プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 平出 隆「白球礼讃 ベースボールよ永遠に」

2010年07月27日 | ◇読んだ本の感想。
読みながらずっと微笑っていた。時々泣いていた。
地下鉄の中で、お昼時のサイゼリアで、さらにまた帰りの地下鉄の中で。

大好きなことを、達者な人が好きなように書いて、面白くならないわけがないのだ。
平出隆は野球を愛している。この愛をこんな風に書けるのは彼の幸せだし、
それを読むことは読み手の幸せでもある。

切り口が様々で面白い多角形。
それは子供の頃の思い出だったり、クラブチームの運営の苦労だったり、
アメリカのクーパーズタウンにある野球殿堂の探訪記だったり、バットやグラブ職人の訪問だったり。
こんな風に盛りだくさんにすると散漫になってしまいそうな気がするが、
さすが詩人――というのはわたしの贔屓目だろうか――である平出は、
トーンを微妙に変えて、その切り口を面白く見せてくれる。
一部屋ごとにインテリアデザインが違う建物を歩き回っている気がする。飽きずに回れる。
自在にあやつる自分と視点との距離感が、この人の文章の魅力なのかもしれないな。


本を読める人で野球が好きな人なら、この本は読むべきだ。
わたしなんかは野球ファンというよりは地元チームファンにしか過ぎないが、それでもこの本に共感する。
世の中にはわたしよりもっと野球に思い入れの深い人はいくらでもいるだろう。
そういう人たちは、これを読んでもっともっと幸せな気分になれるに違いない。



白球礼讃―ベースボールよ永遠に (岩波新書)
平出 隆
岩波書店
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しかしこの本は、こんな新書ではなく、装丁に手間と愛情をかけた
小ぶりな単行本で出すべきでしたな。いや、決して岩波新書を貶めたいわけではないのだが。
(昨今の雨後の筍系新書のでたらめぶりからすれば、多分岩波新書はまた自分を保っている)
愛書版として作るべきだった。クラフト・エヴィング商会あたりの出番だろう。




ところで、好きな人なら読んで損はないという意味でふと思い出したのがこの本。







これは、本好きなら読んで損はない1冊ですよ。
なんてことない話――実は話ですらないが、しみじみと本の力を噛みしめる1冊。





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