フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 4~6月ドラマ感想を書き続けています。今回は深夜放送編ですが、あいかわらず書く時間が十分とれないので、短いコメントでご容赦ください。


吉祥寺ルーザーズ 
(テレビ東京系 月曜23時) 

 深夜というほど遅い時間ではありませんが、23時台の作品。秋元康企画の作品は、これまでどの作品を見ても、「さすがの着眼」と思ってきました。しかし、私の場合だけかもしれませんが、今回はあまり興味が持てません。田中みな実演じる女性が鬱陶しすぎて見てて嫌だな、と初回を思ってしまったためかもしれません。とはいえ、見続けていると、その鬱陶しいのが癖になってくる気がしないでもありません。


明日、私は誰かのカノジョ (TBS系、火曜深夜)

 原作はをのひなおの同名漫画で、「レンタル彼女」や「パパ活」をする若い女性たちの話。この手の作品は、男性側からの興味本位な目線で制作されていることもありますが、この作品は終始女性側から描かれていると感じました。そう思ってスタッフを見たら、脚本・監督とも女性が多いようでした。女性スタッフだから女性目線で制作されている、のような決めつけもまたよくありませんが、少なくとも、登場する女性たちの心情はよく描かれていると感じました。

村井の恋(TBS系、火曜深夜)

 原作は島順太の同名漫画。ゲームのキャラクターに恋してしまっている若井女性教師・田中綾乃(髙橋ひかる)。田中に恋する高校生(宮世琉弥)がイメチェンすると、そのキャラクターにそっくりに……という話。2次元キャラクターに恋する話も近年多くあるので、やや既視感があります。髙橋ひかるは『春の呪い』でせつないラブストーリーのヒロインを演じ、今回はコメディ調作品。もっと前なら『高嶺の花』でコスプレ少女を演じていました。せっかくの正統派美少女・髙橋ひかるに本当に合う役柄は何なのか。なにか当たり役がほしいところです。


メンタル強め美女白川さん(テレビ東京系、水曜深夜) 

 原作は獅子の同名漫画。ストレスフルな生活を送る会社の女性社員たちの中で、安定したメンタルで過ごせる白川桃乃(井桁弘恵)が主人公。メンタル「強め」というよりは「しなやか」とでもいうのでしょうか。見方によっては「ぶりっこ」「八方美人」ともいえますが、次第に周囲の人に理解されていきます。すぐに「傷ついた」とか言って自分を守ろうとする人が私は嫌いですが、それでも、ここで描かれていることは多くの人びとにとって切実な問題で、白川さんがひとつの処方箋になっているということは、よく理解できるような気がします。

俺の可愛いはもうすぐ消費期限(テレビ朝日系、土曜23時半)

 「可愛い」を武器に生きてきた「あざとかわいい」男子(山田涼介)が主人公。その「可愛い」が通用しなくなってきたときの戸惑いをコミカルに描きます。主人公のキャラクターがその役を演じる山田涼介に重なって、私はかなり興味をひかれました。私も、山田は「顔だけの俳優」という印象(先入観)を持っていましたが、同じテレビ朝日系の前作「セミオトコ」から印象が変わりました。過去にも、阿部寛や竹野内豊など、「顔だけ」に見える俳優がコメディも演じられる幅広い俳優に脱皮する例が多々ありました。山田がそれに続けるのか、注目しています。

しろめし修行僧 (テレビ東京系 金曜深夜) 

 ここから3作連続で、テレビ東京系得意の「深夜食べものドラマ」、いわゆる「飯テロ」作品の感想です。
 ほぼニートの修行僧が、托鉢の修行のために各地を回りますが、ご飯茶碗に乗せられる大きさのものしか食べてはいけないというのが修行ルール。ハナコ岡部大が修行僧を演じます。各地で人に出会い、人情に触れ、飯の友をふるまわれていく話。各地で恋してふられることを含めて、いってみれば『男はつらいよ』の寅さん(車寅次郞)のお坊さん版ですね。そういえば『男はつらいよ』をずっと放送しているのもテレビ東京でした。ちなみに、寅さんを演じてほしい俳優の第1位は大泉洋、第2位は濱田岳だとか。今後は岡部大がダークホースになるかもしれません。


先生のおとりよせ (テレビ東京系、金曜深夜)

 テレビ東京系得意の「飯テロ」作品もネタ切れかと思いきや、今度は「お取り寄せ」がテーマ。中村明日美子と榎田ユウキの同名漫画が原作。無愛想な官能小説家(向井理)とフェミニンな漫画家(北村有起哉)がお取り寄せ食品をめぐって語り合います。能書きいわずにガッツリいく系の「飯テロ」作品もありますが、こちらは蘊蓄全開の「飯テロ」作品です。私は能書き言わない方が好みですが、蘊蓄は蘊蓄でわるくないと思いました。


今夜はコの字で(テレビ東京系、土曜深夜) 

 3つめの「飯テロ」作品は居酒屋が舞台。しかも、実在の、「コ」の字型のカウンターがある居酒屋が舞台です。原作は加藤ジャンプ・土山しげるの同名漫画。タッチパネルのあるお店にしか行かない30代サラリーマン(浅香航大)が、先輩(中村ゆり)の勧めで「コの字型居酒屋」で他人とのコミュニケーションを少しずつ体験していく話。私はそんなにお酒飲みではありませんし、ひとりで外飲みすることはないので、そういう居酒屋には縁がありません。イギリスに外在研究で行っていたときには、一人でよくパブで食事しましたが、他の客と会話することはあまりありませんでした。ただ、知らない人と会話するということで思い出したことがあります。
 まだ20代の頃の話ですが、私はときどき「碁会所」というところに行きました。囲碁を趣味をする人が入場料を払って行って、そこに来ている知らない人と対局する場所です(常連同士で顔見知りという場合もありますが、私は常連ではないのでそういう体験はありません)。日本棋院という囲碁の総本山のような場所でも、月に1回無料開放日があって、それにも何度か行ったことがあります。そういう場所では、簡単な挨拶だけのこともありますし、対局を振り返った感想を交わすこともあります。マナーのよい人もいれば、ひどくマナーの悪い人もいました(日本棋院にはいません)。そういうことも含めて他人とかかわるのが碁会所という場所でした。「コの字型居酒屋」も似たようなところがあるのかもしれません。私が忙しくなったことやインターネット対局が普及したことで、私が最後に「碁会所」に行ったのはもう40年近く前のことですが、「コの字型居酒屋」からそんな昔のことを思い出しました。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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