ぼけヴォケ!

認知症患者と介護家族はいかにしてボケツッコミスキルを入手したか。
慢性骨髄性白血病発症。目指せ分子遺伝子学的寛解維持。

井戸。

2009-08-03 | Weblog
目の前にある食べ物飲み物は、すべて口に入れないとおさまらない、いわゆる喰いボケという症状甚だしきBooじーちゃ。ではあるが。
いつもいつも、食べ物を欲しがるというわけではない。
逆に、食事をすることすら拒絶することもある。


一昨日の続きを一席。


譫妄状態がひどくなり、一人で生活させる、どころか、四六時中目を離すことすらできずにいたころ。
「同級会があるから」
「古い友人が近くに引っ越ししてきた。遊びに来いと言ってくれてる」
「古い友人が市長選で当選した」
などなど、さまざまな理由を付けて、家から脱走しようとするBooじーちゃ。
ほっといたら、どこへ飛んでいくやらわかりゃしない。
そもそも、話に出る「古い友人」なるお方は、四十年近く没交渉が続いている。
もう亡くなったんではないかいなとは、おかんさまの弁である。


買い物に行くことすらできずに、Booじーちゃ。から、目を離せないおかんさま。
視界の中にいる間は、少し安心できていたのだが。


庭にしゃがみこんでいるBooじーちゃ。
ずっと動かずに一時間。
おかんさまが「何しとん」と訊くと。
Booじーちゃ。は、こう答えたそーな。


「今、この井戸から人が出てくんの待っとんだ!」


井戸から出てくる人って。


貞子かい。


その当時、Booじーちゃ。の、家の庭には、確かに池があった。
トノサマガエルのおたまじゃくしが毎年孵るが、次第に共食いして数を減らしていくほど、じつに小さな物であるが。
コンクリートの円筒を地中に埋め、その中に石を置き、水を入れてあるだけ。
……井戸枠に見立てるにしても、あまりにも無理がある。


夏である。
朝からいい天気である。
水だけでも摂らせねばと、懸命になるおかんさま。
「いらん」の一言でつっぱねて、ろくろく摂ろうともせず。
池の端にしゃがみ込み、その中を棒でつっつきまわすのをやめないBooじーちゃ。
昼食も夕食も以下同文。
あまりのことに心配して、近所から親戚の人もやってきてくれた。
おかんさまの言葉では動かぬならと、いれかわりたちかわり声をかけてくれたのだが、あいかわらずぴくりとも動かないBooじーちゃ。
いつもの譫妄症状なら、喜んで車にのるはずと。
「古い友人さんのとこ行くから、車に乗る支度しない」と言っても。
「おら行かん」と、断固拒否である。


そのうち、日が暮れてきた。
当然、池など暗くてよく見えなくなっている。
やれ、やめるのかと思ったそのとき。


工事用のライトを持ち出しましたよBooじーちゃ。


さすがにおかんさまも忍耐と体力の限界になり。
コンセントにつないだライトの本体をBooじーちゃ。が、外へ持って出たとたん。


ライトのコードをコンセントからひっこらぬいて、家中の灯りをすべて消したんだそうな。


これには、さすがのBooじーちゃ。も、打つ手なし。
降参したのか、おとなしく家に入ったはいいものの。
すっかり体力を消耗していたBooじーちゃ。
次の日はきっちり爆睡したんだとか。


その後、コンクリの枠は掘り出され、池はなくなった。





あの夏の出来事は、まだまだ山のようにネタばっかり。
リングがらせんになってループしたり。
はたまた誕生日おめでとうな三部作以上に続くかは不明ですけど?
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