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経済時評ー「新自由主義」の黄昏は金融投機を止めることをしないー

2008-09-18 01:26:28 | 国内経済
経済時評
「新自由主義」の黄昏

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 先日、ノーベル経済学賞の受賞者を囲むフォーラム「グローバリゼーションと人類の福祉」(注1)を聴講しました。

 NHKと読売新聞社の共催、外務省と文部科学省の後援、トヨタ、日本航空、清水建設の協賛、という仰々しい経済フォーラムでした。ノーベル賞受賞者として、シカゴ大学のゲーリー・ベッカー教授とヘッジファンド(プラチナムグローブアセットマネージメント)のマイロン・ショールズ会長が出席しました。

 この二人とも、筋金入りの「新自由主義」派(シカゴ学派)の経済学者です。

社会科学的思考のチャンネルが欠けている
 今回のフォーラムの出席者で、私が注目したのはマイロン・ショールズ会長です。

 ショールズ会長は、「デリバティブ(金融派生商品)取引の基礎理論構築に貢献」という理由で、一九九七年にノーベル経済学賞を受賞しました。しかし、その翌年、彼が重役をしていたヘッジファンドのLTCM(ロングタームキャピタルマネージメント)がデリバティブ取引で大失敗して破産し、ノーベル経済学賞の権威失墜に貢献したことで有名です。

 ショールズ会長の基調講演の演題は、「不確実性のもとでのグローバリゼーションについての金融経済学者の見解」(注2)でした。この講演で同会長が強調したことは、グローバリゼーションのもとでは不確実性がつきものだ、たえず起こる“不確実なショック”にどう対応するかが大事だという自説だけでした。

 同会長は、最近のサブプライムローン(低信用者向け住宅ローン)破たんも、グローバリゼーションのもとで起こった“不確実なショック”の一つだ、と主張しました。

 フォーラムの後半、フロアの参加者との質疑応答の機会があったので、「デリバティブ取引や金融証券化などの金融理論、金融政策と現在の金融危機との因果関係をどう考えるか」と文書で質問してみました。

 ショールズ会長は、この質問にはまともに答えませんでした。そのかわり、驚いたことに、今回の金融危機を山火事にたとえて、「グローバリゼーションのもとで起こる山火事のようなショックには、柔軟に対応して学習し、新たなモデルを作ることが必要だ」と力説しました。

 今回のフォーラムをつうじて“学習”できたことは、「新自由主義」派の経済学には、現実に起こっている矛盾や危機の原因を探求する思考のチャンネルがない、社会科学としての方法が欠如しているということです。

 「新自由主義」派を批判する論客として知られるJ・E・スティグリッツ・コロンビア大教授は、最近、「新自由主義の終焉(しゅうえん)か?」という興味深い論評を発表しました(注3)。

スティグリッツの「新自由主義の終焉」論
 同教授は、「市場は自己修正をして、富を効率よく分配し、公共の利益に役立つという、市場原理主義者の見解」は、世界的な富と貧困の格差の拡大、世界的な金融危機によって間違いであることが証明されたと述べています。そして、「新自由主義的市場原理主義は、常にある特定の利益に奉仕する政治的学説である。それは、決して経済理論によって裏付けられたものではない」と結論づけています。

 この結論には、基本的に賛成です。ただし、「新自由主義の終焉か?」というスティグリッツ教授の見方には、やや異論があります。たしかに「新自由主義」派は、世界中で矛盾を拡大し、世界中で「新自由主義」批判のたたかいが起こっています。「新自由主義」派は、かつてのような日の出の勢いを失い、いわば黄昏(たそがれ)時を迎えています。

 しかし、「新自由主義」派は、現代の主要な資本主義国の経済を支配し、その思想的な影響力は、けっして簡単に消滅するようなものではありません。

 さらに「新自由主義」派は、主要国の政治的支配層と深く結びついています。「新自由主義の終焉」といえるようになるためには、政治を変えるたたかいを発展させて、政治の中身を根本的に変えていくことが不可欠です。


※     ※

 日本では、福田首相の突然の辞任によって自民党の総裁選挙がはじまり、五人の候補者が“経済政策”をにぎにぎしく競っています。

 しかし、どの候補者をみても、現在の日本経済の苦境や財政破綻(はたん)をもたらした原因が何なのか、いま国民生活を脅かしている原因が何なのか、その認識が欠けています。原因がはっきりしなければ、現状をもたらした政治の責任も明確にならず、ましてや現状を変える政策を提起できるはずもありません。

 こうした非科学的な“政策論”が横行しているのは、日本の政権党がこのところ「新自由主義」的思考に支配され続けてきたことの現れかもしれません。(友寄英隆)

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(注1)九月十日、東京国際大学(埼玉県川越市)で開催

(注2)A Financial Economist’s View of Globalization under Uncertainty

(注3)The End of Neo-liberalism?
http://www.project-syndicate.org/commentary/stiglitz101

(出所:日本共産党HP 2008年9月17日(水)「しんぶん赤旗」)
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Unknown (todo)
2008-09-18 16:46:05
本日の日経、経済教室。
「裁定型業務の限界を超えよ」書き手は池尾和人慶応教授。

要約、ヘッジファンドが有意義に高収益を上げられる時代は終わった。

ポイント:サヤ取り方金融ビジネスモデルは終焉。
     高収益追及の圧力で「不公正」な取引増殖
     取引先に知恵を貸すべく知識・能力を高め     よ。

*スティグリッツですが「世界を不幸にしたグローバリズム」読みました。無論啓発されるところは少なくないのですが、この人は世銀よりの人、IMFに対していい感情はもっていないようです。この辺、多少修正して見なければならないのかも知れません。

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