おかんさまの腕は、現在ぬこに引っかかれたような傷だらけである。
庭の柚子の木と喧嘩したのだ。
柚子の枝には、棘がある。
そりゃもう、薔薇の棘なんてかわいいものだというしかないほどの。
その剪定を短い柄の鋏でやっているのだから。
傷だらけになるのはまあしかたのないことかもしれない。
なぜ剪定をおとんさまがしないかというと。
家訓通り、我が家では「男は愛嬌、女は度胸」なのである。
眩暈持ちのおとんさまを高いところに登らせるわけにはいかぬということもあるが。
おかんさま「その甲斐はあったわよ~♪」
見ろ見ろというので確認にゆく。
……物の見事に切られてますな。確かに。
枝がすっかすっか。
なんだか、木が風邪引きそうな姿になってんですが。
庭木の剪定の要領で、おかんさまは家族の髪もジャビーン!と切ってくださるのだが。
散髪などという生やさしいものではない。
子どもの頃はワタクシメも問答無用で切られていた。
注文は却下される日曜床屋である。
常に同じショートにしかしてもらえず、おまけに、美容室のように切ってくれる方が動いてくれるのではない。
切られる方の頭をぐりぐりと動かして切っていくのである。
ほとんど苦行であった。
剪定をされかけたこともある。
サイドを揃えようとしたおかんさまが。
ワタクシメの耳たぶもいっしょに鋏の刃にかけたのだ。
幸いにも、耳たぶを挟んだのが刃先だったので、鋏の刃がしなってよじれ。
耳たぶは刃と刃の間に挟み込まれた。
耳は切れこそしなかったが、あまりの痛さに大泣きしたことを覚えている。
その時のおかんさまの様子も忘れることはないだろう。
一歩間違えれば、自分の子どもの耳を半分切り落としていたというに。
「あらやだ、ごっめーん」
噴き出しながら、謝られても。
真剣味などかけらもない。
本気で睨みつければ、その顔がおかしいと腹を抱えてさらに笑う。
二度とおかんさまなど信用するか。こんちきしょ。
そう、心に誓った三歳の夏のことである。
今も懲りずに痛い目にあわされてる気はするけどナー。
庭の柚子の木と喧嘩したのだ。
柚子の枝には、棘がある。
そりゃもう、薔薇の棘なんてかわいいものだというしかないほどの。
その剪定を短い柄の鋏でやっているのだから。
傷だらけになるのはまあしかたのないことかもしれない。
なぜ剪定をおとんさまがしないかというと。
家訓通り、我が家では「男は愛嬌、女は度胸」なのである。
眩暈持ちのおとんさまを高いところに登らせるわけにはいかぬということもあるが。
おかんさま「その甲斐はあったわよ~♪」
見ろ見ろというので確認にゆく。
……物の見事に切られてますな。確かに。
枝がすっかすっか。
なんだか、木が風邪引きそうな姿になってんですが。
庭木の剪定の要領で、おかんさまは家族の髪もジャビーン!と切ってくださるのだが。
散髪などという生やさしいものではない。
子どもの頃はワタクシメも問答無用で切られていた。
注文は却下される日曜床屋である。
常に同じショートにしかしてもらえず、おまけに、美容室のように切ってくれる方が動いてくれるのではない。
切られる方の頭をぐりぐりと動かして切っていくのである。
ほとんど苦行であった。
剪定をされかけたこともある。
サイドを揃えようとしたおかんさまが。
ワタクシメの耳たぶもいっしょに鋏の刃にかけたのだ。
幸いにも、耳たぶを挟んだのが刃先だったので、鋏の刃がしなってよじれ。
耳たぶは刃と刃の間に挟み込まれた。
耳は切れこそしなかったが、あまりの痛さに大泣きしたことを覚えている。
その時のおかんさまの様子も忘れることはないだろう。
一歩間違えれば、自分の子どもの耳を半分切り落としていたというに。
「あらやだ、ごっめーん」
噴き出しながら、謝られても。
真剣味などかけらもない。
本気で睨みつければ、その顔がおかしいと腹を抱えてさらに笑う。
二度とおかんさまなど信用するか。こんちきしょ。
そう、心に誓った三歳の夏のことである。
今も懲りずに痛い目にあわされてる気はするけどナー。