『 だからー、マジで見たんだってば 』
息を荒げて熱弁するは、同僚の女の子、Tさん。
どうやら彼女。
見たらしい。
○○○○を。
さて、順を追って話しましょう。
天秤丸、この四月から新社会人としてデビューしました。
で、同期の同僚が2人いまして、
一人は男性のYさん。(山口県出身)
彼は努力家で勤勉。
もう一人が女性のTさん。(東京都出身)
彼女はドライでクール。
そんな人達と日々働いています。
つい先日の事。
仕事中ヒマだったので、Tさんとおしゃべりをしていました。
そんな中、Tさんがいきなりとんでもない事を口走りやがりました。
Tさん 『 あのさぁ、こないだあたし…見たんだよね 』
俺 『 ほほう、なにを? 』
そう聞き返すと、Tさんは俺の耳元で、小声でこう言いました。
『 つ ち の こ 』
得意げな表情で、そう言い放つTさん。
鼻の穴がヒクヒクしている。
俺 『 はい? 』
Tさん 『 だから、ツチノコ見たっつってんの 』
俺 『 へぇ 』
とっさに適当な相槌で返してはみたが、
内心、彼女が毒電波系な人なんじゃないかと心配になる俺。
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“ツチノコ”
体長
30cm~80cmくらい
体色
黒褐色・焦げ茶色・黒・灰色 (腹部黄色・背部に斑点あり)
体型
ビール瓶くらいの胴から三角形の頭がちょこんと出ている
特徴
・大食家であり一匹で行動する
・昼間に活動する
・いびきをかき、まばたきをする
・垂直に立つ
・転がる
・蛇行しないで真っ直ぐに前後に動く
・ジャンプする(2mくらいとの説もあり)
・動きが素早く、有毒である(無毒説もあり)
・春から秋(4月~11月)に出没する
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上記は、適当なサイトからコピペした、ツチノコのデータ。
まぁ知らない人はいないと思いますが、
これ、動物園いっても見る事できません。
幻の蛇ですね。
いるわけないんです。
でもTさんは見た、と。
俺 『 おいおい、エイプリルフールは過ぎてるんやけど 』
Tさん 『 ほらやっぱり信じてないし、言わなきゃ良かった 』
やれやれ、と首をふり、冷ややかな視線を向けてくるTさん。
一般人としてごく普通の反応をしただけなのに、
何、この仕打ち。
はじめネタかと思っていたのですが、
Tさん、本気で機嫌をそこねた様子。
仮にもこれから一緒に働いていく仲間なので、
とりあえず、Tさんの電波な話題に付き合う事にする優しい俺。
俺 『 あー、どこで見たん? そのー、つちのこを 』
Tさん 『 近くの畑 』
俺 『 いつ見たん? 』
Tさん 『 昨日の昼過ぎ 』
昨日の昼過ぎ、
一人暮らしのTさんが、スーパーに買出しに行った帰りに、
彼女のアパート裏の畑で目撃したとの事。
Tさん 『 でさぁ、急いで写メ撮ろうとしたんだけど 』
俺 『 ほほう 』
Tさん 『 カメラ向けると、ものすごい速さで逃げたの 』
俺 『 シャイボーイや 』
Tさん 『 で、結局その時は、そのまま家に帰ったんだけど…
夕方頃に、気になってデジカメ持って見に行ったらさ 』
俺 『 ふむふむ 』
Tさん 『 また昼と同じ所に居たの、そのツチノコ 』
俺 『 うっは 』
Tさん 『 で、今度は逃げなかったのでバッチリ写真撮れました 』
またも得意げにそう言うと、
Tさん、鼻の穴がブワァッと開いた。
どうやら彼女、
得意になると、鼻の穴が反応するらしい。
どうでもいい新発見。
そしてその時には、俺はすでにTさんの話に飽きていた。
彼女、
飽きもせず、ひたすらツチノコの話を熱弁している。
妄想癖があるのだろうか。
きっと、恐怖新聞なんかを購読しているに違いない。
とりあえず、彼女の話を聞くところによると、
その後すぐに、ツチノコを木の枝でつついてみたとの事。
おまえはアラレちゃんか。
するとあら不思議。
プッシュオォォーー
ツチノコのケツから、虹色の煙が吹き出たらしい。
それはそれは綺麗な煙だったそうな。
『 でもアレ吸ってたら私、きっとヤバかったね 』
そう真顔で語る彼女に対して、
そろそろ本気で心配しだす俺。
ヤバイのは煙なんかじゃなくて、
おまえや。
しかし俺の心配をよそに、
さらにTさんの話は続く。
虹色の煙を全て出し終わり、
スッキリしたツチノコさん。
数秒の後、
爆発したそうな。
俺 『 ちょwwおまww、いくらなんでも爆発はないやろwww 』
Tさん『 本当だって。ほら、その時の火傷跡。 』
とかなんとかいって
わけのわからん一生傷を見せられた。
結局Tさん、
デジカメで撮ったという画像、見せてくれませんでした。
まぁTさんとは、なんとか仲良くやってます。
ーーーー完ーーーー