東京多摩借地借家人組合

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「たらい回し」も…住まい失った困窮者、支援に地域差

2020年12月19日 | 新型コロナ被害と家賃 住宅支援
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/672950

 失業などで住まいを失った人に自治体が宿泊場所や衣食を無償提供する「一時生活支援事業」について、九州7県のうち4県が実施し
ていないことが分かった。福祉事務所がある市町村も事業主体となるが、九州では8割近くが未実施。ニーズを十分に把握しないま
ま、「財源不足」を理由に事業化しない自治体が目立つ。新型コロナウイルスの影響で厳しい雇用情勢が続く中、生活困窮者支援の地
域格差が顕著になっている。
 一時生活支援は、失業や減収で非課税の所得基準などになった人が対象。制度は2015年にスタートしたが、九州では佐賀、長崎、大
分、宮崎の4県が未実施。市町村(12月現在)でも、福岡25市(対象29市)、佐賀10市(同10市)、長崎13市町(同14市町)、大分10
市(同14市)、宮崎9市(同9市)、鹿児島18市町村(同23市町村)が実施していない。
 未実施の自治体は、「路上生活者が少なく、予算をかけづらい」「生活保護で対応する」「ニーズを感じない」-などを理由に挙げ
る。
 これに対し、未実施の佐賀市などで支援に取り組む「NPOスチューデント・サポート・フェイス」の谷口仁史代表理事は、「地方で
も車上生活者は増えている」と指摘。生活保護を受ける際の住宅支援では、申請者自らが物件を探す必要があるなど2週間近くかかる
として、市や県に一時生活支援の実施を求める。
 事業未実施の自治体の職員が、家を失った相談者に交通費を渡して別の自治体で支援を受けるよう促す「たらい回し」の事例も起き
ている。
 さらに、コロナ禍の長期化で困窮者が増える恐れもある。北九州市では4~9月、支援施設に30人が新規で滞在。福岡市では4~11月
に約160人が施設を利用した。市は「家賃を補助する国の住居確保給付金の期限切れや、年度末の雇用終了などで相談者は増えるので
は」とみる。
 一方、熊本では県と対象の全14市が実施している。うち9市は県と費用を出し合い、熊本市内のアパート9部屋を確保して困窮者を支
援。ノウハウを得た一部の市が共同事業から離脱後、地元の旅館などと提携し、困窮者の利用時に限って市が費用負担する「節減モデ
ル」も実現している。 (大坪拓也)

支援施設に入居「希望持てた」6月解雇の28歳男性、再起への日々

 自宅を失った困窮者に、仮住まいを提供する一時生活支援事業によって救われた人は少なくない。新型コロナウイルス禍で派遣切り
にあった男性(28)は、北九州市が事業を委託するNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の滞在施設に11月から身を寄せ、再起に向けた日々
を過ごしている。
 男性は福岡県内の自動車関連会社を6月末で解雇された。3年間働き、やりがいも感じていた。だが、社の借り上げ住宅を追われ、ア
パートに越した。
 「コロナの波にもまれたくない」。正社員の職を探したが要件を満たせず、派遣会社の選考も落ちた。月10万円の失業保険は、家賃
や奨学金返済で大半が消えた。家賃を支援する国の住居確保給付金制度も知らなかった。「無気力で部屋にこもり、諦めて情報も調べ
なかった」。失業保険の給付期限が迫り、10月末でアパートを解約。住まいを失った。
 所持金は1万円ほど。昼はパチンコ店の休憩室などで過ごし、カップ麺や値下げ品のパンでしのいだ。ネットカフェや公園で寝泊ま
りし、冷える体をさすった。「この先どうすれば…」
 実家は頼れなかった。両親とは、自らの適性に悩んで専門学校を中退してから不仲になり、5年前から音信不通。生活保護の利用も
頭をよぎったが、行政が親族に扶養の可否を確認する「扶養照会」があり、男性には難しかった。
 1週間余りで手持ちは小銭だけになった。すがる思いで区役所を訪れた。翌々日に抱樸の独自のシェルターに入居後、11月中旬に現
在の一時生活支援施設に移った。
 ベッド付きの3畳半の個室に腰を据え、早寝早起きの毎日。別の支援制度を使い、就職に必要な自動車免許の取得へ教習所にも通っ
ている。面接講座も受ける予定だ。「本当にありがたい。希望が持ててきた。正社員を目指したい」。生気を取り戻した男性は、力強
く語った。 (大坪拓也)

【ワードBOX】一時生活支援事業 

 2015年4月に施行された生活困窮者自立支援法に基づく。地方自治体がニーズに応じて実施するかどうかを判断する任意事業だが、
国は生活保護に至る前の「第2のセーフティーネット」と位置づけ、事業費の3分の2を補助している。都道府県や市町村の委託を受け
た支援団体や社会福祉協議会が原則3カ月(最長半年)、専用施設やアパートを仮住まいとして確保し、3食や衣類などを提供する。対
象者は就労訓練も受けられる。

