東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

管理会社に委託した家主にも不法な追い出し行為責任が認められた事例

2010年06月11日 | 最高裁と判例集
建物の管理会社による追い出し行為について不法行為責任を認めるとともに、賃貸借契約の解除を認める確定判決を得ていながら、公権力による明渡しを実行せず、原告の居住を黙認した上、個別に管理会社に滞納家賃の取立等を委任した家主にも、追い出し行為に関する責任が認められるとした事例(姫路簡裁平成21年12月22日判決)

【事案の概要】

A(借主)とB(貸主)は平成15年にアパートの賃貸借契約を締結、C社はBとの間で管理契約を締結し,賃借人に対する家賃等の集金等を委託していた。平成18年、Aの家賃滞納によりBは賃貸借契約を解除する訴えを起こし、同年末、契約解除を認める判決が確定するも、Aはその後も賃料を滞納しつつも本件建物に居住し続け,一方,家主Bは,賃料相当損害金を受領し続けていた。
平成20年6月,C社の社員DがA宅に赴き,張り紙を貼ったり,家賃督促のハガキを入れたり,ドアの鍵部分にカバーを掛けたりした。その後,Aが一部家賃を入金したことによりC社は鍵を開けた。平成21年4月末,DがA宅に赴き,張り紙を貼ったり,家賃督促のハガキを入れたり,同年5月,ドアの鍵部分にカバーを掛けたりした。また後日、DがA宅に赴き,ドアに「荷物は全て出しました」との張り紙を貼った。

【判旨】

Aに恒常的な賃料あるいは賃料相当損害金の不払が存在したとはいえ,上記取立行為は社会的行為として許されるものではなく,何ら言い訳のできない不法行為といえる。
家主Bは,本件賃貸借契約について,裁判所の確定判決により債務名義を得ているにもかかわらず,公権力による明渡しを実行せず,Aの居住を黙認した上,Aの滞納家賃の取立等のため,個別にC社にそれを委任し,その結果,C社の社員Dが,Aに対し不法行為(取立行為)を行ったのであるから,Bに不法行為責任が存することは明らかである。

【寸評】

管理会社による滞納家賃の取立行為(追い出し行為)が許容される限度を超えたために不法行為責任が認められた事例であるが、明け渡しを認める確定判決を得ておきながら実力行使による追出しを依頼した家主にも同様の責任を認めた(慰謝料額は36万5000円)。近時の悪質な滞納家賃の取立、追い出し行為に警鐘を鳴らす事例として紹介する。
(弁護士 松田耕平)
(東京借地借家人新聞より)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京多摩借組が拡大月間に借地借家問題市民セミナー開催

2010年06月10日 | 借地借家問題セミナーと相談会
 東京多摩借組では、4月から6月までの組合員拡大月間に向けて15名の目標を決めて、2ヶ月間に11名が入会している。組合では5月15日の第3回理事会で2010年度の年間計画を決め、今年は5月・6月・10月・11月に合計4回の借地借家問題の市民セミナーを開催する。

 市民セミナーは、開催する地元の組合員の協力を受け、市の広報の催し物案内に掲載してもらっている。また、チラシの配布を開催する市の組合員に呼びかけている。5月22日に八王子市民会館で行ったセミナーには、18名が参加し協力した組合員12名が参加した。細谷事務局長の講演の後に参加者からは更新料など6人から切実な質問が出され、1つ1つ回答する中で具体的な生きた事例の学習会になった。6月26日には武蔵野公会堂で開催する。  


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

更新料問題の裁判例で学習会 

2010年06月05日 | 借地借家人組合への入会と組合の活動
 東借連は5月26日に「更新料問題学習会」を開催し、多摩借組から6名が参加しました。

 講師の東借連常任弁護団の西田弁護士が「借地借家の更新料をめぐる裁判例」と題して1時間にわたり講演しました。西田弁護士は、更新料は法律上根拠のないもので、更新料を支払う慣習もないとの判決(最高裁昭和51年10月1日、東京地裁平成5年9月8日、同平成7年12月8日の判決)を紹介しました。

 更新料支払合意の有効性を認めた最高裁判例(昭和59年4月20日)があるが、これは調停で更新料の合意を履行しなかった事例で、過去に無断増改築や無断転貸など違反行為があったもので、あまり参考にはならないと指摘しました。

