文字通り彼は死にかけていた
あの日
相変わらず賑やかな朝だった
近所ではおもちゃの取り合いで兄弟達が
殺し合いをしていたし
馬術部のグラウンドでは馬達が
長すぎる脚の始末に追われていた。
そしてオジサンは
重すぎる布団のせいで
今日も金縛りにあったと本気で言っていたし
そのせいで玄関に塩が盛ってあったり
オカンのクッキングが悲劇を迎えて
思い出の光景が恐ろしい光景になっても
腹は立たなかった。
深い悲しみが感情を厄介にしていた。
あの朝、爺さん(うるぼん)は静かに逝った。
悲しみの提供者を前にオジサンは
心臓マッサージを懇願した。
全てが間違いだと思ったのだろう死について交渉しようとしていた。
だが彼を引き止める気はなかった。
彼は
年を取り病や身体の衰えが誤魔化しきれなくなっていたし
じきに自分がどうなるかも知っていた。
次のステップへ進む
難しい決断を下す時が来たのだと。
人間の舌を借りれば
僕はこれから死ぬけど何も気にするな
変わらず暮らしてくれ、と言うだろう。
そして
ひるむ事の無い率直な眼差しを向け
騒ぐ事も無く
永い眠りについた。
年老いた彼が最期に望んだのは
静かに眠る事だった。
結局、死は恐れていた化け物としてでは無く
親切な友の様に訪れ優しく辛い現実から離してくれた
こうして哀れなオジサンは
ドミノの様に崩れた。
金縛り→ネズミ獲りにかかり→
その勢いでスネ強打→
帰宅したら爺さんは神様になっていた。
悲劇のピタゴラスイッチを完成させた。
残念な事に
同じ時期、沢山の仲間が空へかえった。
(モカ、ビア、ジェイド、武蔵、ラフ、ルル……)
彼らもまた問題を抱え命に関わる宣告に苦悶しながらいつでも前向きで
ほとんど勝ち目など無いのに最後まで
闘う事をやめなかった。
きっとこの優しき巨人が安全に導いてくれたに違い。
残された者は精一杯生きた彼らの生涯を祝福し、
悪意のあるクリスマスと意地悪な新年を
迎えなければならない。
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除夜の鐘ではありません、
ご無沙汰してます悲劇の女神です。