フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 先日、銀座にある「歌舞伎座」で歌舞伎を観てきました。
 歌舞伎はこれまでにずいぶん行っていますが、いつも千代田区の「
国立劇場」で見てきたので、実は歌舞伎座の方に行くのは初めてです。今回は授業のない期間で少し時間の余裕がありましたし、外国の大学で日本語を教えている二人の先生を案内するという意味もあって、歌舞伎観劇に出かけました。
 はじめはいつも行っている国立劇場の方を考えたのですが、7月末から8月にかけて思うような演目がありませんでした。一つ「歌舞伎鑑賞教室」という初心者向けの解説付きの演目があって、これは外国人の方をお連れするのに適当かとも思ったのですが、夏休みのせいか人気が高く、私の行ける日にチケットが残っていなくて断念しました。
          
 そこで今回は歌舞伎座へ。しかし、国立劇場よりもある意味では親しみやすく、かえってよかった面もありました。
 八月興業は三部立てで、私たちは第一部を観ました。第一部の演目は「女暫(おんなしばらく)」「三人連獅子」「らくだ」の3本。第二部、第三部の演目と比べて、外国人の方をお連れするのにこれが一番よいのではないかと思って選びました。
 「暫(しばらく)」は「歌舞伎十八番」の一つでたいへん有名な演目です。北野天満宮へ詣でた蒲冠者範頼(彌十郎)が居合わせた清水冠者義高(高麗蔵)たちにたしなめられ、範頼たちが激高する。その時に巴御前(福助)が「しばらく」とよびとめて意見したため、巴御前は範頼の仕丁たちに取り囲まれるが、巴御前は大太刀でその首を刎ねて巴御前はその場を後にし、舞台番(勘三郎)に六方(ろっぽう…花道を引っ込むときの所作のこと)
を習って引き上げていく……という作りになっています
 続いての「三人連獅子」は舞踊で、
親獅子(橋之助)が子獅子(国生)を谷に突き落とし、試練に応えた子獅子と母獅子の三人で舞い踊るというストーリーが背景にありました。
 最後の「駱駝(らくだ)」は落語の話。
遊び人の半次(三津五郎)が、らくだと仇名される悪友の馬太郎(亀蔵)のもとへやって来るが、らくだは河豚の毒にあたって死んでいる。そこで半次は、通りかかった久六(勘三郎)に馬太郎の死体を担がせて、家主の佐兵衛(市蔵)とその女房のおいく(彌十郎)を脅して葬式用の酒を出させ、半次と久六は酒盛りを始める……という話です。場内大爆笑でした。
 歌舞伎十八番の有名な話、華やかな舞踊、落語種の爆笑話、と3つ楽しめるということで、今回はこの演目にお連れしました。今回の「暫」はダイジェスト版というべき見せ場だけの作りでしたし、せりふが難しくて外国の方にはわかりにくい面もありました。それでも、「暫」で歌舞伎の雰囲気を知っていただき、舞踊も味わい、さらに文句なく面白い落語話を観ていただいたことで、日本の伝統的な観劇の面白さの一端を知っていただけたのではないかと思います。私自身も久しぶりの歌舞伎見物を楽しむことができました。
          



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