これは……いや、これも正直よくわからなかったのでした。
でもわからなかったわりには楽しく読めた。
いや、わからなかったわけではないか。30人も出て来る人々が記憶に定着しなかった。
それに尽きる。
普通の人々の(ある程度)普通の生活を、細切れに詩的に綴る。
これ、でも細切れにしたからこそ作品になったが、それぞれの登場人物の話を一章ずつ
書いて行ったら、いくら詩的な文章が魅力的だとはいえ作品にはならなかっただろうな。
作品にはなったかもしれないけど、ブッカー賞候補には。
ここんとこ、細切れ小説を続けて読んでいる気がする。
それはそれとしても、やはり文章は魅力的だった。
訳者お手柄。装丁もこの詩的な文章を魅力的にするのにあずかって力ある。
日本語訳は本作だけですかね。この人の作品ならもう何冊か読んでいいのに。
むしろこれはあとがきを読んでから読めばもう少し記憶が定着したかなあ。
わたしは基本的にあとがきは最後に読む派だが(だってあとがきだもん!)
これは最初に読んでおいた方が、誰が誰だか覚えられたかもしれない。
一人の女の子の話は、読んでで痛みを感じた。
しかし群衆としての一人にあの女の子がいることはあとがきに言われるまで気づかなかった……
タイトルはどうも、体を表している気がしない。
しかしタイトルだけを独立して評価してみるならば、これもまた名タイトルですね。
正直、本文でそのあとに続く言葉を知った後では、知る前と比べてちょっと魅力が減じる。
そして最後まで読んだ後でタイトルに戻ると肩透かし感があるなあ。
このタイトルで内容を表している気はあんまりしない。
いや、でもいい作品だったと思います。
もっとこの人の作品、翻訳されてもいいのにね。