人向けのドラマです。
             

『妄想捜査』 
(テレビ朝日、日11) 5.7%→5.7%
  「誕生、妄想系ヒーロー」

 たらちね国際女子大学准教授・桑潟幸一とミステリー研究会が事件を解決していきます。
 奥泉光『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』が原作ですが、テレビの方の主眼はミステリーにはありません。主眼は「妄想?そうさ。」って感じです。
            



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松下奈緒と新藤真理子 (牢屋壮一)
2020-11-06 19:36:53
 牢屋(ろうや)壮一です。今回のテーマは『松下奈緒と新藤真理子』と言うテーマで書きたいと思います。
(その理由はこの記事本文に既に放映が終了した作品とは言え松下奈緒が出演した『早海さんと呼ばれる日』と言うドラマが取り上げられているからです)。
 改めて言うまでもなく『松下奈緒』は実在する女優でありピアニストである事は言うまでもありません。これに対して『新藤真理子』と言うのは1983(昭和58)年から翌年の1984(昭和59)年にかけて『TBS(東京放送)系列』で放映された大映テレビが制作した1980年代の人気ドラマである『スチュワーデス物語』に登場する『架空の元ピアニスト』です。因みに蛇足ながらこの『新藤真理子』の役を演じた女優は『片平なぎさ』である事は言うまでもありません。
 新藤真理子は『架空の元ピアニスト』ですが、実在する女優の松下奈緒は『正真正銘の本物のピアニスト』でもあります。正真正銘の本物のピアニストとしての『松下奈緒』はどちらかと言うと『新藤真理子』型のピアニストではないでしょうか? 
 芸能ゴシップ情報によるとピアニストとしての松下奈緒は『激しい情熱と感情』の持ち主だそうです。もちろん女優として演技をしている時と言うか役を演じている時の『松下奈緒』はそのような激しい情熱と感情は内に秘めている(内に隠している)事は言うまでもありません。
 これはあくまでも『芸能ゴシップ情報』に過ぎませんが、宇佐美先生は女優としてではなく『ピアニストとしての松下奈緒』をどのように評価している(見ている)でしょうか?
 私(牢屋壮一)は宇佐美先生に対してここに質問したいと思います。
 今回のコメントは以上です。
 
 
 
女優でピアニストでもある『松下奈緒』に是非とも見て貰いたいテレビドラマがあります。 (牢屋(ろうや)壮一)
2021-03-10 23:27:45
 牢屋(ろうや)壮一です。今回はタイトルにある通り女優でピアニストでもある『松下奈緒』に是非とも見て貰いたいテレビドラマ作品がありますので、それについて書いてみたいと思います。
 ここで私(牢屋壮一)が考えている女優でピアニストでもある『松下奈緒』に是非とも見て貰いたいテレビドラマと言うのはこれはかなり古い作品ですが、1985(昭和60)年にTBS(東京放送)系列で全国放映された『少女に何が起こったか』と言うテレビドラマです。
 この『少女に何が起こったか』と言うテレビドラマは放映当時の人気アイドルだった小泉今日子(キョンキョン)が出演したドラマです。放映したテレビ局(民放キー局)はTBS(東京放送)ですが、制作したのは言わずと知れた『大映テレビ』です。
 なぜ私(牢屋壮一)がこの『少女に何が起こったか』と言うドラマを女優でピアニストでもある『松下奈緒』に是非とも見て貰いたいのか、と言いますとこの『少女に何が起こったか』と言うドラマは『音楽大学』を舞台として話が展開するドラマだからです。
 この『少女に何が起こったか』と言うテレビドラマが放映されたのは1985(昭和60)年であり女優でピアニストでもある『松下奈緒』が生まれたのは偶然にも同じ1985(昭和60)年ですから彼女(松下奈緒)はこの『少女に何が起こったか』と言うテレビドラマをリアルタイムでは知らない世代です(再放映では見た事があるかも知れませんが)。
 長々と下らないと言うかつまらない話を延々と書き綴りましたが、要するに私(牢屋壮一)が言いたい事はこの1985(昭和60)年に放映された『少女に何が起こったか』と言うテレビドラマを『松下奈緒』に是非とも見て貰いたい、と言う事です。

 今回のコメントは以上です(牢屋壮一より)。
 
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