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契約書の字句、内容のみでなく諸事情を考慮して一時使用と認めなかった事例

2008年08月06日 | 最高裁と判例集
 契約書の字句、内容のみでなく、契約締結に至る経緯、地上建物の使用目的、その規模構造等の諸事情を考慮して、一時使用のための土地賃貸借であるとは認めることができないとした事例 (東京高裁昭和61年10月30日判決、判例時報1214号)

 (事実)
 賃借人は昭和56年6月1日以降、軽量鉄骨造2階建を建築して家族と従業員10数名が居住して180坪の土地を使用していたところ、地主は、賃貸借は仮設作業所を建てることを目的とした一時使用の賃貸借であり、期間は1年の約束でその後契約をしたので、昭和60年5月31日に期間満了で終了した。よって、明渡せと要求した。

 一審の東京地裁では、判決文から理由はわからないが、借地人の敗訴であったが、高裁で逆転勝訴となった。

 (判決要旨)
 本件土地賃借権が建物所有を目的とすることは、弁論の全趣旨から明らかであるが、本件契約書には「土地一時使用契約書」なる表題が付せられている他、本件契約は借地法9条による一時使用のものであることを認めるなどの条項がある。しかしながら、賃貸借契約が一時使用を目的としたものであるかどうかは、契約書の字句、内容だけで決められるものではなく、契約書の作成を含めての契約締結に至る経緯、地上建物使用目的、その規模構造、契約内容の変更の有無等の諸事情を考慮して判断すべきものである。

 借地人は鉄筋工事の請負業者であるが、かねて近くの土地95坪を借地し、家族と従業員の宿舎を建てて居住していたが、そこの明渡を求められて、本件土地を賃借するようになった。契約書では、期間は昭和56年6月1日から1年間、賃料は月4万5000円とされ、その1年後には、賃料を月6万円、期間1年の再契約をし、その1年後には7万5000円、期間は2年間という再契約をし、それらの再契約のときには、特に本件土地の返還を要求することもなかった。

 以上の事実よりすれば、借地人は、契約の当初から短期間に限って土地を借りる意思ではなかったし、地主の方も、早期に本件土地の返還を受けるべき予定もなかったもので、その後の本件建物の建築及び土地の使用状況、借地人、地主の態度を考え合せれば、双方とも短期で契約を終了させる意思のもとに、一時使用の目的で本件契約の締結をしたことが明らかであるとは認められない。

 (解説)
 小さな工場や作業場などの土地賃貸借で期間5年、10年とかの法律に反するこういうk-スを見かける。借地人は借りたい一心で不当な契約を受入れてしまう。一時使用の賃貸借を拡大しようとする借地借家法の改正は、このようなケースを助長することになろう。


(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



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