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更新料判決、大阪高裁でも家主敗訴 注目される最高裁判決 定額補修分担金も課題に 

2010年03月06日 | 契約更新と更新料
 賃貸住宅の賃貸借契約における更新料支払い条項が有効かどうか争われた訴訟の控訴審判決が大阪高裁であり、消費者契約法10条に違反して無効であるとした。これにより、高裁レベルの判断では「無効」が2件、「有効」が1件となる。今後は最高裁判所の判断が注目される一方、新規の契約についてはリスクを回避する手立てなど、家主側の対応が急務になっている。

  家主側対応が急務に

京都市の賃貸住宅に入居していた借主が支払済みの更新料及び定額補修分担金合計34万8000円の返還を求めた訴訟の控訴審判決が2月24日、大阪高等裁判所であった。

09年9月の京都地裁の一審判決を支持し、消費者契約法に反して無効であるとして全額返還を命じた。

本件借主(当時大学生)は、賃料3万8000円、更新料2カ月分(1年毎)、定額補修分担金12万円、ケーブルテレビ使用料などを支払う賃貸借契約を結び、03年4月に入居、以降更新料を3回支払った。合意更新による契約期間満了後の07年4月以降も居室を使用し、法定更新されたが、この際、更新料は支払っていない。本件の賃貸住宅の建物は86年、京都市内に建築されたもの。

判決文によると、本件更新料について「賃料の補充又は一部として支払ったと認めるに足りる証拠はない」、更新拒絶権放棄の対価としての性質も「ないか、あったとしても希薄」として控訴人の主張を退けた。 賃借権強化の対価としての性質についても、法定更新後と合意更新後の「賃借人の立場の安定性の差異はわずか」で認められないとした。更に「賃借人が更新料条項について十分な知識、理解を有していたとは認められない」と情報の質に格差があったことを指摘した。

定額補修分担金についても、通常の使用の範囲内であれば自己負担になる原状回復費用は発生しないことから「賃借人にとって利益があるのかどうか疑問」だとし、「月額賃料の3倍以上であることを照らせば、なおさら」として控訴人の主張を退けた。

これにより、更新料の高裁レベルの判断が「無効」が2件、「有効」が1件となる。

貸主更新料弁護団の田中伸弁護士は「厳しい状況だ。すべては最高裁で争うことになる」とコメントした。

日本賃貸住宅管理協会の顧問弁護士・亀井英樹氏は「日管協メールマガジン」でコメントを出した。

それによると、今回の更新料の判断は「目新しいものではなく予想された内容」だとし、「大阪高裁平成21年10月29日判決(更新料有効)を直ちに否定するようなものではない」と解説。

 
一方、「定額補修分担金特約を定める場合には、どの程度の範囲内であれば、消費者の利益を一方的に害しないと判断されるのかその範囲も今後問題となってくる」と指摘した。

更新料返還訴訟が相次ぐなかで、業界内では研修会などで対応を検討したり、借主との紛争を防ぐ制度構築を目指すなど、改善の動きも始まっている。

そのうちの1つが、借主が賃貸借期間中に支払う金額を表示する「めやす賃料」。

商慣習や賃貸条件の異なる賃貸住宅市場にあって、事業者間の公平な競争を確保し、賃料を分かりやすく表示する制度を目指して整備・検討が進められている。

「対価性なし」の判決は無効
首都圏で更新料の貸主側弁護士として活動する久保原和也弁護士のコメント  今回の判決は昨年8月に続く、高裁レベルで2つ目の無効判決である。

理論的には昨年8月の無効判決と同じ流れにあり、更新料は、「対価性が認められないか、認められたとしても乏しいものである」ことを前提に、「賃借人の利益を一方的に害するもの」で、消費者契約法10条に該当し無効であるとした。

また、更新料相当額の収入を賃貸人が確保しようとするのであれば、端的に賃料に上乗せした賃料設定をして、賃借人に提示することが要請されるとの考えを示し、近時の消費者運動家の主張に沿った価値判断を示している。

最近の無効判決の特徴は、更新料についての法的性質論で「対価性なし」と断じることで、対価性がないものを負担させるものであるから、賃借人の利益を一方的に害するものだと結論付けている点である。

しかし、厳密な法的性質論で説明できなければ「対価性なし」という判断は不当だ。

更新料裁判は、すでに2件が最高裁に係属しており、今回の大阪高裁判決によって更新料が「無効」と確定したわけではない。最高裁の判断を待つことになる。

無効判決の流れを受けて、賃貸人としては、今後新規に契約する場合には、契約書を見直し、リスク回避をしておくことが急務であると思われる。

なお、更新料無効判決の論理からすると、「共益費」「礼金」「ハウスクリーニング代」なども問題とされる危険性があるので、更新料を設定していない地域においても要注意である。
(住宅新報 3月1日)

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