お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

大人も楽しめる洒脱な"ポストモダン"絵本

2009-06-09 | about 英語の絵本

Black and White

今日ご紹介するのはデイビット・マコーリー(David Macaulay)作・画の "Black and White"(黒と白)です。

物語は、表紙の裏に書かれた著者の「警告」から始まります。いわく、「この本におさめられているのは、必ずしも同時におこっているとは限らない複数の物語かもしれず、あるいはたった一つの物語かもしれず、またそれぞれに異なる4つの物語かもしれず、あるいは一つの物語の4つのパートかもしれません。物語にも絵にも細心の注意を払って(読み進んで)いただくようお薦めします。」

すでにご想像に難くないことと思います。そう!とても子どもの絵本とは思えない、実にユニークなスタイルの洒脱な絵本です。絵本のポストモダン・ムーブメント初期の最高傑作のひとつと言われている作品で、1991年に刊行されるや、たちまち高い評価を得て、同年のカルデコット賞を受賞しました。

ページをめくると見開きページの右に2つ、左に2つのお話がそれぞれ並行して進行していきます。4つの物語の主人公はそれぞれ、牛、電車に乗っている一人旅の男の子、子どもたちと両親、そして電車を待っている通勤客。いずれもいささか奇妙なお話です。

著者の警告そのままに、4つの物語は一見それぞれ独立しているのですが、実はいろいろに関連しているとも読めるし、それぞれが一つの物語の異なる位相にすぎないのではないかとも読めます。

幼い子ども達はひとつひとつの物語をそれぞれ別々に最初から最後のページまで通して読んでいくこともできますし(牛の話あたりが相対的に一番わかりやすいでしょう)、大きくなったら4つのお話を見開きページごとにまとめて眺め、まとめて追いながら読んでいくこともできます。大人には、ひとつの見開きページの4つのお話の表面には見えない構造的なつながりを考えながら読む、あるいはそこに込められている(と感じられる)哲学的なメッセージを考えつつ読む、という楽しみ方もあります。実に創造的なデザインの絵本です。

デザインだけではありません。この本の斬新さはストーリ展開にも、イラストにも徹底しています。読んだひと誰もがこぞって、この本は何度読み返しても、読むたびに、語りの文章あるいはイラストの絵のどこかに、必ず何かしら新しい発見があり、だから何度も何度も繰り返し繰り返し読んでも、そのたびに新鮮な発見があって読み飽きない、と言っています。

また、この絵本は読み手の年齢を選びません。子ども達にも不思議な根強い人気がありますが、実は、大人のファンがたくさんいるのです。私も大ファンですが、Amazonの読者レビューにも"子どもそっちのけ"の大人のファン達が熱心に感想を書き込んでいます。

さて、ですが、まだこの本をお読みになっていない方々は、今日の私の紹介だけでは、いったい何のことやら・・・さっぱり想像がつかない、わからないという感想をお持ちではないかと思います。ごめんなさい!そうなんです。よくわからないのです。実は、この絵本、紹介や説明が難しいだけではありません。実際手にとって眺めても、読んでみても、すぐには「読んだ」「わかった」と思えない。そして、実は、その"不可解さ"がこの絵本の魅力!という不思議な本です。

ぜひお読みになってみてください!



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