東京多摩借地借家人組合

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不動産業者が追い出し目的で買った建物の2か月余りの明渡し請求が否定された事例

2015年07月08日 | 最高裁と判例集
不動産業者が所有権を取得後間もなく解約を申し入れたこと等を考慮して解約の正当事由が否定された事例(東京地裁平成27年2月5日判決・判例時報2254号60頁)

1、事案の概要
 建築後79年を経過した木造の賃貸建物について、不動産業者が所有権を取得した約2か月後に解約を行い、老朽化、多額の修繕費用がかかること、建物を取り壊し賃貸用建物建築を計画していること、を理由に明渡しを求めた事案である。

2、判決要旨
 本件建物は建築後79年が経過し、外観が古びているものの、躯体部分が朽廃している事実や、地震により本件建物が倒壊する現実的な危険があるとの事実を認めるに足りる証拠はない。
 原告は、本件建物の所有権を取得するや、それから2か月余りで解約申入れをしているのであって、このような所有権の取得から解約申入れまでの期間の短さに鑑みると、原告は被告を退去させることを念頭において本件建物の所有権を取得したものとみるほかなく、本件解約申入れについては、本件建物に長年居住し、生活の基盤としてきた被告の居住の利益に対する配慮が欠けているといわざるを得ない。
被告の使用の必要性が大きいのに対し、老朽化による取り壊しの必要性や原告の自己使用の必要性があると認められないので、立退料204万円の提供の申出を考慮しても正当事由は認められない。

3、コメント
 本判決は、原告である不動産業者が建物を取得した後2か月余りで解約申入れを行っていることから、原告は被告を退去させることを念頭において建物の所有権を取得したものと認定し、正当事由を否定する理由の一つとしている。新賃貸人である原告が建物を取得した経緯、動機を重視して正当事由を否定した判決として意義のあるものと考えられる。
   (弁護士 瀬川宏貴)

(東京借地借家人新聞7月号より)
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