東京多摩借地借家人組合

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盛況だった「借地セミナー」 関心項目のトップは更新料

2009年02月14日 | 借地借家問題セミナーと相談会
 生活協同組合・消費者住宅センター主催、東借連後援による「借地セミナー」が2月7日午後1時30分から中野区の東京都生協連会館において開催された。参加者は67名、相談者は22組だった。

 セミナーでは、借地の更新問題について東借連の細谷専務理事が、借地の改築問題は住宅センターの久保理事長がそれぞれ事例報告を行なった。
 質疑の後に、個別相談会が同会場で行なわれ、東借連の本部役員7名が相談に応じた。

 セミナーのアンケートでは、関心のある項目では更新料がトップの71%で、次に借地権の相続40%、地代値上げ39%、建替え・増改築39%と続いていた。「大変役に立つセミナーだった」等の感想が寄せられていた。
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処分事例 雨漏り及び敷金の承継の説明不備

2009年02月13日 | 宅地建物取引業法
《要旨》
 雨漏り等の欠陥を説明せず、敷金の承継の説明も不十分であったとして、媒介業者が7日間の業務停止処分とされた。


(1) 事実関係
 買主Xは、業者Yの媒介で、築30年の4階建てのビルを買い受けた。
 Xは、「4階に事務所を構え、階下の6部屋を賃貸する予定であったが、4階や3階は雨漏りによる傷みが激しく、このような物件であることを事前に知っていたら購入はしなかった。また、購入した時点で3人の賃借人がおり、そのうちの1人が退去したが敷金155万円の返還をめぐってトラブルになっている。」として、相談のため行政庁に来庁した。

(2) 事情聴取
 行政庁で調べたところ、本件建物には、4階と3階に雨漏りの箇所が多数あるなど欠陥があったが、Yは売主側から現況渡しであると言われていたことなどから、調査を行わず、欠陥を認識していなかったため、雨漏りの欠陥等についてXに説明していなかったこと、敷金について、3人の賃借人から合計で321万円が差し入れられていたが、Yは売主側から敷金の承継について説明を受けていたにもかかわらず、重要事項説明書に記載せず、口頭で「(売主からは)敷金は戻らない、出どこはない」と説明するのみであったことが判明した。
 また、Yは、「Xは他にも不動産を所有し、大学の経済学部の教授であることなどから不動産取引について専門的な知識を持っている。売買代金についても650万円の値引きをした。」などと主張した。


(3) 処 分 
 行政庁は、Yは、Xに対して雨漏り等の欠陥を説明しなかった、敷金がXに承継されることの説明は極めて不十分であるとして、Yを7日間の業務停止処分とした。 (不動産適正取引推進機構)



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裁判事例  賃料滞納と賃貸人の居室内への無断立ち入り

2009年02月12日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
東京地裁判決 平成18年5月30日
(判例時報1954号 80頁)

《要旨》
「賃料滞納時に賃貸人は無断で立ち入りできる」との特約が付された建物の賃貸借契約について、管理会社が賃料を滞納した賃借人の部屋に無断で立入ることが不法行為に当たるとされた事例


(1) 事案の概要
 平成15年12月、賃借人Xは、不動産会社Aの所有するマンションの一室について賃貸借契約を締結した。
 本件賃貸借契約には「①賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は賃借人の承諾を得ずに本件建物に立ち入り適当な処置をとることができる。②賃借人が賃料を2か月以上滞納した場合は、賃貸人は賃借人に対して何らの通知・催告を要することなく直ちに本件賃貸借契約を解除することができる。③賃借人は賃貸借契約が終了した場合、破損・汚損箇所の修復費用を負担する。」旨の特約があり、Xは特約を承諾する書面をYに差し入れていた。
 平成17年7月、Xが2か月の賃料を滞納し、Aから委任を受けた管理会社Yは、Xに本件賃貸借契約の解除を通知した。Yの従業員は同年8月、Xの不在中に本件建物の扉に施錠具を取り付け、翌日には本件建物に立ち入り、窓の内側に施錠具を取り付けた。Xは同年9月に本件建物を明け渡した。 
 Xは、無断で立ち入ったり施錠することは違法な私生活の侵害であり、本件特約及び本件承諾書は公序良俗に反して無効であると主張し、Yに慰謝料100万円を請求した。これに対しYは、本件特約及び本件承諾書は合理性があり立入りは適法である、Xは悪質な占有を継続したと主張し、Xに未払い賃料と汚損修復費用を請求した。  