有効性認めた判決は借家に多い

 更新料の有効性を認めた裁判例の多くが、借家の賃貸借で期間も短く、契約書に明確な更新料の規定がある場合が多い。例えば家賃の1ヶ月分の更新料を支払う、地代の3年分の更新料を支払う等が多い。しかし、借地の場合は契約書に記載があっても、その基準、金額等明示がない場合は更新料の合意は明確ではないので更新料を言われるままに支払う必要はない。借地契約では、更新料の規定があっても法定更新の成立が認められれば、更新料の支払がないことを理由として法定更新の適用を排除することはできない(東京地裁昭和55年5月14)とした判決が紹介されました。

更新料支払特約あっても交渉しよう

 西田弁護士は、借家の更新料の支払義務のある契約でも、平成13年4月1日以降に結んだ契約で消費者の権利を制限し、消費者の義務を加重する消費者契約条項で、民法第1条第2項の信義誠実の原則に反し、消費者の利益を一方的に害するものは、消費者契約法第10条で無効にすることができるようになったことを説明しました。

 更新料をめぐって京都・大阪で20件の裁判が争われ、大阪高裁で2件が更新料無効、1件が更新料有効と判断が分かれている。なぜ判断が分かれるのか、西田弁護士は「法律の判断は一義的でなく、多面的解釈されるので、裁判官によって更新料の金額が過大ではないといったり、過大であるといったりする」と説明。最高裁がすんなり無効とするかどうか怪しいと指摘しました。

 今後の取組みとしては、更新料の金額が明確に明示されていない場合は、更新料の支払義務はないと主張してよい。しかし、契約書で更新料支払義務があり、家賃の1ヶ月~2ヶ月程度の場合は相手側が債務不履行で明渡しを求めてきている場合には、本人が明渡しができない困難な事例の場合は慎重に対応し、全面拒否ではなく、金額を負けさせるなどまずは交渉してみる。単純に更新料だけを求めている場合は、本人の頑張る気持ちがあるのであれば更新料の支払に応じないで交渉してみることが強調されました。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

賃貸更新料訴訟:3件目の違法判決 家主側の控訴棄却--大阪高裁 /京都

2010年06月03日 | 契約更新と更新料
 京都市内の賃貸マンションを借りた男性会社員(28)に対し、家主が更新料10万6000円を支払うよう求めた訴訟の控訴審判決が27日、大阪高裁であった。紙浦健二裁判長は「更新料に合理性はなく、消費者契約法に違反する」として、請求を棄却した1審・京都地裁判決(昨年9月)を支持し、家主側の控訴を棄却した。

 2審判決によると、男性は06年3月、2年ごとに家賃2カ月分の10万6000円を更新料として支払う契約で入居した。

 更新料について、紙浦裁判長は「地価が高騰していた約50年前、賃料を実質的に値上げする目的で脱法的に始まった」とし「06年当時は地価高騰は収まり、更新料を認める合理性はない」と指摘。更に「家主らの利益確保を優先し、消費者の権利を不合理に制限している」とした。

 男性の弁護側によると、更新料に対する高裁判決は4件目で、うち3件は違法と判断。過去3件の判決は全て最高裁に上告されている。【日野行介】(毎日新聞5月28日 地方版)

      判決文全文
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

家賃月額1万5千円値下げさせた

2010年06月03日 | 地代家賃の増減
 足立区関原で9坪の建物を賃借している組合員の岡田さんは魚屋を営んでいる。

 3年契約で家賃は当初月額8万5千円であったが2回目の更新時10万円になり現在に至っている。今回4回目の更新に際し、先行きの見えない経済状況の下、売上げ低迷で家賃負担が重く伸し掛かって来ていたので家賃の減額を要求することにした。交渉する前に組合と話し合い、値下げが拒否された場合は法定更新の選択を確認した。

 不動産業者の事務所での話し合いは和やかに進み、家主が折れて家賃8万5千円、3年契約で無事更新した。今回は稀有なケースで、値下げ交渉は家賃減額請求を調停に申立てるのも一つの手である。


借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合まで

一人で悩まず  042(526)1094 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする