フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 今日5月20日(日)の『朝日新聞』朝刊に、私のコメントが掲載されました。記事のタイトルは「ドラマ 現実性どこまで TBS『ブラックペアン』に学会反発」で、最初に、この記事の背景を簡単に書きます。
 4月から放送が始まった『ブラックペアン』 (日曜21時~、TBS系)は、地方私立大学医学部が舞台のドラマ。原作は海堂尊の小説。外科学会理事長の座を狙う佐伯清剛教授(内野聖陽)、ヒラの医局員ながら天才的な技術を持つ渡海征司郎(二宮和也)らの世界を、研修医・世良雅志(竹内涼真)の目から描いていきます。
 ドラマは面白いと思いますし、ネット上などでも肯定的な評価が多いのですが、問題になったのは、「治験コーディネーター」として登場した木下香織(加藤綾子)の行動。高級飲食店で医師を接待し、お金に困っている患者には多額の謝礼を提示して認可前の治療法を受け入れさせる、といった行動をとります。
 このような描き方に関連して、日本臨床薬理学会がTBSに対して抗議をおこないました。「治験コーディネーター」の仕事内容はそのようなものではなく、ドラマに登場するような「治験コーディネーター」はあり得ないというのが、その抗議の要点です。この抗議については、ネット上でも多くの意見が交わされ、それが今回の『朝日新聞』記事にもつながっていった。というのがこれまでの経緯です。
 詳細は記事を見ていただきたいのでここでは控えますが、私自身はできるだけフィクション作品を拘束せず、自由な制作を保証したいと考える立場にあります。フィクション世界に嘘や誇張をつきものであり、現実と異なることをもって糾弾するようなことは、原則としては望ましくないと考えています。
 ただし、だからといって、どのような描き方も許されるというわけではありません。不必要な誇張、誰かを傷つけるだけで必然性のない嘘、そういったことを避けるように努める義務も、フィクション制作者にはあります。ただし、その境界は明確に引かれているわけではなく、個々の作品にそって見定めるしかありません。
 今回の『ブラックペアン』については、「治験コーディネーター」が作品の中心ではなく、影響が小さい反面、実在の職業を歪める必然性があったのかわかりませんでした。TBSの番組ホームページには、「※ドラマの演出上、登場人物の行動は、治験コーディネーターの本来の業務とは異なるものも含まれています。」と書かれています。その姿勢はよく理解できます。ただ、今回のストーリーを見る限りでは、「治験コーディネーター」の部分に架空の職業を設定するとか、その人物を医療機器メーカーの社員として設定するとか、別の方法はあったように思います。
 私は、フィクション世界では創作の自由をできるだけ認めてほしいと考えますが、今回の演出の必然性はいまひとつ理解できませんでした。TBSの番組ホームページには「今回のドラマでは、フリーの治験コーディネーターである木下香織は、“ある思い”を実現させるため、清濁あわせのむような形で必死に働いています。全話見ていただき、その思いに触れていただければと思います。」とも書かれていて、この点にも注目しながら、『ブラックペア」ン』の今後を見続けていきたいと思っています。


(参考ページ)
日本臨床薬理学会の意見 「facebook2018/5/2
TBS番組ホームページ「治験コーディネーターとは

『朝日新聞DIGITAL』「ドラマの現実性どこまで 「ブラックペアン」に学会反発」(有料会員用頁)


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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