(2) 判決の要旨
 ①Yが本件建物に立ち入ったり施錠具を取り付けたことはXの平穏に生活する権利を侵害するものである。
 ②本件特約は法的な手続きによらずにXの平穏な生活を侵害するもので、緊急等特別の事情がある場合以外は原則として許されず、特別の事情があるとはいえない場合に適用されるときは、公序良俗に反し無効である。  
 ③XがYの連絡に応答せず、本件賃貸借の解除が有効としても、Yが法的手続きを経ずに債務の履行や退去を強制できる特別の事情とはいえない。
 ④Yの従業員が本件建物に立ち入る等したことはXの権利を侵害する違法な行為であり、Yは民法715条(使用者等の責任)に基づき損害を賠償する責任がある。Xの精神的苦痛に対する慰謝料は5万円と認める。


(3) まとめ
 本件は、自力救済に関して、「法律に定める手段によったのでは、違法な侵害に対して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる、緊急やむを得ない必要な限度の範囲内でのみ、例外的に許される(昭和40年12月7日最高判)」ことを改めて示している。

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追い出し屋に国は早急な法規制を 保証会社には要注意を!

2009年02月11日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
金融危機の影響で、「派遣切り」「非正規切り」の被害者が40万人とも50万人とも言われている。この内、何割かの人が住まいを失う恐れが出ている。国や自治体は寮やアパートを退去させられた非正規労働者がホームレスにならないよう、雇用や住宅の確保、生活保護の活用等で全力上げて支援してもらいたい。

不動産会社の中には解雇で住宅を失った人に対し、入居時の礼金・敷金・仲介手数料などを減免するところも出ている一方で、家賃の支払いが少しでも遅れると悪質な取立てをする保証会社や管理会社の被害が増えている。都内のある相談者は、月々の収入が不安定なため保証会社への家賃の支払いが2週間ほど遅れたために、「ドアの張り紙はもちろん、電話での恫喝(極悪人、娘なんか学校へ行かせずにやめさせて働かせろ、人の会社に迷惑かけて自分だけノウノウといきているんじゃない……)、夜の訪問など、保証会社のあまりにひどい取立てと恫喝で精神的にまいっている」と訴えていた。この他にも鍵をロックされ、10日後に仏壇や仕事で使っていた書類など全て処分されたという被害の相談も組合に寄せられている。

これらの追い出し屋の被害の拡大に、政府も保証会社の実態調査とガイドラインの作成に動き出した。追い出し屋による悪質な家賃の取立てを禁止する立法措置を早急に行なう必要がある。



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更新料の請求の根拠説明しないで帰ろうとする地主の代理人に借地人が一喝

2009年02月09日 | 契約更新と更新料
豊島区南池袋に住む原山さんは、別な借地に住む兄弟から借地の相談を受けた。地主とは何10年の付き合いで、昨年の10月には、介護用のリフォームについても承諾して工事を行っていた。この工事が終了する前に地主の代理人となったと称する不動産会社から更新と地代の値上げについて話合いをしたいと通知を受けた。
更新の時期はすでに5年前に過ぎていて、工事が終了してから話合いをしようと提案したが強引に会社事務所に来るよう提案された。そこで、組合にも相談し、組合事務所で話合う用意があると申し出をしたが、原山さんの自宅で話合いを行うことになった。

更新料については、更地価格の7%と地代については、10年間近く値上げしていないので、現行地代の50%値上げを請求してきた。
話合いの当日は、組合事務局長が参加し、更新料についての最高裁の判決や賃料増減額についての最高裁通知の文書、国に物納された練馬区の借地の地代が平成12年から19年では30%近い減額がなされている契約書の写しなどをもって説明した。

代理人の不動産会社はこの説明を受けるや「更新料の支払いも地代の値上げも拒否ですね」と言って、話合いを打ち切り帰ろうとした。その態度に怒った原山さんから「自ら話し合いをしたいと言って更新料の根拠や地代の値上げの理由についてなんら説明せずに帰ろうとは何事か」と一喝された。(東京借地借家人新聞より)



