フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



      (写真は日本サッカー協会サイトから引用)

 ドイツでおこなわれていた女子サッカーのワールドカップで日本が優勝しました。おめでとうございます。
 私は、日本が唯一敗戦したグループリーグ第3戦だけ、都合でテレビ観戦ができませんでしたが、他の5試合ずべてを生でテレビ観戦しました。つまり、私が見た試合は全勝でした!
                   
 日本は世界ランク4位と過去最高でこのワールドカップに臨みましたが、私は世界ランクをそれほど信用しておらず、世界のトップ3(アメリカ・ドイツ・ブラジル)とはまだ差があると思っていましたし、世界ランク4位~10位くらいのチームはほとんど差がないとも思っていました。その証拠に、日本がイングランド(世界ランク10位)に完敗するなど、日本がメダルをとるのは困難かとも思っていました。
 実際に、準々決勝のドイツ戦、決勝のアメリカ戦は苦戦していて、ドイツもアメリカも、10回戦ったらおそらく1~2回しか勝てない相手かもしれません。しかし、サッカーは実力が上のチームが常に勝つとは分からないスポーツで、その1~2回のチャンスをワールドカップ本番にものにした日本代表を讃えたいと思います。
                   
 今回は仕事も忙しくて行けませんでしたが、実は4年前の女子ワールドカップ中国大会には、私も観戦に行っています。
   → 「なでしこジャパン in 上海」
 その際は、今回と同じグループリーグのイングランド戦を観戦しました。結果は「2対2」の引き分けでしたが、宮間あやの直接フリーキック2本でかろうじて引き分けに持ち込んだ試合で、実力は明らかにイングランドが上と見られる試合でした。この4年前の時点で、日本と世界のトップ10チームの間にはまだ実力差がありました。
 それがこの4年間で、実力差は明らかに縮まりました。優勝したから実力世界一というのは早計としても、世界のトップ3と(押され気味でも)そこそこのいい勝負をするところまでは実力差をつめてきたと思います。
 そのいい例が、自陣ゴール前で相手のボールを奪ったときに、大きくクリアしないこと。日本代表は、自陣ゴール前からでもショートパスをつないでボールを運びます。これは、もし相手にパスカットされると、自陣のゴールに近いところで攻撃を開始されるわけで、たいへん危険な状況になります。それでも自陣からショートパスをつなぐというのは、自分たちのパス回しにかなりの自信を持っているということで、日本代表の代名詞であるパスサッカーが良く表れていました。
                  
 また、優勝したということだけではなく、個々の試合を見ていても気持ちがよかったのは、「戦術への意思統一の徹底」と「審判への抗議や不満な態度のなさ」でした。日本代表は先述のパスサッカーというチーム戦術への意思統一が見事で、すべての選手の気持ちが一致しているように見えました。男子の場合は「個」の自己主張が強くて、それがまた面白いところではありますが、それが時にはチームとしてばらばらな印象を与えてしまうこともあります。2006年ワールドカップ・ドイツ大会の日本代表などがそのいい例で(→ 「ジーコジャパンが燃え尽きた夜」 )、いくら個々に優秀な選手がそろっていても、チームとして機能しないことがあります。女子の場合は待遇面で恵まれていないので、そもそもチームが勝たなければ個人の環境も改善しません。そういう事情もありますが、今回の女子日本代表はそれ以上に、見事なほどチームとしての意志統一がなされていました。
                  
 もうひとつ気持ちがよかったことは、審判へ抗議したり、不満な態度を示すことがなかったこと。これは日本代表に限らず、女子の試合全体に言えることです。今回の決勝戦の日本DF岩清水選手の一発レッドカードなどはやや厳しすぎる判定にも見えましたが、岩清水選手を含めて誰一人審判に不満な態度を見せる選手はいませんでした。
 ただ単に不満な態度を見せるだけなら男子選手としても二流ですが、一流選手や監督になると、そうした部分を含めて審判や相手選手と駆け引きをしようとするので、それはそれでサッカーを楽しむ方法ではあります。しかし、そうした駆け引きをいっさいしない女子の試合は、男子の試合を見慣れた者にとっては新鮮で、たいへん気持ちのよいものでした。
                  
 日本がワールドカップで優勝したと言っても、ドイツやアメリカより実力で上回ったとはとても言えません。実力の接近した現在のサッカー界にあっては、ワールドチャンピオンとなった日本であっても、アジア予選を突破して来年のロンドン五輪に出場できるとは限りません。今後の女子サッカーにも、これまで以上に注目していきたいと思っています。 



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