湘南徒然草

湘南に生まれ、育ち、この土地を愛し、家庭を持ち、子育てに追われ、重税に耐える一人の男の呟き。

イナゴの想い出

2022-02-18 18:02:01 | Weblog
私の祖母は四姉妹の長女
下に、次女、三女、四女と妹が3人いました
それぞれ結婚し、他家に嫁ぎました

四姉妹の中で、三女だけは、離婚してしまいました
二人の男の子を嫁ぎ先に残したまま離婚し
その後、妻を亡くした子持ちの男性と再婚しました
そして、その男性にも早くに先立たれてしまいました
小さな酒屋で雑貨も扱い、店をなんとか維持し、先妻の子を育てました
この人を、私達は”二本松のおばさん”と呼んでいました
これは地名からきた名前で、その親戚を、私達は”二本松”と呼んでいました

二本松のおばさんは姉の娘、すなわち父の従姉妹を嫁にもらい
家族の中でも安定した地位を得、我が家との姻戚関係も強固にしました
いつも落ち着いていて、小柄ながら背筋がピンとしていました
私の印象では、とても頭の良いお婆ちゃんでした
この人は私を可愛がってくれたので、私も大好きでした


二本松のおばさんが癌になり、余命が残り少なくなった頃
いかなる経緯か、両親は、しばらくの間、おばさんを我が家で預かることにしました
苦労の多い人生を歩んだおばさんを
せめて、少しの間、気ままな生活をさせてあげたかったようです

母は、おばさんの要望をなるべく叶えようと決意していたようでした
わがままなど言う人ではありませんでしたが
ある日、おばさんは母に

「イナゴが食べたい」

と言ったのでした
これには、母も困ってしまいました

ところが、意外なことに、田圃に行くとイナゴがいたのでした
父と母でイナゴを捕り、母は、それを調理し、おばさんに出しました
おばさんは「美味しい」と言って、出したイナゴを全て平らげてしまったそうです
もうすでに、食はすっかり細くなっていたにも関わらず・・・

この時、私は、生まれて初めてイナゴを食べました
今は、イナゴの味も覚えていませんが
先日、知人が山形でイナゴを食べたと聞いて、古い記憶が蘇ったのです
イナゴには、忘れられない想い出があったのでした









コメント
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