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ひどい追い出し屋被害 年末に家賃滞納で家財道具すべて撤去される

2009年02月08日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 昭島市のアパートを借りていた田村さんは、昨年10月の契約更新で更新手数料と火災保険料を立川市の管理会社のシンエイエステートに支払い、2年契約を更新しました。

 田村さんは、その直後の11月分と12月分の家賃を滞納し、12月末まで家賃の支払いを待ってもらおうと12月11日に管理会社に行ったところ、1週間以内に家賃を支払わないと鍵を交換する等の念書を書かされてしまいました。12月18日に仕事から帰ってきたら鍵を換えられていました。仕方なく裏のベランダ側から部屋に入りました。12月28日にいつものようにベランダに回ってみると、部屋の中の荷物は全部かたづけられていました。荷物の中には、テレビ、冷蔵庫、レンジ、仏壇から仕事に使う書類もあって、28日では管理会社にも連絡できず、ほとほと困ってしまいました。友達の紹介で何とか住むところを見つけてもらいました。

 1月5日に田村さんは、2か月分の家賃を持って家財道具を返してもらおうと管理会社を訪問したところ、今度は1月17日までの日割家賃と鍵交換費用に倉庫保管費用を支払えと強要。結局、家財道具は返してもらえず困り果てて組合に相談。翌日組合の定例法律相談があり、弁護士さんを通じ家財道具を返すよう督促したところ、家財道具は返してきましたが、一部紛失されていました。シンエイエステートは、ワンルームマンションの建設と管理でブームの時は話題になった会社ですが、現在は空家が多くなって経営が苦しいようです。会社がすっかり悪質な追い出し屋・不動産会社に変質したようです。



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国籍を理由にした賃貸借契約の拒絶

2009年02月06日 | 最高裁と判例集
京都地裁判決 平成19年10月2日
(HP下級裁主要判決情報)

《要旨》
 入居予定者の国籍を理由に、申込審査の最終段階で、賃貸借契約の締結を拒絶したことに対して不法行為責任が認められた事例


(1) 事案の概要
 株式会社X1は、従業員であるX2を入居予定者として、Yの所有する新築賃貸マンションの一室を賃借するために、宅建業者Zに媒介を依頼した。X2は、平成17年1月、所定の入居申込カード兼入居者カードの契約者欄にX1、入居者欄に氏名、入居希望日欄に平成17年4月と記載してZに提出した。
 同年3月末、X2は敷金、礼金、仲介手数料等合計47万円余をZに支払い、Zの担当者は、その約1週間後に賃貸借契約書と必要書類(外国人登録原票記載事項証明書等)を貸主側業者Aの窓口に持参したが、Yの意向を確認したうえで本件契約書等を受取るとAに言われ、Yの押印はもらえなかった。その後、ZはAから、YはX1に本件物件を賃貸しないと告げられ、同日X2にその旨を通知した。
 X1らは、敷金等を支払った3月末の時点でX1とYとの間で賃貸借契約が成立している、仮に、賃貸借契約が成立していないとしても、Yは、X2が外国籍であるという正当でない理由で本件賃貸借契約の締結を拒絶したのであるから、信義則上の義務違反に基づく損害賠償義務を免れない。ZはYに対し、外国人の入居を拒む意思を有しているか否かを確認すべき義務を負っていたにもかかわらずこれを行わなかったのだから債務不履行に基づく損害賠償責任を負うなどと主張して提訴した。

(2) 判決の要旨
 ①最終審査段階で、Yが賃貸しないとして賃貸借契約書に押印しておらず本件契約書が完成していないのであるから、本件賃貸借契約は成立していない。
 ②Yは、X1らがZと共謀のうえX2の国籍を秘匿していたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
 ③Yは、客観的に見て賃貸借契約の成立が合理的に期待される段階に至って、X1に対して十分な説明を行うことなく、一方的にその締結を拒み、しかも、契約締結を拒むについて何らの合理的な理由がなかったのであるから、信義則上、X1が被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。
 ④認定の事実関係によれば、本件賃貸借契約は、X2が日本国籍でないことを理由に、Yが賃貸しないこととしたのであるから、Yは、X2に対し、不法行為に基づき、損害を賠償する責任を負うものというべきである。
 ⑤X1らは、Zが仲介業者として、賃貸人が国籍を理由に入居を拒む意思を有しているか事前に確認すべき注意義務を負っていたと主張するけれども、X1とZが特約を設けた場合は格別、そうでない限り、Zは、そのような注意義務を負わないと解するのが相当である。賃貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは、およそ許されないからである。


