フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



  (写真は2006年W杯ドイツ大会の日本対ブラジル戦)

 男子日本代表の試合ではないので、世間的にはもう一つ盛り上がっていないのかもしれませんが、このところサッカーの国際的な公式試合が続いています。
 まずはロンドン・オリンピックのアジア地区2次予選「日本対クウェート」戦が6月19日と23日(日本時間24日)におこなわれました。まだ最終予選前とはいえ、ここで敗れるともう五輪出場はできなくなるという厳しい対戦。合計スコア「4対3」で何とか最終予選進出を決めましたが、気温40度近い中で苦戦し、アウェイの厳しさを味わわされました。
                
 次はU-17(17歳以下)ワールドカップ。日本代表はアルゼンチン・フランス・ジャマイカと同組という厳しい組み合わせでしたが、2勝1分でグループリーグを1位通過。さらには決勝トーナメント1回戦でニュージーランドに「6対0」で大勝。準々決勝ではブラジルに「2対3」で惜敗しましたが、この年代から世界の強豪と公式戦で真剣勝負をすることに大きな意味があります。

 また女子ワールドカップ・ドイツ大会も開催されており、日本はニュージーランドとメキシコに連勝して、グループリーグ突破を決めています。男子よりも世界に近いことは明らかで、選手の待遇を含めて、今まで以上のサポートが期待されます。
                
 さらには、コパ・アメリカ(南米選手権)。ここには日本代表は参加していませんが、アジア王者となった日本は招待されていたので、地震の影響で参加できなくなったことが残念です。

 私はこうしたワールドカップやオリンピックといった大きな大会やその予選といった、国際的な公式戦に特に引きつけられます。どんなに有名選手が出場しているからといっても、その試合が何十試合もあるうちの一つで、負けても次があるという試合では興味が半減してしまいます。負けたら次がないというぎりぎりの状況の中での必死のプレー……それこそがスポーツの醍醐味だと私は思っています。

 ところで、最近の日本サッカー界には明るい材料が多くあります。特に男子の若い世代がヨーロッパのクラブに移籍して活躍しているのは、たいへん明るい材料です。女子の代表には比較的長く活躍している選手が多いものの、FW岩渕、CB熊谷、GK海堀といった新しい力が出てきています。
 私は2006年ワールドカップ・ドイツ大会を観戦に行き、日本がブラジルに敗れてグループリーグを2敗1分で敗退したとき、何とも言えない暗澹たる気持ちになりました。それはただ、ワールドカップのグループリーグで敗退したというだけではありません。高原・稲本・小野・加地・小笠原といった「黄金世代」と言われたジュニア時代からの有望選手たちを集めて挑んだ期待の大会だったにもかかわらず、まったく世界に通用しなかったことが暗澹たる気持ちになった理由です。その下の年代の選手たちは残念ながら「谷間の世代」と呼ばれ、ジュニア時代から国際大会で思うような結果を得られないでいました。ですから、「黄金世代」を集めたワールドカップ・ドイツ大会で世界に通用しなかったことは、それ以降の日本のサッカーへの期待がしぼんでしまった絶望的な瞬間なのでした。
                  
 しかし、そうした発想はまちがっていたのかもしれません。ある世代にだけ突然変異的に有望選手が登場することなどあるはずがなく、日本の選手育成システムがよければ有望選手は次々と現れるはず。逆に育成システムが機能していなければ有望選手は継続的に現れないはずです。
 その意味では、私のドイツでの落胆はまちがっていたのかもしれません。ワールドカップ・南アフリカ大会では本田・岡崎・長友といった20代前半の選手たちが日本代表の中心として活躍しましたし、その後も香川・内田がヨーロッパに移籍して活躍。吉田・安田らがこれに続き、さらには宮市・宇佐美らまだ10代の有望選手もヨーロッパへ移籍しています。これらの選手たちはみな口をそろえて「いずれはビッグ・クラブへ行きたい」とはっきり言います。
 実際に長友選手のように、実際にヨーロッパのビッグ・クラブ(インテル)でプレーする選手も出てきました。これはマンチェスターUでパク・チソン選手(韓国)がレギュラーとして活躍してきたことに次ぐ、アジア選手による快挙です。ヨーロッパのクラブへ移籍すること自体が珍しく、また難しかった数年前とは明らかに選手の意識が変わりました。彼らによってヨーロッパに移籍することは、もはや「移籍が目標」ではなく、「移籍はビッグクラブへのステップ」と意識されています。
 日本のサッカーが国際的に通用するためには、ヨーロッパで活躍する選手が相当数いる必要があり、そのための条件は整いつつあると言えるでしょう。移籍にかかわる問題(Jクラブへの補償など)
もないわけではないのですが、まずは海外で活躍する選手が増え、その意識が変わったことを喜んでおきましょう。日本サッカーの今後を続けて見ていきたいと思います。
                  



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