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64歳ホームレス女性殺害事件「明日はわが身」の悲痛

2020年12月19日 | 最新情報
https://jisin.jp/domestic/1926718/

新型コロナ第3波の煽りを受け、「仕事を解雇された」「給料が減らされている」「売り上げが落ちた」など、心配が尽きない人も多
いのではないだろうか。
「うちのNPOにも、昨年に比べて5倍くらい相談が増えています。弱い立場の人が真っ先に影響を受けている。日雇い労働者や、派遣・
パート、住み込みで働いている人たち。そして、不安定雇用になりがちな“女性”です。とくに女性は、2019年度と比べて相談件数が
1割近く増加しています」
そう話すのは、北九州市を拠点に30年以上、ホームレス支援を続けているNPO法人「抱撲(ほうぼく)」の理事長、奥田知志さん。
11月には、女性の自殺が昨年同時期と比べ約40%も急増していると警察庁が発表。東京都渋谷区で路上生活をしていた64歳の女性が、
早朝のバス亭に座って休息をとっていたところ、46歳の男性に殴り殺されるという痛ましい事件も起きた。
「報道によると彼女は今年2月頃までスーパーで働いていたそうです。それなのに、たった半年ほどでホームレスになり、バス停で夜
明かしするしかない状態にまで追い込まれていた。所持金は8円。そして電源の入らない携帯電話――。これが今の日本社会の実態で
す。中間層の底が抜けて、いつ誰がホームレスになってもおかしくない状態なんです」
犯人の境遇も想像する必要がある、と奥田さん。
「殺害したのは46歳の男性でした。犯した罪は決して許せませんが、彼は長年引きこもりで『自室の窓から見える風景だけが自分の世
界のすべてだ』と話していたとか。彼も、案外、私たちの身近にいる存在なのではないか。そういう意味では現代の縮図のような事件
だと思います」
奥田さんは、この30年間で“格差”がどんどん広がった、と指摘する。
「いまや労働人口の4割、2千万人が非正規雇用です。国税庁が令和元年に発表した統計によると、平成30年の正規雇用の平均年収は男
性で約560万円、女性は約390万円なのに対して、非正規雇用では男性で約240万円、女性は約150万円にまで落ち込みます。これほど正
規と非正規で格差が広がり、かつ男女で賃金の差がある。母子家庭になると貧困率は5割を超えます。大規模災害などが起きて基盤が
崩れたとき、まっさきにシワ寄せがくるのが特に単身の女性です。こうした現状が、女性の自死増加の背景にあるのではないでしょう
か」
もともと経済基盤が脆弱な人が、ひとたび転落したら“自助”だけではどうすることもできない。
「もちろん自助努力は大事です。自分自身の人生なんだから。でも、住まいまで失った状態で、自助はどこまで可能でしょうか。“私
も応援するから、あなた自身もがんばりなさいよ”というのが、本当の自助じゃないか。つまり、自助というなら、共助も公助もそば
にないといけない。だから国の代表者は『なにがあっても絶対に助ける。見捨てるようなことはしない。だからあなたもがんばって』
というメッセージを、まず発するべきなんです。私は、管首相が発した『自助・共助・公助』というメッセージがミスリードを招いて
いると感じています。『自助・共助・公助』では、自分もまわりもつぶれてから来い、と言っているように聞こえます」
奥田さんは、コロナ禍で仕事や家を無くした人用の支援付きワンルームマンションを全国に用意するため、今年5月クラウドファン
ディングを実施。なんと約1億1500万円が集まった。
「寄付してくださった方が1万289人で、一口の寄付金額3万円以下の方が98%なんです。つまり“気の毒な人を助けよう”というよ
り、“いつなんどき自分が同じ立場に立たされるかわからない”という危機感の表れだと思います」
現在、この資金を全国の支援団体に振り分けて、約130室を確保した。
「北九州の私のところでは、女性も入居しています。先日は、いわゆる接客を伴う飲食店で働いていた20代の女性が入りました。コロ
ナ禍で店が閉店し、寮を追い出されてしまったそうです」
奥田さんは、こうした住宅セーフティーネットの仕組みを、政府も巻き込んで構築するため、国交省や厚生労働省などに働きかけを
行っている。
「人は本当に追い詰められたら、なかなか『助けて』と言えないものです。ふだんから言っておかないと。だから私はいつも、日頃か
ら『助けて』のインフレを起こしておきましょうと言っています。日頃から『助けて』と頼りあえる関係をつくっておくことが大切で
す。
64歳のホームレスの女性も、弟さんがいたが頼れなかった。頼れば“家族の責任”にされてしまう社会だから。でも、電話番号を書い
たメモは大事に持っておられたそうです。彼女がどんな気持ちだったか。それを“想像”することこそが“知性”だと思うんです」
残念なのは、周囲の人たちがバス亭に座っている彼女を心配して声をかけていたが、救えなかったことだ。
「彼女のケースは大変残念でしたが、やはり『だいじょうぶですか?』と声をかけることからしか関係は始まりません。たとえ『ほ
うっておいて』と言われても、です。あなたのことを気にしているよ、と。人の気持ちを動かすのは人ですから。そして、できるだけ
地域の民生員や自治体の窓口につないでほしい。平成27年に“生活困窮者自立支援制度”がスタートし、住居を確保する支援金や就労
支援などを受けられるようになっています。地域ごとに良心的な支援団体もあります。日本は、まだまだ捨てたものじゃありません。
大丈夫、必ず助けてくれる人がいますよ」
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