(3) まとめ
 本事例は、入居予定者が外国籍であることを理由に契約を拒絶する差別的な行為は許されないことを改めて示したものである。借主の主張した損害金の請求はいずれも棄却され、入居予定者の賃貸人に対する損害金の請求のうち慰謝料等の110万円が認容されている。



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裁判事例  賃貸不動産の差押え後の賃料減額の合意

2009年02月05日 | 最高裁と判例集
東京地裁判決 平成12年2月9日
(判例タイムズ 1094号 290頁)

《要旨》
 賃貸物件の競売開始決定後、賃貸人と賃借人との間になされた賃料減額合意には競落人に対する詐害的意図はなく、適正賃料に至るまでの部分については競落人に対抗できるとされた事例


(1) 事案の概要
 Yは、Aからすでに抵当権が設定されている店舗・事務所兼共同住宅の4階部分の2室を月額40万円余で賃借した。その後平成10年2月に、競売事件の開始決定に基づく差押えがなされた後、AとYとの間で、同年9月以降の月額賃料を23万円余に減額する合意がなされた。
 本件建物は、平成11年7月にXにより競落され、この後、YはXに対し、賃貸借契約の期間満了である平成12年5月末までの10か月間、月額賃料として23万円余を供託し、同年8月末に本件物件を明け渡した。
 Xは、AとYとの賃料の減額合意による賃料は不当に低額であるとして、競落時から期間満了まで従前の賃料との差額(170万円)の支払を求めるとともに、賃貸借契約期間終了後明渡しまでの期間についてX自身の鑑定により主張する適正月額賃料33万円余の3か月分の約100万円の支払を求めて提訴した。

(2) 判決の要旨
 ①競売開始決定に基づく差押え後に、被差押人である賃貸人がその賃料を減額し、その減額が通常の用法に従った使用収益の範囲を超える場合には、差押債権者ひいては競落人を害することになるので、減額につき合理的理由がない限り、差押債権者及び競落人に対して対抗できない。
 ②しかし、適正賃料と比べて高額の賃料を減額する合意については、そのうち適正賃料に至るまでの部分は本来の収益力に賃料額を一致させるにすぎず、特段の事情がない限り、合理的理由があるというべきである。
 ③X、Y双方から提出された鑑定書には修正すべき点があるが、これらを修正して求められる正常賃料を平均した賃料額である21万円余を本件物件の適正月額賃貸料と認めるのが相当である。
 ④適正賃料額までの本件減額合意には合理的理由があり、諸事情を考慮しても、YとAが詐害的意図の下に本件減額合意を行ったとは推認できず、合理的理由を否定すべき特段の事情は認められない。


(3) まとめ
 賃貸物件の差押え後の賃料減額合意の効力については、「強制競売開始決定が債務者に送達された後、債務者が賃借人と何ら合理的理由なしに賃料を半額にする旨合意しても、これをもって競落人に対抗することはできない。」とする最判 昭和35年10月14日があり、本判決はこれを前提にしつつ、「通常の用法に従って使用収益」している場合には、それに見合った適正賃料額に至るまでの部分の減額であるから、合理的理由があると判断したものである。

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更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合は含まない

2009年02月04日 | 契約更新と更新料
 更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合を含まないとされた事例(東京地裁平成四年一月八日判決、判例タイムス八二五号)

(事実概要)
 賃借人は、昭和五六年一〇月から店舗(ゲーム喫茶)建物を賃借したが、昭和六三年一〇月の契約期間到来に際して、四三万一五七〇円の賃料を五〇万六二一円に値上げ請求され、また契約書に定められている更新料として賃料の二カ月分の請求を受けた。

