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国籍を理由にした賃貸借契約の拒絶

2009年02月06日 | 最高裁と判例集
京都地裁判決 平成19年10月2日
(HP下級裁主要判決情報)

《要旨》
 入居予定者の国籍を理由に、申込審査の最終段階で、賃貸借契約の締結を拒絶したことに対して不法行為責任が認められた事例


(1) 事案の概要
 株式会社X1は、従業員であるX2を入居予定者として、Yの所有する新築賃貸マンションの一室を賃借するために、宅建業者Zに媒介を依頼した。X2は、平成17年1月、所定の入居申込カード兼入居者カードの契約者欄にX1、入居者欄に氏名、入居希望日欄に平成17年4月と記載してZに提出した。
 同年3月末、X2は敷金、礼金、仲介手数料等合計47万円余をZに支払い、Zの担当者は、その約1週間後に賃貸借契約書と必要書類(外国人登録原票記載事項証明書等)を貸主側業者Aの窓口に持参したが、Yの意向を確認したうえで本件契約書等を受取るとAに言われ、Yの押印はもらえなかった。その後、ZはAから、YはX1に本件物件を賃貸しないと告げられ、同日X2にその旨を通知した。
 X1らは、敷金等を支払った3月末の時点でX1とYとの間で賃貸借契約が成立している、仮に、賃貸借契約が成立していないとしても、Yは、X2が外国籍であるという正当でない理由で本件賃貸借契約の締結を拒絶したのであるから、信義則上の義務違反に基づく損害賠償義務を免れない。ZはYに対し、外国人の入居を拒む意思を有しているか否かを確認すべき義務を負っていたにもかかわらずこれを行わなかったのだから債務不履行に基づく損害賠償責任を負うなどと主張して提訴した。

(2) 判決の要旨
 ①最終審査段階で、Yが賃貸しないとして賃貸借契約書に押印しておらず本件契約書が完成していないのであるから、本件賃貸借契約は成立していない。
 ②Yは、X1らがZと共謀のうえX2の国籍を秘匿していたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
 ③Yは、客観的に見て賃貸借契約の成立が合理的に期待される段階に至って、X1に対して十分な説明を行うことなく、一方的にその締結を拒み、しかも、契約締結を拒むについて何らの合理的な理由がなかったのであるから、信義則上、X1が被った損害を賠償する責任を負うものと解するのが相当である。
 ④認定の事実関係によれば、本件賃貸借契約は、X2が日本国籍でないことを理由に、Yが賃貸しないこととしたのであるから、Yは、X2に対し、不法行為に基づき、損害を賠償する責任を負うものというべきである。
 ⑤X1らは、Zが仲介業者として、賃貸人が国籍を理由に入居を拒む意思を有しているか事前に確認すべき注意義務を負っていたと主張するけれども、X1とZが特約を設けた場合は格別、そうでない限り、Zは、そのような注意義務を負わないと解するのが相当である。賃貸マンションの所有者が、もっぱら入居申込者の国籍を理由に賃貸借契約の締結を拒むことは、およそ許されないからである。


(3) まとめ
 本事例は、入居予定者が外国籍であることを理由に契約を拒絶する差別的な行為は許されないことを改めて示したものである。借主の主張した損害金の請求はいずれも棄却され、入居予定者の賃貸人に対する損害金の請求のうち慰謝料等の110万円が認容されている。



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