(判決の要旨)
 「本件賃貸借契約書には、『本件契約の更新の際は、賃借人は賃貸人に対し更新料として新家賃の二カ月分相当の金額を支払うものとする』と規定しているが、文言上は合意による更新のみを指すのか法定更新含むのか判然とせず、解釈によって判断するしかない。『新賃料』という表現からは、通常新賃料が定められることのない法定更新は念頭に置かれていないと考えられる。ところで、一般に更新料を支払う趣旨は、賃料の不足を補充するためであるとの考え方、期間満了時には異議を述べて更新を拒絶することができるが、更新料を受領することにより異議を述べる権利を放棄するものであるとの考え方、あるいは期間を合意により更新することによりその期聞は明渡を求められない利益が得られることの対価であるとの考え方などがある。右の賃料補充説ににたてば、法定更新と合意更新と区別する理由はないが、そのように推定すべき経験則は認められず、かえって適正賃料の算定に当たっては、更新料の支払の有無は必ずしも考慮されておらず(実質賃料を算定する際には更新科の償却額及び運用益を考慮することはあるとしても)、また実質的に考えても、賃貸借の期間中も賃料の増減請求はできるのであるから、あえて更新料により賃料の不足を補充する必要性は認められないのに対し、賃貸人は更新を拒絶することにより、いつでも期簡の定めのない契約に移行させることができ、その場合は、期間の経過を待たずに、正当事由さえ具備すれば明渡を求めることができるのであるから、賃借人においては、更新料を支払うことによりその不利益を回避する利益ないし必要性が現実に認められること等を総合考慮すると、特段の事由がない限り、更新時に更新科を支払うというのみの合意には、法定更新の場合を含まないと解するのが相当である。」

(解説)
 更新科支払特約がある場合、法定更新のときも更新料支払義務があるかどうかについては、最高裁昭和五七年匹月一五日判決がこれを否定しているが、その後も、法定更新でも更新料支払義務があるとする判決がなされることがある。
本判決は、法定更新の場合には、約定更新料の支払義務はないと判決し、その理由も詳細である。特に、更新科とは賃料を補充するものであるから根拠のある請求であるという賃料補充説に対して明確な批判をしている。
(東借連常任弁護団  弁護士 川名照美)
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「追い出し屋」被害者支援組織、2月に発足

2009年02月03日 | 追い出し屋被害 家賃保証会社
 賃貸住宅の家賃を滞納した借り主が、連帯保証人の契約を結んだ家賃保証会社や不動産会社などから強引に退去させられる「追い出し屋」被害が各地で相次ぐ問題で、弁護士や司法書士らでつくる被害者支援の全国組織が2月に発足する。悪質な業者に対する罰則などを含んだ法規制を提言し、政府に早期の法整備を求める方針だ。

 関西の支援団体「賃貸住宅追い出し屋被害対策会議」(代表幹事・増田尚弁護士)が21日の会合で決めた。設立総会は来月15日、大阪市港区内で開く。東京、大阪、名古屋、福岡、群馬の弁護士や司法書士、大阪クレジット・サラ金被害者の会などが参加。当日は各地の被害事例の報告がある。

 「追い出し屋」被害をめぐっては、借り主が東京や大阪、福岡で家賃保証会社や不動産会社などに損害賠償を求めて提訴している。年利換算で数百%の違約金請求やドアロック、家財処分など違法性の高い手口が共通し、派遣労働者ら低所得者に被害が集中しているのが特徴だ。

 全国組織は、深夜早朝の取り立てや鍵交換などの回収方法を禁止し、違反業者に業務停止などを科す法規制の検討に着手。国土交通省などに法整備を要望していく方針だ。全国組織の結成後も各地の団体に参加を呼びかける。

 同対策会議の木村達也弁護士は「『派遣切り』などで収入が途絶えて、家賃を払えなくなる労働者は今後さらに増える。違法な『貧困ビジネス』を断ち切るための規制を強く国に求めたい」と話している。(室矢英樹)

(朝日新聞 1月22日)
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借地法定更新で更新料支払いの慣習は認められないとした事例

2009年02月02日 | 最高裁と判例集
 土地賃貸借契約の法定更新の場合でも更新料の支払義務があるとする慣習は認められないとした事例(平成一四年一月二四日、東京地方裁判所民事第四五部判決。未掲載)


(事案)
 Xは、東京都墨田区内に土地四二八・○八平方メートルを所有し、これをYに建物所有の目的で賃貸していた。
 右契約が平成一二年一〇月三一日の経過により満了するため、Xはその一○ヶ月前に期間満了の通知をした。
 YはXに対し、契約更新の希望と更新の際の条件の提示を要請した。
 Xは堅固建物の存在を前提として、契約期間を三O年とする場合の更新料を二O四O万九九六三円(一平方メートル当たり四万九一二五円)と提示。
 合意に達しないまま、平成一二年一一月一日、法定更新となり、XはYに対し、賃貸借契約の更新に当たっては、合意更新であると法定更新であるとを問わず、更新斜の支払いが条件になることは、現在では社会的な慣習となっていると主張して、更新料二O四O万九九六三円等の支払を求めた事案。Xの請求棄却。

(判旨)
 「YがXに対して本件賃貸借契約更新の条件の提示を要請したのは、YがXの条件の提示を見て、これに応じるかどうかを検討しようとしたものであって、更新斜の支払義務を認めたものということはできない。……また、賃貸借契約の法定更新の場合でも更新料の支払義務があるとする慣習は認められない」

(寸評)
 法定更新の場合に、更新料支払の義務があるとする慣習はないとするのが判例の立場であることは、周知のこと。それにもかかわらず、依怒として、更新料請求の訴訟が提起されるのは、更新料の支払拒絶を明言せずに、条件交渉をする賃借人が多いことをあらわしている。更新料交渉について注意を喚起するために紹介した。
(東借連常任弁護団  弁護土 田中英雄)
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賃料を1ヵ月分でも滞納したときは無催告解除の特約の有効とする限度

2009年02月02日 | 最高裁と判例集
 「賃借人が賃料の支払を1ヵ月分でも滞納したときは、催告なくして解除できる。」との特約が有効とされる限度(最高裁昭和43年11月21日判決、判例時報542号48頁)

(事案の概要)
 賃貸人は、昭和37年3月15日、賃借人に対し、建物を賃料月額金一万五千円、毎月末日翌月分支払の約で賃貸し、同年9月14日、賃貸期間を昭和40年9月13日までと定めたが、その賃貸借契約には、賃料を1ヵ月でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨の特約条項があった。
 ところが、賃借人が昭和38年11月分から同39年3月分までの賃料の支払を怠ったので、賃貸人は前記特約条項に基き無催告解除した。

(判決)
 最高裁判所は、「家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料をlヵ月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者聞の信頼関掃を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがために契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。したがって、原判決の特約条項は、右説示のごとき趣旨において無催告解除を認めたと解すべきであり、この限度においてその効力を肯定すべきものである。」と判示した。

(評論)
 建物賃貸借契約において、特約条項が定められる例はしばしば見られるところである。それは、賃借人が新たに借りる立場上契約締結に当たって特約の削除を求めることが困難なことに起因することも多い。その結果、両当事者間で特約条項について合意が成立したことになるが、合意したからといって、全ての特約条項が有効となるわけではない。借地借家法の強行規定に反する場合は無効とされるし、本件特約条項のように強行規定には反しないまでも、信義則上賃貸借契約の継続を期待することができないような状態となったことを要する趣旨と解されることもある。
 本件特約条項は、その意味で、例文として全く無効というものではなく、有効とする上での限度を設けられているということができる。
 実務的には、賃貸人から前記特約条項に基いて無催告解除された場合には、賃借入は、放置することなく、あらためて賃料を提供し受領拒否された場合には供託することが最も適切な措置といえる。

(東借連常任弁護団  弁護士 榎本武光) 東京借地借家人新聞「判例紹介」より



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住まい連が離職者向け住宅確保で国土交通省と交渉

2009年02月01日 | 国民の住まいを守る全国連絡会
 住まいを守る全国連絡会は、1月30日午前11時から派遣社員など非正規労働者の実効ある住宅セーフティネットの即時実施を求めて国土交通省交渉を行なった。

 国交省は「現在離職者に向けた対策としてUR・公営・公社住宅の空家の確保をすすめており、公団住宅については3月末までに全国で2千戸の住宅を確保する、東京都の公営住宅は応募者が多く1年以上空いているのは30数戸しかない」との説明がされた。住まい連の代表からは、東京など大都市では公共住宅の空家が十分に確保されていない問題を指摘し、足立区の花畑団地等の建替え予定の団地などの積極的な活用を訴えた。
 
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